それ捨てちゃうんですか!?
あれからしばらく飛び続け、イアもミントも飛行に慣れてきたようだ。
ミントはソウルの最高時速ほどの速さは出せないが、十分のスピードは出せている。
少なくともスピードホースよりも速いだろう。
「はっやーい!」
「このくらい……うっ」
だが、酔いやすさで比べた場合、ミントの方が上だろうか。
スピードを出せても飛べなくなったら意味が無い。
そこから数分飛ぶと、石材を使用している家が海岸沿いに建てられている。
まさに『港』と言うのが正しいだろう。
「あれか?」
「うん、お昼だから、もうそろそろ漁から帰ってくる頃だと思うよ」
「僕こっちの港来たことないんだよね」
どうせ魔大陸が近いからとかだろ。
近づいてきたことだし、そろそろ降りるか。
俺たちは少しづつ降下して、背の低い草が多い草原に着地した。
「ほぁ……変な感じ」
空を飛んだあとに地面に立つと違和感すごいよね。
飛行魔法使えないと分かり合えないか。
新幹線乗ったあとみたいな感じだ、わかれ。
「ここの魚は美味いんだぜ」
「早く言えよ、もう飯食っちゃったよ」
キウィさんには悪いけど魚も腹いっぱい食べたかった。
とかいうまに付いたな。
お、でけぇ船が帰ってきた、魚あるかな。
出来れば買いたい、魔袋に入れれば腐らないし。
「おお、冒険者さんか。ボヘームに行くのかい?」
「ボヘーム?」
「南魔大陸の街だよ、人が住んでるって話だけど、イアもザンも行ったことないってさ」
ボヘームっていうのか。
魔大陸にある街、話によれば人が住んでると聞いたが、どうなっているのだろうか。
気になるな、どうせミントの父親探しに魔大陸に渡るんだし北大陸より先に行ってしまおうか。
「ボヘームには行かないけど、さっき船が着いたよな? なんか取ってきたのか?」
「おう、今日は大量だったんだ! 今引き上げが終わるところなんだが、来るか?」
「ぜひ」
引き上げってことは釣りじゃないのか。
網かなにかで捕まえた魚を取るって感じだろうな。
「私、引き上げは初めて見るなー」
小麦村からかなり近いから何度か行く機会があったのだろう。
俺も少し楽しみになってきている。
「おい! なんだよこいつ!」
「どうした!」
なにやら騒ぎになっているらしい。
歩いていた足を小走りに変える。
お? 珍しい魚?
「あ、あんたら冒険者だったよな!?」
「そうだけど、どした?」
「魔物だ! 魔物が現れたんだ!!」
魔物だと? ダイオウイカとかじゃなくて?
魔物は850年前に俺とマフォで封印をしたので生まれることはないはずだが。
……そういえばセブンスタの洞窟にいたゴーレムも魔物だったな。
てことは生き残りか、850年よく討伐されなかったな。
「きゅるるるるるるるるるう!」
「イカだ!」
ほんとだ、イカだ。
クラーケンの下僕かな、なら昔クラーケン戦で逃げ出したやつか、俺のこと覚えてる?
「よっ! 久しぶり」
「きゅるるるるううう」
「ありゃ、覚えてなかったか」
イカは殺気立った目でこちらを見つめている。
おまえとは……出会う場所が違かったら友達になれたかもな……
なんてクソみたいな茶番を脳内で再生する。
「ユユユユウトででででかいよあのイカぁ! 気持ちわりぃぃぃぃ!」
「本当はもっとでかいイカがいるんだがな」
ソウルにクラーケン見せたら卒倒しそうだな。
巨大なイカを食べてみたいという気持ちはあるんだが、リアルのダイオウイカはアンモニア臭がすごくて食えたもんじゃないらしい。
残念、この子は殺して終わりになりそうだ。
「おい! 早く倒してくれ!」
「海は無理だぜ……」
「ニュルニュルむりいいいいいいい!!!」
なんだこの英雄の子孫共つっかえねぇな!!
「きゅいいいいいいい!!」
「イカスミかっ!」
イカが大量の墨を飛ばしてくる。
危ない危ない、服が汚れる。
「はあぁ!」
拳に魔力を込めながら雷をイメージする。
魂は雲……雨の夜に轟く雷雲。
腕は雷、電気の刃。
天を切り裂く雷の剣! 貫け!
「サンダァァァァァァァァァーーッ!!!!」
勢いよく叫ぶ、叫ぶと魔法の勢いは増す。
気持ち、大事。
俺の右腕に青と黄色の稲妻が絡みつく。
そして、拳から極太の雷のビームが放たれ……
——イカの白い白い身体を貫通した。
拳から放たれたビームはそのまま止まることなく青い青い空へ消えていった。
それは君が見た光で僕が見た希望なんだ。
「眩しっ」
「すっげ……」
「これが……大英雄……」
なんかイアが感動してるな。
魔法使いらしからぬ魔法だよな、ガッツポーズに電気がついて拳からビーム出るんだから。
「んで、なんで魔物がこんなところに?」
「海の中までは倒しきれないぜ」
地上の魔物は既に倒されてんだな、覚えとくよ。
「これが冒険者様の実力……!」
「いや、ユウトだけだと思うけど……」
こーらミント、怪しまれるからやめなさい。
ならこんな倒し方するなって話だよな! ハハッ!
「この網にかかってたのか?」
「ええ、おそらくは」
鉄の重りがついた網に、大量の魚が入っている。
ところどころ見覚えのある魚がいるな。
「こりゃダメだ! 棘魚と硬魚ばっかだ!」
「キョクギョ? コウギョ?」
俺には普通の魚に見えるが……
「こいつだ」
漁師のおっちゃんが棘のついた魚を指さす。
「カサゴじゃん」
おっちゃんの取り出した魚はオニカサゴ、棘に毒のある魚だ。
毒があるとはいうが、身は普通に食えるので心配しなくていい。
「カサゴ? 硬魚は……これだ」
次におっちゃんが指さしたのはエイのような、平べったい魚。
確かこれは……可哀想な名前の魚だ。
そう、カスザメだ。
「カスザメだな」
「なんだ、知っとるんか。こいつらはよく取れるくせに食べられなくてなぁ」
「ほーん……貰っていいか?」
「いいぞ、元々海に返す予定だしな。俺たちじゃ食えないし、あんたにやるよ」
やった、食材ゲットだよ。
カスザメは皮は硬いけど普通に食べられる魚だぞ。
白身魚が好きな人は結構いけるかもな。
「他の魚も買っていきたいんだけど……いい?」
「もちろんいいぞ、じゃんじゃん買ってってくれ」
了承を得た俺はカツオやアジ、カワハギなどの水あげされたばかりの魚を買い漁るのだった。




