第一回『小麦村最強は誰だ』part3
ソウル対グリーン戦にて倒れたグリーンに回復魔法を使う。
回復魔法では疲労は癒せないが多少はマシになるだろう、気休め程度だ。
「早く始めようぜ!」
「ユウトさん、さっさと始めたいんだ、ですけど」
赤髪と青髪が並ぶ、なんか見たことあるな……赤と青……なんだっけか。
「手加減はしろよ?」
「心配しなくていいぜ」
手加減しても馬鹿力で手加減にならないんじゃないか?
ザンは俺との戦いの後、少しずつだが魅せる剣技が倒す剣技に変わってきている。
レッドはひたすら練習したのだろう、以前見た時よりも動きにムラがなくなっていた。
ザンとレッド、両方の成長具合が見たい。
ザンレッド、繋げるとかっこいいな。
なんていうか、ヒーローだな。
絶対真っ赤な太陽のヒーローだって、溝ノ口発のヒーローだって。
「じゃあまた石投げるからな、よく見とけよ」
念動力で小石を浮かせ、掴む。
こいつを投げて、地面に落ちた瞬間が始まりだ。
なるべく二人の真ん中辺りに投げる。
「ふぅぅぅ……」
ザンは深い息を吐きながらタイミングを調整していた。
そして、ひゅーんと小石が宙を舞い……落ちた。
ダッと両者一斉に駆け出した。
青早い! 赤頑張れ! 黄色負けるな!
運動会かよ、黄色いねぇよ。
「どりゃああああ!!」
「うわっ!」
ザンの馬鹿力にレッドが怯む。
2mの大男が相手なのだ、普通の人間は避けようとするだろう。
だが、あの悪魔軍団を相手にしても戦う姿勢を崩さなかったレッドは避けない。
どんなに強い相手を前にしても決して怖じ気付いたりしない勇気、レッドにはそれがある。
「ま、け、るかぁ!」
おお、レッドがザンの剣を押し返したぞ。
「へっ、いいぜ……やってやるぜ!」
熱くなってまいりました! 両者一歩も引かない! ぶつかり合う剣は、まるで……まるでなんだ? まるで……農家の鍬のようだ!
下手くそかよ。
「うおらああああああああ!!!」
「こっちこそおおおお!!」
ギリギリで避けながら攻撃、あそこまで引き付けて避けるなんて普通じゃない。
木剣の軋む音、耐久度が心配だな。
「だ、ダメだ! 力が足りない!」
「ほらほらどうした! 防がないと当たっちまうぜ!」
やはり力負けするか。
勇気だけじゃ、足りないんだ。
「はあああ!!」
「ま、マズい!」
振り下ろし攻撃か、一気に決めるつもりだな。
「防ぐだけじゃ、押し負ける!」
「ごらぁ!!」
振り下ろされた剣と、レッドの立ち向かう勇気の剣がぶつかり合う。
木剣だってのに、一瞬火花が見えた。
お互いの剣が止まり、小刻みに震える。
そして……ギシリと音を立てて、レッドの木剣が真っ二つになった。
折れた木剣はくるくると宙を舞う。
もしあの時、ガードしていれば吹き飛ばされるだけで済んだものを。
「……え」
「今だぜ!!!」
完全に隙を見せたレッド目掛けてザンの木剣が近づいていき……
ひゅんひゅんひゅんひゅん……
レッドの身体に木剣が当た……
コツン
らない。
飛ばされた木剣の刃がザンの頭に当たったのだ。
「……え? え?」
「えーっと、勝者レッド」
「え?」
レッドの剣の方が先に当たったので、ルール的には、レッドの勝ちだ。
「おめでとう!」
「勝ったのに嬉しくねええええええ!!!」
「うおおおおおおお!? 今絶対俺の勝ちだぜえええええ!?!?」
ザンとレッドは後頭部を両手でガシガシやりながら悶えていた。
勝ったってのにレッドは全然喜んでない。
まあ負けたと思ってたし、剣が当たったのも運が良かっただけだもんな。
「まあなんだ。お疲れさま」
「煮え切らねえええええええええええええ!!!」
「ぜえええええええええええええええええ!!!」
仲良いなお前ら。
「それで、ザン。戦ってみてどうだった?」
「ええええええ……ぜ? ああ、筋は悪くないぜ、でも、挑戦するべきじゃないところで攻める癖があるぜ」
「レッドは勇気が桁違いだからな」
「それは勇気とは言わないぜ、無謀っていうんだぜ」
「無謀……」
ちゃんと自分の力が足りないにも関わらず、挑むことは無謀か。
戦いの中で成長していく人なんて、ほんのひと握りしかいない。
俺だってそうだ、今までの戦いだって全て積み重ねだ。
勝てない戦いは、必ず避けてきた。
戦わなければならない時は、精霊の加護に頼って、戦っていた。
臆病者が生き残る、悲しいけど、それは確かなことなのかもしれない。
勇敢な者が犠牲になり、臆病者が生き残る。
俺はその勇敢な者になりきれてないんだ。
「レッド、お前は大器晩成型だ。ゆっくり、強くなれ」
「……はい」
小麦村三番勝負は、レッドのリアルラックで幕を閉じた。




