地下19階
朝起きて鉱山へ行く道中、違和感を感じた。
すれ違う人に見覚えのある人が居なかったのだ。
昨日街の人に聞き込み調査をしていたソウルやザンも、違和感を感じているようだ。
「セブンスタって……こんなに綺麗だったっけ」
「それは俺も思ったぜ、気味が悪い」
人もそうだが、なにより街全体が小綺麗になっている。
昨日あった建物も、時間が巻き戻ったかのようにその姿を変貌させている。
昨日確かにそこに建てられていた金属製の照明灯も、サビが取れ新品のように輝いている。
一番驚いたのは俺が一人で起きれた事だけどね。
「ここだ……あれ?」
俺たちは採掘員の休憩所の近くまで来ていた。
そこにあるのは昨日見た休憩所のはずなのに、またしても違和感が俺を襲う。
俺の知っている休憩所じゃない、あの休憩所はもっと木が傷んでいた。
「どうした?」
「……いや、なんでもない。そこの入口から入るぞ」
休憩所の横を通り過ぎ、入口へ向かう。
窓から見えた人影は、見知らぬ人だった。
* * *
坑道は気味が悪いほど静かで、聞こえる音といったら自分たちの足音と、天井から落ちてくる水滴の音程度だった。
トロッコを動かすのに使う線路の上を歩く。
「そういやさ、掘れば掘るほど霧が出たんだろ? なんで掘り続けてんの?」
「そのことに気づいた頃に横道を掘り始めたらしい。掘り進めた場所は木の枠で補強してるから、それがない道に進むぞ」
とは言ったもののかなり歩いている。
そろそろ洞窟に繋がってもいいと思うんだがな。
「あ、もう枠ないぞ」
本当だ、ソウルの言う通り見える範囲で木の枠が無くなっている。
「多分その辺に横道が……」
横道が……ない。
洞窟は一本道、分かれ道などひとつもなかった。
「横道ないじゃん」
「どうせ行くのは洞窟の方だぜ」
「そうだな、端から横道なんて興味ねぇんだ」
今までの広い坑道とは違い、一回り、下手したら二回りも狭い道を進んでいく。
照明は俺の光魔法でどうとでもなる。
暗視を使えって思うかもしれないが暗視の魔法も弱まってるんだ。
ソウルやザンのためにもこの方がいいだろう。
魔力探知がないと何が来るかわからなくてドキドキするな。
街のこと、横道がなかったことに疑問を持ちつつ少しずつ、濃くなっていく霧の先へ進んでいく。
ザンの身長ではこの洞窟は少し狭いらしい、屈んで進んでいる。
「……ん?」
「どうした、ソウル」
ソウルが立ち止まり、壁をじっと見つめる。
「気のせいかな」
「この壁になんかあるのか……?」
何の変哲もない壁に見えるが。
触ってもゴツゴツしているだけのただの壁だ。
ちょっと壊してみるか。
「離れとけ」
「?」
弱まっているとはいえ、この壁を壊すくらい御茶の子さいさいのさいだ。
ちょっと手間取りそう。
壁を削るだけなのだから氷魔法でいいだろう。
俺はふっと力を込めて氷の刃を壁に発射した。
その魔法が壁に当たることはなかった。
いや、壁の中に入ったというほうが正しいか。
「なっ!?」
「消えた……?」
ここに何があるのだろうか。
何かあったとしても触るとただの岩なのでその先に行くことは出来ない。
「気になるけど、あとにしようぜ。こういうのは奥に行ってからでいいぜ」
行きで宝箱回収しないとダメでしょ。
帰りに同じ場所に来れる確証ないんだし。
というゲーム脳は置いといて、本当に気になる。
腹いせに剣で壁をぶった斬る。
ガキンと勢いよく剣が跳ね返ってきた。
は、破壊不可能オブジェクトだ……
例えるなら練習用のカカシ、あれなんで壊れないの。
「どーせ奥に霧が出る岩があって、それ壊して終わりでしょ。アッハッハッ……」
「ソウル、下見ろ」
ソウルのいる場所は大きな穴の端だった。
「あ? ああああああああああ!?!?」
落ちる寸前でソウルの手首を掴む。
「ひ、引き上げてくれぇ!」
「ソウル」
「な、なんすか」
「いってら」
俺はソウルの手を離す。
「はっ!? ちょっおいまてまてまてうわああああああああ……あれ?」
「よし、下見てきてくれ」
「飛行魔法か……って何すんだよ!? 助かったからいいけどよ! ったく……」
ソウルに一瞬飛行魔法を使ったので、1分なら自由に飛べる。
周りにはもう道もなく、この大穴しかないのでここに落ちるしか道はない。
っていうか穴から霧がモワモワ湧き出てるからこの先で間違いないだろう。
「降りてきていいぞー!」
「ザン、飛ぶぞ」
「了解だぜ」
俺とザンは宙に浮きながらゆっくりと穴に落ちる。
「おお……広いな」
穴の下はとても広く、霧もさらに濃くなっていた。
ほぼ何も見えないよこれ。
「ユウト、この霧って消せるか?」
「やってみるか」
俺は全力で風魔法を使う。
ぶわっと視界が開けていき、向かいの壁が見えた。
霧ごと吹き飛ばす作戦だ。
だが、風だけでここまで霧が消えるものだろうか。
そう思い辺りを見回す。
天井に穴がある……?
他の入口に繋がっているのだろうか。
「な、なんじゃありゃあああああ!!」
「うるせぇよ、んーっと……魔物か?」
ソウルの指さす先にいたのは白い岩からふしゅーふしゅーと霧を出す魔物だった。
というかゴーレムだ、あれ。
「魔物って言ったら昔はどの大陸にもいたやつだぜ。その魔物か?」
「あれが原因だな。よし、倒そう」
ソウルとザンにとっては初めての実戦。
俺にとっては数年ぶりの魔物との戦いだ。
俺たちは剣を抜いてゴーレム目指して駆け出した。




