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18名の発症者

 適当に入った店はステーキ屋さん、想像以上の量が出てきた時はもうダメかと思ったが、気合で完食した。

 ソウルはザンに食べてもらってたけどな。

 そして何故か俺の奢りになった。

 金貨100枚持ってるんだから飯くらい奢れ、だそうだ。


 その代わりと言ってはなんだが、街の調査をソウルとザンが率先してやることになった。

 泊まる宿屋を決め、ソウルとザンのペアと俺一人の二手に分かれて街を調べていく。

 現金なヤツらである。


 もちろん俺も真面目に調査する。

 知りたいこと多いし。


「採掘場……か」


 まず最初に調べるのは採掘員についてだ。

 明日鉱山に入るとして探索する場所を絞れるに越したことはない。

 採掘員の休憩所が鉱山の入口付近にあると聞き、そこに向かったのだが街に比べてより一層霧が濃くなっている。


「誰かいるか?」

「ああ? なんだ小僧」


 木の板で適当に作られた小屋にいたのは、所々に泥がついたおっさん達だった。

 採掘が終わり、昼休憩をしているのだろう。

 一瞬ヤクザかと思っちまったぜ。


「王様から霧についての調査を頼まれたんだ、悪いけど話聞かせてくれるか?」

「へぇ……なかなか肝座ってるじゃねぇか。いいぜ、そこ座れよ」


 お言葉に甘えて椅子に座らせてもらおう。


「で、何が聞きたい」

「鉱山の奥に行く方法と、突然発狂したっていう採掘員についてだ」

「……この小屋のすぐそこにある入口が最深部に一番近い」

「最深部には何があったんだ? というか、最深部まで掘り進めたのか?」

「いいや、自然にできた洞窟だ。その洞窟を掘りながら坑道にした。俺たちは横道を掘って鉱石を採取しているんだが、きっと奥にはもっと大量の鉱石が眠ってるぜ」


 自然にできた洞窟か。

 大陸が動くほどの天変地異だ、長く続く洞窟ができても不思議ではない。


「奥には行ってないのか?」

「ああ、だが、その奥から霧が出ているのは確かだ。掘れば掘るほど、切り開けば切り開くほど霧が出てくるんだ……だから横道を掘ることにした」


 横道を掘れば霧が濃くなる心配はないからな。

 当然の行動だろう。

 溢れ出す霧はもうどうしようもないということだ。


「じゃ、発狂した……霧に犯されたと仮定しよう。その霧に犯されたやつに共通点はあるか?」

「この仕事を辞めていった奴らは洞窟の奥に行こうとした奴らが多かった。普通に作業をしていて暴れだした奴もいたがな。お前の言うとおり、霧が原因だろうな」


 やはり霧か。

 この街の人々が暗くなっているのも霧が原因ということで確定だろう。

 だがひとつ、気になることがある。


「なんであんたらはそこが危険な場所って知ってるのに採掘を続けるんだ?」

「愚問だな、生活があるんだよ。この仕事を辞めちまったら、食う宛がなくなっちまう」


 そう、だよな。

 金があるならそんな危険な場所に行く必要なんてないよな。


「そか、悪いこと聞いちまったな。でだ、俺は明日あの鉱山の奥に行って霧の正体を調べる。もしかしたら霧が消えちまうかもしれねぇぜ?」

「そいつはありがてぇな、期待せずに待っててやる」


 他の採掘員からも「頑張れよ!」と声をかけられる。

 これで俺が霧を消したらセブンスタにとんでもない大きさの借りを背負わせることになるんじゃないだろうか。

 それはもうマールボロと同盟を組むことくらい簡単に了承するのでは?


 相変わらず狭い視界にうんざりしながらも、なんとか街に戻ってくる。

 空は灰色の雲で蓋をされている。

 街ってこんな暗かったっけ。


「おーいユウトー、なんか分かったかー?」


 離れた場所からソウルが話しかけてきた。

 少し間延びした声なっている。

 手には肉まんのような食べ物が見えた、美味そうだなそれ。


「鉱山と採掘員について調べた。お前らはどうだった?」

「大収穫だ! 見てくれよこれ。この街の饅頭めちゃくちゃ美味し痛い!?」


 言い終わる前に英雄チョップを食らわせる。

 850年溜め込んだ力をこの手刀に掛けた。

 相手は死ぬ。


「ザン、どうだった?」

「そのへんの人に西大陸について片っ端から聞いて回ったぜ。わかったのは村が二つあるってことと、魔法を使える人が少ないってことくらいだぜ」

「十分だ、一旦宿屋に戻って会議をしよう」


 最初からそれを報告しておけば死なずに済んだものを……

 俺たちは部屋を取っていた宿屋に向けて歩き出す。

 てか俺も饅頭食べたい、どこにあるのそれ。


* * *


 饅頭を食べ終わった俺は丸テーブルの前に座る。

 テーブルを囲むようにして会議をするのはアロンダイト、ガラディン、そしてこの俺カンザキだ。

 一応俺の昔の武器はエクスカリバーだったので円卓会議と言えよう。

 三人しかいないけどな。


「えー明日、鉱山に踏み入ることになりました。それについての計画などを決める会議を始めようと思います」


 ドンドンパフパフと音が鳴る。

 俺が口で言った言葉だ。

 俺が、口で、ドンドンパフパフって、言ったんだ。

 だからソウル、その目をやめろ。

 そんな目で見るな、お前らはチベットスナギツネか。


「……会議っていっても鉱山入って奥行くだけでしょ? 会議する意味あるの?」

「あのな、社会では意味もなく会議をする大人がたくさんいるんだ。普通に知らせればいいものを紙に写して集まって話を聞くだけの名ばかりの会議をする大人がたくさんいるんだ」

「要するに?」

「特に意味は無い」


 だってそうじゃん、既に決まってることをわざわざ集まって一から説明するとか意味ないじゃん。

 会議をしている間に出来ることいっぱいあるじゃん。


「ほらあれだよ、意見交換会だ。お前の話は聞いたから俺が一方的に話すだけになりそうだけど」

「それよりさ、鉱山についてわかったことってなに?」

「えっとな、奥まで行ける入口を見つけた。明日はここから行こう。んで、ここからが重要な話だ。霧を止めないと、この国は終わるかもしれない」

「ど、どういう意味だぜ?」


 ザンが冷や汗をかきながらそうたずねる。

 いきなりそんなこと言われても困るよな。


「王様が言ってただろ? 採掘員が突然発狂したって。あれは霧が原因で間違いない。この街がさらに霧に犯されたらそれこそ国が滅んじまう」

「大変じゃん! もしかしたら僕たちも発狂したりしちゃうのか……?」

「可能性はあるな」


 うわぁ! 行きたくねぇ! と床を転げ回るソウルを無視して話を続ける。


「さてお前ら、いい知らせと悪い知らせどっちから聞きたい」

「なんだ藪からスティックに。ならいい知らせからで」

「この調査で霧の正体を突き止めれば西大陸との交渉が楽になる。大きな借りを作るわけだからな」

「確かに、西大陸が味方につくのは心強いぜ!」


 西大陸の武器が大量に入れば国としても兵力が高まって嬉しいことだらけだ。


「悪い知らせは?」

「霧が原因なのかはわからんが、魔法が弱まってる」


 弱まってると言っても魔力探知とかの反応が鈍くなったりする程度だ。

 普段は人や魔力の大きい場所を感じ取れるのだが、それが出来ていない。

 近くにいるザンの魔力ですら少し感じる程度だ。


「はぁ!? なんか居たらどうすんだよ!」

「まあ待て、弱まっても誰も俺には勝てねぇよ」


 街の人が魔法使えないのは霧が原因なのかもしれないな。

 だとしたら使える人はかなり強いんじゃないだろうか。


「ただ、俺でも勝てないような相手が万が一にもいるかもしれない、っていう事だけ頭の隅に入れとけ」


 フラグじゃないよ。


「無茶苦茶心配になってきたんすけど……」

「会議終了だ、寝ろ」

「悪い知らせから聞けばよかった」


 その後、夕飯を食べていないことに気づいた俺たちは宿屋の食堂で食事を済ませ、眠りについた。

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