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24時間営業

 目の前に広がっているのは一面の畑畑畑。

 小麦村と比べると野菜の割合が高い。

 畑の周りには深い森が続いている。

 そう、ここは牧場の村から少し飛んだ場所にある農業の村だ。

 村の人に聞いたところ、牧場の村はキャトル村で、ここ、農業の村はファー村というらしい。

 ファームってか、やかましいわ。


「こっちは普通に畑があるだけだな」

「ならもういいじゃん、帰ろうよ」

「すぐ終わるから待ってろ」


 まあ確かに暗くなっていて帰りたいが調査を怠るわけにはいかないぜ。

 また例のごとく野菜を買い込むことになるだろうがな。


「野菜かぁ……私はお肉だけでいいかな」

「お前料理できないもんな」

「うっさい! そのうちできるようになるから!」


 料理は気づいたらできるようになるものじゃねぇぞ、ちゃんと作る気がないと上達なんてしないんだ。

 そう、あれは料理の世界の……これがデジャブか。


 ファー村の野菜は様々な種類があり、トマトなどの一般的なものからビートルートなどのあまり見ない野菜まで栽培されていた。

 もちろん俺は一定量の野菜を買い込んだがな、食料は貯めるに越したことはない。

 そう、リスのようにな、リスユウトだ。


「ん? あれは野菜じゃないのか」

「あれは牧草だよ、キャトル村の家畜の餌を中心に栽培してるんだ」


 何気ない独り言に農場の男が反応してきた。

 独り言に反応されるとちょっと恥ずかしいよな。

 牧草か、キャトル村の牧場にも生えていたがあれだけじゃ足りないんだろうな。

 さすがに牧場は買わない、どこかの世界の牧草が魔袋に入ってる分で十分だ。

 てか使う機会がない、自分がなんで持っているのかも謎だ。


「ソウル、牧草買うか?」

「なんで僕に牧草が必要なんだよ!」

「いやほら、家畜と同列になれるじゃん」

「今家畜以下なんすか!?」


 だって弱いし。

 下手したらレッドよりも弱いかもしれない。

 そういやレッド今何してるかな、ちゃんと練習してるのだろうか。

 今度小麦村に行こう、そうしよう。


「もう済んだでしょー? 早く帰りましょうよ」

「そうだな、今はこの大陸に用はないし……じゃあ転移するぞ」

「やっと帰れるぜ……」


 マールボロ最強の剣士がここまで疲労困憊なのだ、帰ったらすぐに寝よう。

 王様への報告は明日でいいや。


「それにしてもユウトの転移魔法って便利だよな、行ったことある場所に瞬間移動できるなんてさ」

「ユウトの転移魔法ってあれだよね、ルー……」


 俺たちの視界は青く染まった。


* * *


 俺の部屋に転移したあとケイトさんにアイアスについて説明をし、泊めてもらえることになった。

 まだ部屋は空いているらしいが、他の武器たちを呼び出せるほど多くはない。

 武器たちがこの世界に来るのは当分先になりそうだ。


 その後、飯を食った俺たちはこのまま解散。

 かと思われたが。

 ソウルの言うことが正しければ、なんと、銭湯があるらしいのだ。

 ミントが聞いたら泣いて喜ぶのではないだろうか。

 いくら大英雄といっても所詮は人間、動けば疲れる。

 当然ソウルたちと同じく疲労が溜まってしまっている、魔力が上手く制御できない状態で大技を使ったのだ、そりゃあ疲れる。

 俺は迷わず銭湯に行くことにした。


「……で、アイアスも風呂入るの?」

「うん、ほら、あたしの世界ってお風呂の文化なかったじゃない?」

「そうだな」

「で、昔ユウトがお風呂を教えてくれた時すごく気持ちよかったのよね」

「そんなこともあったな」

「そうそう、んで、それが忘れられずにレーヴァテインにお湯を沸かしてもらったりしたのよ」


 レーヴァテインなにやってんだ。

 神話の炎の剣がお湯を沸かすな、火力発電じゃねぇんだぞ。

 お湯を沸かしてタービンを回す、なんて平和的な発電方法だ。


「お前盾なんだろ? 錆びたりしないのか?」

「神話の盾が錆びるとでも?」


 思いませんね、でも神話の剣は錆びたりしてると思うのだが。

 ゲームなら錆びた剣を強化したら最強の剣になったりするよな、ああいうの大好き。


 銭湯は酒場から数分歩いた場所にあった。

 近いな、氷霧亭って結構立地よくない?


「おばさん、やってる?」

「何言ってるんだい、いつも開いているだろう?」

「そうだっけ」


 24時間営業か、それは風呂の水は大丈夫なのか?

 湯船がふたつあって、片方ずつ使っているとかだろうか。


「俺たちが男湯で、アイアスが女湯な」

「えー一緒に入ろうよ」

「は!?」

「ぜ!?」


 アイアスの発言にソウルとザンが吹き出した。

 誤解を生むからやめなさい。

 確かに昔は一緒に同じ風呂に入ったことはあるが規模が違いすぎる、湖レベルの大きさの大温泉なんだから。

 他の武器たちも呼び出して皆でお風呂に入ったんだよな、懐かしいな。


「大温泉じゃねぇんだぞ」

「ちぇっ」


 年上とは思えないな、見た目だけだが。

 まあいい、ここからはむさい男だけの入浴シーンだ。


* * *


 人は誰しも風呂に浸かると声が出てしまう、声を出すのは体を休めるのにも繋がるらしい。

 だから声は出す、自然に出てしまうから関係ないがな。

 ちなみに湯船に浸かった時に声が出るのは水圧で肺が圧迫されるかららしいよ。

 ユウトの豆知識パート2だ。


「あ゛ぁ……」


 やはりお風呂は素晴らしい。

 疲れた体を隅々まで癒してくれる。

 これが裸の付き合いか。だが、内輪に2m級のガチムチがいる状態でその言葉はちょっと怖いぞ。

 絶対オスマーク付いちゃうから、青いのはツナギじゃなくて髪の毛だけどな。

 ウホッ、いい筋肉。


「今日は疲れたぜ!」

「僕初めて魔物ってやつを見たよ」

「ゴーレムは魔物だな、他にも封印した時に生き残っあ魔物がいるかもしれないぞ」

「封印って、イアの先祖がやったっていうやつ?」

「イア?」

「イア=デュランダルだよ、英雄マフォの子孫」


 マフォの……つまり変態か。

 イアって名前なのか、響きだけは可愛いってやつだろう。


「マフォの子孫な、今どこにいるんだ?」

「歩いて西大陸に行く! って言って出ていってから何日も帰ってきてないからなぁ、そのうち帰ってくるよ」

「歩いて……海でも凍らせてるのか?」

「そうそう、氷の上を歩いてるらしいんだよ」


 氷魔法で水を凍らせてその上を歩く、俺も昔やろうとしたことがあった。

 だが、魔物で溢れかえっていたあの頃の世界ではただの自殺行為、速攻で魔物に襲われてしまう。

 魔物がいない現代だからこそできる移動手段だ。

 まあそんなことが出来る魔法使いは限られているだろうがな。


「西大陸で何をするつもりなんだ?」

「多分飯食って帰ってくるだけだぜ、西大陸は食材の宝庫だぜ」

「へぇ」


 ほう、食材の宝庫とな。

 これは料理勝負で魔王を倒した俺の出番かな。

 西大陸、確かあの辺には四季の結晶があったはずだ。

 あの頃は結晶が密集していたが今はどうなっているのだろうか。

 打ち消し合っていた結晶が離れたとすれば季節が変わってしまう。

 なにせ辺り一帯の季節を変えるほどの力がある結晶だ、季節が変わらないということは全ての作物、全ての魚が手に入るということ。

 食材の宝庫ということは、地殻大変動で結晶が離れたのだろう。

 全ての食材……オールブルーかよ。


「それで、封印ってのはあれか? 俺とマフォで魔物を封印したってやつか?」

「え、ユウトも手伝ったのかよ」

「まあ、マフォだけじゃ魔力が足りなかったし」


 封印と言っても魔大陸の地下にある魔物を魔界から召喚する魔方陣を壊しただけだったりする。

 別にツボみたいなやつに魔物を封印した訳じゃない。

 ツボが赤く光って封印が解けて襲いかかってきたりもしないし、倒したら鍵が手に入るなんてこともない。


「明日は朝イチで王様に報告だぞ、寝坊するなよ」


 俺が言えたことではないな。

 きっとケイトさんが鍋で起こしてくれる、信じてる。

 そろそろ出ようかな、長くいすぎてもあれだし。


「俺はそろそろ出るけど、お前らはどうする?」

「おう、のぼせる前に上がるぜ」

「ちょっと待って、上がる前に10秒潜るやつやるから」


 10秒潜る? 肩まで浸かって10秒じゃないのか。

 ……いいことを思いついた。


「じゃあ数えててやるよ、10で上がれよ?」

「ああ、ありがと……すうぅぅ……ふっ」


 そう言うとソウルは息を吸いこんでとぽんとお湯の中に潜ってしまった。

 さて、数えるとしよう。


「……いーーーーーーーち、にーーーーーーーーい、さーーーーーーーーん、しーーーーーーーーーい、よーーーーーーーーーん、ごーー」

「ぶぁっはぁぁ!!」


 ザッブーンと音を立てて水面からソウルが飛び出てくる。

 おいまだ5秒だぞ。


「死ぬわ! ってかどさくさに紛れて4を2回言うなよ!」

「バレてたか」


 子供みたいな事してるからちょっとイタズラしただけじゃないか、怒るな怒るな。


「湯冷めするぜ」

「もう出るか」


 馬鹿なことしてないで早く出よう。

 俺はさっさと着替えて銭湯のおばさんがいた部屋でアイアスを待つ。

 すると、女湯の入口で赤い髪が揺れるのが見えた。


「上がったか」

「やっぱりお風呂はいいねぇ。それでさ、なんでソウルは叫んでたの?」


 聞こえてたのか。

 そういえば天井は繋がっていたような気がする。


「ユウトが虐めてきたんだ!」

「んー、ユウトなら仕方ないよ」

「仕方ないのかよ!?」


 だって俺だし。

 万能な言葉だな。


「よし、帰るぜ!」

「はいはい」


 酒場に戻り、それぞれの部屋に移動する。

 

 道中の曲がり角で夜には目立つピンクの髪が一瞬目に入った。

 そういえば、マフォの髪の毛もピンクだったな。

 ベッドに入ってから、その事が頭に張り付いて取れなかった。

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