22歳も若返ってた
視界が歪み、街の姿が変わっていく。
それに伴い軽い頭痛も発生する。
まさか散々苦しまされたあの頭痛か……?
「うお!?」
「なんか変な感じだぜ!」
ソウルとザンも同じ状況になっているらしい。
アイアスは全く動じていない、なんでよ。
俺以外も同じ状況ってことはあの頭痛じゃないな。
なんでザンは余裕ありそうなんだよ。
「だ、大丈夫か貴様ら!」
うん、まずその貴様って呼ぶのやめよ?
なんか優しさですら台無しになってる感じするから。
でも王様の声がなんか変だ。
なんていうか、声が渋くなっていくというか……
すると、歪んだ視界が徐々に戻っていき、頭痛が治まっていく。
「……街が!」
「な、なぜ街がこんなにも汚れているのだ!」
背後から王様の声。
そこにあったのは昨日見た風景、至る所にコケやサビが目立つ街並み。
先程まで見ていた綺麗な街は何処に行ったのだろうか。
「ユウトさーん? どしたん? 頭おかしくなった?」
「アイアス、お前最初にこの街を見た時どう思った」
「どうって……なんか古臭い街だなぁとしか」
古臭い……さっきまで俺たちが見ていた街は色々なものが新築のように輝いていた。
そんな感想を抱くのは、昨日見た街や、さっきまで見ていた街と今見ている荒んだ街を比べてしまうからだろう。
なら王様の姿は……?
「王様は?」
「む?」
振り向くと、若々しい筋肉質な男だった王様が昨日話をしたガタイのいいおっさんになっていた。
ならば、やはり違う見た目に見えていただけだったのだ。
つまり、幻覚。
「お、王様が元に戻ったぁ!?」
「え? 変わってなくない?」
「アイアスが幻覚見てなかったのは分かったから」
「え、なに? 僕たち幻覚見てたの?」
「ぜ?」
あの霧には幻覚を見せる効果があったということだろう。
生まれてからずっとこの霧の中で生活してきた人たちはどうなっているのだろうか。
少なくとも俺たちが見ていたような幻覚ではないはずだ。
ザンのそれはどういう反応だ。
「えーっと王様、俺たちってどう見えてました?」
「貴様らは特には変わっていないが……まさか街がこのような姿だったとは」
俺たちの見た目は霧を通しても変わらなかった。
外から来たものは幻覚の対象にはならない……?
とはいえもう霧も幻覚も見えないのだ、このことについて考えるのは後でいい。
「王様、昨日お話したことについてお聞きできますか?」
「……ああ、そうだったな。我も霧の正体について聞きたいところだったのだ」
霧の正体、ゴーレムについて話さなければならない。
そうと決まれば即行動。
俺たちは玉座の間へ向かった。
* * *
さて、俺たちは昨日と同じように玉座に座る王様の前に片膝をついている。
違うところといえばアイアスがいることくらいだ。
ちなみにこいつらは黙らせている、交渉の邪魔だ。
特にソウル、あとアイアス。
「ユウトという名前だったか。我が国を救った、という解釈でいいのだな?」
「そうなりますね」
「長い夢から覚めたような気分だ……ありがとう、本当にありがとう……」
長い、夢か……生まれてから幻覚を見続けたのだろうか。
それはそれとして、港の復旧のために資材を貰わなきゃいけないんだった。
「それで、昨日お話したことについてなのですが」
「ああ、資材だろう? 先程マールボロに運ぶよう指示したところだ」
「そりゃありがたい」
なんと、もう既に運んでくれていたか。
なら。
「これで貴様らの目的は果たせたことになるが……ここまでしてくれたのだ、個人的に礼がしたい」
「お礼……ですか」
よしきた、上手いこといけば味方に付いてくれるかもしれない。
「うむ、そうだな……こういうのは貴様らが望むものがいいだろう」
「戦いが始まった時、マールボロに手助けをお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「なんだと! 貴様、自分の言ったことをわかっているのか!?」
王様からしたら、他国の戦いに参加しろと言われていることになる。
だが、こちらは街を救った救世主。
無下にはできないだろう。
「ええ、十分承知しております」
王様の目をまっすぐ見つめながら言う。
俺の眼光に王様は一瞬たじろいだが、すぐに立て直す。
「ふふ……はははっ! よしいいだろう、ただしあくまで手助けだ。完全に味方になったわけではない、我らが動くのは貴様らへの恩返しだ」
「ありがとうございます!」
よし、これで敵対してくる国があった時に対抗できる。
「これは我が個人的に聞きたいことなのだがな、貴様、先程霧を風で吹き飛ばしたな? あれはなんなのだ、あのような魔法は見たことも聞いたこともない」
おっと、定番の質問だ。
まあ目の前で突然消えたり街中に漂った霧を飛ばしたりしたからな、聞かれても仕方ない。
「そうですね……別の世界から来た魔法使い、ということで納得してくれませんか?」
「……まあ、そういうことにしておこう」
こっちが強大な力を持った人間だと知られたら交渉ではなく脅迫になってしまうかもしれないんだ。
* * *
「なあユウト、本当にあんな約束してよかったのか?」
城を出たところで、黙らせていたソウルが口を開いた。
あんな約束、戦いの手助けをする約束か。
「どうせほかの大陸にも行くんだ、そこのやつらが好戦的だったら? ここの王様も魔大陸をよく思っているのかはわからんからな、卑怯だとは思うが、こうするしかなかったんだ」
「魔王が良い奴とは限らないぜ」
「俺の知る限りじゃ良い奴だ、性格が変わっている可能性はあるがな」
確か魔王には娘がいたはずだ。
あの魔王の娘だ、きっと話のわかるやつだろう。
「このあとはどうするの?」
「すぐにマールボロに戻ってもいいけど、どうせだからこの大陸にある村も調べたいな」
「ふーん、まあどうでもいいや」
アイアスは相変わらずめんどくさがり屋だ。
「時間かかるんじゃないか?」
「飛行魔法でひとっ飛びだ、当然お前達にも付いてきてもらう」
「え」
この瞬間、ユウト御一行のぶらり途中降下の旅が決定したのだった。




