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一方緑の道具屋では

今回はミント視点です

 先に行っててくれと言ったユウトは真剣な顔をしてた、きっと村長と大事な話があるのだろう。

 私は言われた通りにみんなを家に招いた。

 レッドくんやグリーンくん、ブルーちゃんは自分の家に帰って、また後で遊びに来るらしい。


「思ったより広いぜ!」

「こんだけ広いなら店広げた方がよくね?」

「お客さんが少ないからね、このくらいでいいんだよ」


 港に行く途中の冒険者さんが寄ってくれるのと、村のみんなが買い物に来る程度なので、今までお店が混んだことは無かった。

 別に赤字になっている訳では無いので、家計は心配しなくていい、……多分。



「で、なんでユウトは残ったんだ?」

「村長に用があるんだってさ」

「ユウトが言ってた話だと、別の世界から小麦村のすぐ近くに転移してきたらしいぜ」

「あの時のユウトはなんか警戒心が隠せてなかったなぁ」


 まあ、私も警戒してたんだけどね。


「ユウトが帰ってくるまでユウトの話しようぜ!」

「いいな、僕が言われた分だけここで陰口してやる」


 ユウトは相変わらずソウルをいじめていたらしい。

 この数日で何があったのかは私も気になる。


「本人に言えばいいのに」

「それ陰口じゃないでしょ!?」


 やっぱり、ソウルのリアクションは面白い。

 こういう所がユウトに似てるのかな……?

 それはそれで嬉しいかも。


「ならあたしの話す機会が増えそうね」

「アイアスさんは昔のユウトを知ってるんですよね? どんな感じでした?」

「イアも気になります」

「昔のユウトかぁ……あんまり面白い話はないけど、いい?」

「構いませんよ」


 私の予想だと、ユウトはこれまで相当きつい、それこそ神経が擦り心が折れるようなことを経験してきたはず。

 それを少しでも知って、ユウトのためになるなら、聞きたい。


「じゃあ話すね。あたしがユウトと出会ったのはユウトのつけた名前だと『武器の世界』って世界なんだけどね、その世界は私みたいに武器、防具に変身できる人達が住んでる世界なの」


 え!? アイアスさん変身できるの?

 それはなんというか……かっこいいなぁ。

 変身ってロマンだよね、女の子でかっこいいのが好きなのって変かな。


「そこであたしや他の武器たちと協力して敵を倒したんだけど、そのあとなんやかんやあってユウトがあたしたちを召喚できるようにした」


 召喚……確か召喚魔法っていうのは禁忌魔法だったはず。

 他の世界から何かを連れてくる魔法、それが召喚魔法。

 魔大陸で使える人がいる、という話だ。


「それから何回か呼ばれたけど、呼ばれる度に光の無い目を見るのは辛かったなぁ……今も目の光はないけど、視線は柔らかくなったよ」

「そんなに暗かったんですか?」

「うん、会う度に目の光が失われていって、何にも興味を示さなくなってた」

「……」

「ほら空気悪くなったじゃん!」


 やっぱり、辛い思いをしてきたんだ。

 あんなに軽い話し方だけど、無理してたのかな。

 少しでも支えになれないかな……


「なら明るくなる話をしよう!」

「いいですね。何かあります?」

「そうだねぇ……みんなで温泉に入った話とか」

「温泉!? みんなで!? え、ユウトと一緒にですか?」


 ついテーブルに手をついてアイアスさんに寄ってしまった。


「急にぐいぐいくるね、反応するなら普通一緒に入ったことの方が先じゃないの?」

「いや、ははは……」


 温泉、それはあの伝説のお風呂。

 いや、お風呂と比べるとかありえない。

 お風呂の上位互換、全ての疲れを癒し、傷を治すお湯。

 温泉に入るということは私の夢だ、お風呂も好きだけど、温泉は別物。

 入ってみたいなぁ、ユウト連れて行ってくれないかなぁ。


「一緒に入ったって言ってもすごく広い湯船に他の武器たちと入ったってだけなんだけどな……」

「すごく広い!?」

「う、うん……で、その時のユウトはすごい楽しそうで、嬉しそうだったなぁ。まだそこまで心が折れてなかった頃だったし」


 楽しそうで嬉しそうなユウトか、見てみたいな。

 ていうか。


「温泉ってすごいですね!!!」

「温泉ってのもあるけど、みんなと一緒に入ったってのもあると思うよ」


 あ、そうか。

 温泉の効果かと思ってしまった。

 でもお風呂入ると嫌なこと忘れられるよね! 気持ちいいし!


「ミントちゃんはどんな出会い方だったの?」

「それそれ、僕も気になってた」

「わ、私は……その日の夜、ここで店番をしてたんです」


 あの日のことを思い出す。

 忘れもしない、ユウトとの出会い。


「うんうんそれでそれで?」

「そしたら知らない男の人、ユウトが店に入ってきて、こんにちはーって……それで私はこんばんはの時間ですよーって営業スマイルで答えたんです。そうしたらユウトが『ははっ、そうだな』って笑って」

「すげぇ細かいところまで覚えてるぜ」


 ドキッ、確かに細かいところまで覚えてるな私。

 なんでだろ、忘れられないんだよね。


「そ、それはまあ数日前のことだし……ザンが忘れっぽいだけでしょ!」

「ひでぇぜ」


 ザンってこんなにぜーぜー言うんだ、変わってるなぁ。


「その後だけどね、なんとミントはどこにいるのかって私に聞いてきたんですよ」

「へぇ、後で笑ってやろう」


 うわぁ、悪い顔だ。

 ソウルのその顔似合わないね。

 という気持ちは胸にしまっておく。


「それでさ、私が獣の解体ができるって聞いて専用の道具を借りに来たとか言いだして……」

「え、解体? 獣の?」

「うん」

「そりゃあミントが女だって思わないぜ」


 そうかなぁ、解体くらい普通の女の子でもできると思うけど。


「色々あって、二人で猪と鹿を解体することになったんです」

「すごい図ですねそれ」


 イアさんから鋭い指摘。

 まあ若い男女が一緒に獣の解体ってのも変な感じなのかな?


「その後は村について教えたり、一緒に小麦を収穫したりしたんです。楽しかったなぁ……」


 私が思い出に浸っていると、アイアスさんがとんでもないことを言い出した。


「ふむふむ、つまりミントはユウトの事が好きなんだね?」


 え、ええええ!?

 私がユウトを……!?


「ユウトは別にす、好きとかじゃないし! な、なんだろうなぁ……でも好きは好きだけどそういうんじゃ……」

「あたしはお似合いだと思うけどなぁ」

「俺もそう思うぜ」

「え? そうなの?」


 ソウルは恋愛とかできなさそうだな、って我ながらひどいことを考えてしまった。

 私がユウトを好きに……そう、なのかな……


「聞いたわよ!」


 突然ドアがバンッと開き、自分の部屋に戻ったはずのお母さんが出てきた。

 壊れるから強くドア開かないでね。


「これで相思相愛になったわね!」

「え、ユウトもミントちゃんのこと好きなんですかぁ?」

「ん? いやそれはわかんない」


 相変わらずお母さんは適当だ。

 私のこの気持ちが本当なら私はユウトを……

 ユウトと恋人なんてなぁ、なったとしてもデートしたりー、ご飯食べたりー。えへへー、あとあと、一緒に寝たりとか!


「えへへぇ……」

「ただい……うわっ、何があったんだ?」

「ユ、ユウ……ひゃあああ!」

「誰だユウヒャアって」


 店に繋がっているドアからユウトが出てくる。

 突然のことに、顔がカァァっと熱くなってしまった。

 まずい……顔を直視できない……!


「アイアスさんのばかぁ!」

「あっはっはっは! ごめんねー!」


 ユウトは困惑しながらも何事もなかったかのように椅子に座った。

 そっか、私……ユウトのこと好きなんだ。

次回からユウト視点に戻ります

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