第一回『小麦村最強は誰だ』part0
ミントに教えてもらいながら移動した先には、木彫りのカカシ相手に木刀を振り回すレッドが居た。
ブルーは水魔法、グリーンは錬成魔法を使っている。
「よっ」
「なっ、ユウト……さん!」
一瞬さん付け忘れただろクソガキ。
レッドの声にブルーとグリーンも駆けつけてくる。
「ユウトさん!」
「あら可愛い、イア年下もイケるよ」
「な、何この人」
近づいてきたグリーンが目をつけられてしまった。
可哀想に、でも飽き性だから安心しとけ。
「そちらの方々は……?」
「マールボロの冒険者だ。痴女がイアで、でかいのがザン、弱そうなのがソウル」
「弱そうなのってなんすか!?」
噛ませ犬感あふれる見た目してるからだろ。
ホクロひとつないベビーフェイスが妙にむかつく。
ブルーは名前を聞いてピンと来たらしい、頭良いのかな。
「イアさんとザンさんといえば……あの英雄の子孫!!」
「僕もなんですけど」
「え……あ、アロンダイト家の!」
「そうそう」
「確か家系の割に弱いって有名ですよね!」
おっと、この子ズバズバ言うね。
いい性格だと思うよ。
「ユウト……この子たちなんなの」
「俺の……なんだろ、弟子みたいな感じだ」
「なんであんたの周りの奴らは僕をいじってくるんだよ!!」
俺と関わるともれなくソウルをいじりたくなるってことか、ウイルスかよ。
「せっかく来てくれたことですし、色々教えてください」
「そうだな……」
何をしようか。
これだけ人材がいるのだ、なにか大きいことがやりたいな。
今日暇だし。
ああそうだ、やりたかったことがあるんだった。
「ソウル、ザン、イア。こっち来て」
頭上にクエスチョンマークを浮かべながら、3人が集まってくる。
「この6人で試合をしよう。剣を当てるか、転ばせた方が勝ちってルールだ」
「魔法使いはどうすればいいの?」
「弱めの魔力弾当てるか転ばせるかだな」
魔力弾は自分の魔力を属性の変換なしに打ち出す魔法だ。
属性がついていないので自分の魔力色と同じ色の弾丸になる。
俺だったら黒だな。
「面白そうだぜ!」
「だよな!」
レッドとザンは意外と気が合うようだ。
「レッド対ザン、グリーン対ソウル、ブルー対イアだな。誰からやる?」
「イアが先にやる」
イアさん珍しくやる気満々じゃないすか。
どうせ早く終わらせてゆっくりしたいのだろう。
「当然だけど、手加減しろよ? 向こうは初心者なんだからな」
「……わかってる。夜一緒に寝ようね」
「お断りします」
絶対手加減する気なかったぞ。
イアの手加減は杖禁止と本気禁止だ。
あと数分は決着をつけないってルールだ。
「わ、私がイアさんと……あわわわわ」
「まあイア相手だし、気楽に行け気楽に」
もしかしたら魔力弾が当たって勝てちゃうかもしれないからな。
威力の弱い魔力弾はドッジボールで当てられたくらいの衝撃なので安全面は心配ない。
そんなことを考えているあいだにもイアたちは試合をする場所を決めているようだ。
「ブルーちゃん大丈夫かな……」
「負けても学べるものはあるから大丈夫だ」
ミントは3人が戦うことを心配しているが、それはいらん心配だ。
負けたとしても次は勝つという気持ちになり、やる気わ出せるし、相手の強さを知ることが出来る。
格上に負けてすぐにやる気が無くなるのなら所詮それまでということだ。
「え? 本当にやるの? 僕不安なんすけど」
「腐ってもAランクだろ、根性見せろ」
「さすがに子供に負けるのはな……そういえば、剣はどうするんだよ」
刃物は危ないからな……武器は平等にってことで、木刀でも使わせるか。
魔袋に大量に入っているはずだ。
なぜ大量にあるかって? そんなの強化魔法の練習に使ったからに決まってるじゃん。
結局全部使わずに魔袋に放り込んだんだよな。
「あたしは? あたしはなにかすることある?」
「お前攻撃手段ないだろ」
「ガーン!」
口で言うやつ初めて見たわ。
あの世界の武器が個性的すぎて時分のアイデンティティーを無くしそうになったことがある。
剣率高すぎるんだよ、盾は数人しかいなかったけどな。
「これが終わったらグリーンとソウルだからな、準備しとけよ」
「緊張しますね……」
こんなやつ相手に緊張しなくていいから。
「ソウルは手加減どうする?」
「これと言って手加減できるものがない気がする」
悲しい現実だな。
「じゃあソウルは普通に戦ってくれ。グリーンは普通に魔法使ってもいいからな」
「はい!」
補助魔法、どのくらい成長しているのだろうか。
遠目から見たブルーの魔法もかなり上達していたようだし、期待が高まるばかりだ。
「ユウトさーん、準備できましたー」
離れた場所から間延びした声が聞こえる。
準備できたか、魔法使いの準備ってなんだ。
まあそれはどうでもいい、スタートの合図を出すために移動せねば。
「いつでもいいよぉ……」
イアは自前のピカピカした杖を置き、腰を低くした戦闘態勢になっている。
格ゲーのキャラみたいだな。
「よろしくお願いします!」
ブルーは俺が練習用に渡した樫の杖を持っている。
大きく攻撃力が上がるわけではないが、ないよりマシ、と思ってくれればいい。
イアとブルー、この二人が戦うことになるなんて修行中のブルーには想像もつかないだろう。
そんな二人の勝負が、今始まろうとしていた。




