第一回『小麦村最強は誰だ』part1
見渡す限りの草原。
イアとブルーは既に配置についている。
あとは俺が合図を出すだけだ。
「この小石が地面に落ちたらスタートだ、よく見ろよ」
聞いているのだろうが、二人は集中のせいか反応しない。
ならとっとと始めてしまおう。
「ほっ!」
俺が投げた小石は空高く上がり、やがて弧を描くように落下していく。
そして二人のちょうど中心に落ち、草に当たってガサッと音を立てた。
小石の落下と同時にブルーの周りから水色の弾が発射された。
「はああああああ!!」
「っ! 思ったより多いね」
確かに多い、魔法の才能があったとはいえ、数日でここまで大量の魔力弾を出せるとは思わなかった。
イアもピンク色の弾を飛ばしているが数は少ない。
その代わりブルーよりもスピードが速い。
自分に当たる弾だけを相殺しながらブルーに近づく。
「ふっ!」
「甘いよっ!」
顔に向かって飛んできた魔力弾を、イアが弾く。
残念だったな、イア。弾はもうひとつあるぜ。
「なっ!? 弾の後に!?」
「やった!」
あの位置だと、頬に当たるだろう。
——隠し弾、直線上に弾を撃つことで相手の視界からはひとつしか目視できないようにする技だ。
連射能力のあったブルーだから出来たことだろう。
だが、イアはそんなに簡単に倒せない。
イアの頬の周りにピンクのマジックシールドが現れる、防御特化じゃない魔法使いがマジックシールドを使えたとしても大した防御にはならない。
「当たったぞ!」
「いや、当たってない。後ろにそらしたんだ」
魔法を主な攻撃にしているやつのマジックシールドなんて、精々弾をそらす程度だ。
弾をそらされずに当てるなら身体の中心に当てなきゃならない、少しでもずれたらマジックシールドで受け流されてしまう。
「やりますね」
「そっちこそ」
その後もお互いに弾を相殺しながら戦闘が続く。
「すげぇ……」
「俺も燃えてきたぜ!」
魔力弾での戦闘はカラフルで綺麗だな、なんて呑気なことを考えるくらいには、同じ構図が続いていた。
「なあソウル、イアってどのくらい本気出してる?」
「本気出したら一瞬で終わるだろうけど、それを踏まえても結構力は出してるよ。なんだろ、楽しんでるのかな」
変態でも戦闘を楽しく感じるのか。
俺は戦闘はあんまり好きじゃないな、楽しく感じられたらあの長い旅も少しは気楽に出来たのかもしれない。
「そろそろ決着つけるね」
「望むところです!」
お、イアが立ち止まった。
瞬間——イアの体を囲うように魔力弾が浮く。
あれがイアの魔力操作ができる範囲か。
2m、いや、3mってところか。
俺が10mって考えると狭く感じるがこの世界では充分異常だろう。
俺の操作範囲は長年の戦闘と成長スキルで伸びたものだし。
「な……なに、それ……」
「楽しかったよ! それっ!」
ものすごいスピードでピンク色の魔力弾がブルーに襲いかかる。
「くっ……!」
ブルーは魔力弾の連射でかろうじて防げているが、長くは持たないだろう。
しかし、防ぎながら近づけば勝機はまだある。
「いける!」
一歩、一歩と少しずつイアに近づく。
ついに、相殺する弾がイアのすぐ目の前まで到達した。
このまま押し切れば勝てる。
ブルーは顔の前まで来ていた魔力弾をギリギリで防ぐ。
——が
「なっ!」
ダムっと魔力弾がブルーのおでこに当たる。
隠し弾、ブルーがイアを一瞬出し抜いた技だ。
その技で、イアは決着をつけたのだ。
「勝負あり、勝者イア」
「久々に楽しいって感じたよ、すごく感じた」
「ありがとうございました!」
全身に汗をかいているイアと起き上がったブルーが握手をする。
イアの顔が赤くなっているのは戦闘で動いたのと興奮しているのとどっちだ。
多分両方、マフォも戦闘のあとは発情してたからそれであってるはず。
「こりゃ武器のプレゼントはブルーが一番最初かな」
「本当ですか!?」
「あっ、ずりーぞ!」
「いいなー」
ついさっきまで戦っていたのが嘘のようにイアとブルーは笑顔になっていた。
お互いに汗だくになりながら戦ったいい試合だ。
きっと本人が一番実感しているだろう。
イア対ブルー、決着。




