17本の剣から掘り出し物を探せ
霧に包まれた街、この国の王に会わなければならない。
850年前では山の麓にあるのどかな街だったはずだが、時の流れにより変わってしまったようだ。
「街の名前ってなに?」
「西大陸の街は……セブンスタだぜ」
思い出した、セブンスタ城だ。
セブンスタは城と街の名前が同じなんだよな、マールボロが特殊なだけかも知れないが。
各大陸に城が一つずつあるので、残りは東大陸と北大陸、魔大陸の城ということになる。
魔大陸の城は言うまでもなく魔王城だ。
「あー空気悪い、吐き気が治らないよ……」
「我慢しろ、慣れるから」
「俺は気にならないぜ。それより西大陸に来たの初めてなんだぜ」
意外だな、来た事があると思っていた。
街に入り、城を目指す。
あの鉱山から出たであろうガス、採掘や精錬、鍛冶などで燃やされる石炭やオイルで街の空気は最悪だ。
この霧のようなものはなんだろうか、これも鉱山から……?
「そこのお兄さん方や、武器を見ていっておくれ」
「武器?」
城までの一本道を歩いているとおそらく武器屋のおばあさんに話しかけられる。
俺にはノワールがあるから武器の新調は必要ない。
「ここの武器は質がいいぜ、ソウル、新しいの買ったらどうだ?」
「新しい武器かぁ……。お、このなかから探そ」
ソウルの選ぶ武器は信用できない。
初心者用の剣を強そうと言ったくらいだ。
そんなソウルが見つけたのは、縦長の木箱の中に乱雑に入れられている剣。
ソウルはその雑に売られている剣の中から鈍い紫色をした剣を取り出した。
「これだ……おばあさん! これ買うよ!」
「そんな安物でいいのかい?」
「これがいいんだ!」
これがいいって、弱いかもしれないだろ。
鑑定してみるか……斬れ味も強度も申し分ないな。
投げ売りされている剣にしては使える方だ。
ただ、この紫色が元の素材の色と違うのが気になる。
剣を作る時に魔力を入れると魔剣になる、もちろん作るのは容易ではない。
魔剣の失敗作、といったところだ。
微弱ながら魔力を感じるのは魔剣のなりそこないだからだ。
「そんな簡単に決めていいのか?」
「運命だと思うんだよね、ほら、紫色だし」
紫色なのはどうでもいい。
少しばかり胡散臭く感じるのはこの街の霧が濃いからだろうか。
普通の剣ならいいんだが。
「終わったか? 早く王様のところ行こうぜ」
「お前は買わなくていいのか?」
「俺は強度さえあればあとはどうでもいいぜ」
力押しだからな。
確かに全力で振って折れないってのは大事だわな。
怪力を売りにしているから斬れ味はさほど気にしないってことか。
買い物を終え、城の入口まで歩く。
セブンスタ城は自然の岩をそのまま使っているため、城壁がゴツゴツしている。
門の前には当然のように兵士が。
「止まれ! 見ない顔だな、何者だ」
「中央大陸から来たザンだ、知らせが届いてるはずだぜ」
「確かに中央大陸から使いが来ると知らせを受けた、だがその知らせを受けたのは昨日だ。たった一日で大陸を渡るなど不可能だ!」
てかどうやって知らせを受けたんだ、電話でもあるのか?
確かに、一日で移動なんて不可能である。
船で移動するとして二日か三日はかかるだろう。
いきなり空飛んできましたなんて言えるわけがない。
まあそれを言うバカなんていないだろうがな。
「ああ、それはユウトが……」
「んんっ! 先に行かせてから知らせを出したんだと思うよ」
「そうか、それなら納得がいく」
危なかった、ソウルが得意気に話そうとしていたので早急に対応することができた。
なんでソウルが得意気に話そうとしてたんだよ。
「ほらよ、冒険者カードだぜ。信じてくれるか?」
「確かにマールボロの冒険者カードだ。しかもSSランク、どうやら本物のようだな。引き止めて悪かった、王様の元へ案内しよう」
俺のカードを見せなくてよかった。
何はともあれ城内に入ることに成功した俺たちは兵士についていきセブンスタの王の部屋へ行くのだった。
* * *
二枚扉を開けた先には玉座が置かれていた。
この城の玉座の間だ。
その玉座に座っている男。
逆立った茶髪に筋肉質の体、口元に髭を生やした男がそこに座っていた。
「王、マールボロの使いが来ました」
「早かったな、前までこさせろ」
「ハッ」
こういうタイプの王様か、お堅い感じだぞ。
「マールボロから来ました、ユウトです」
「ザンだぜ……ザンです」
いつものテンションで挨拶をしようとしたザンの足を蹴り、訂正させる。
敬語を使うのは嫌だが外交のためだ、仕方がないことなんだ。
「ソウルです」
「して、何の用だ」
港で火事が起きたから再建するのに資材が必要なんだったな。
「実は中央大陸の港で大規模な火災が起こり、現在復旧作業中なんです」
「ほう」
「ですが再建するまでの資材が足りず、困っているのです。資材の支給をお願いできますでしょうか?」
「それはいいが、それなりの対価はあるんだろうな」
「え、えーっと……こちらマールボロ王からの贈り物になります」
魔袋から預かった宝石を取り出す。
七色に輝く宝石だ。
「足りぬ」
「え」
「この程度で我が動くとでも思っていたのか」
王様ああああああああ!
マジふざけんなよ、足りないじゃん、ダメダメじゃん。
「おいどうすんだよユウト」
ソウルがひそひそ声で話しかけてくる。
「なんとか頼み込めよ、得意だろ」
「別に得意じゃねぇよ!?」
唾を飲み込み、覚悟を決めたソウルが交渉する。
「そ、そこをなんとかー。なにか手伝いでもなんでもしますから……お願いしますよー」
下手くそか。
「手伝いか……それなら頼みがある、引き受けてくれるな?」
「え、ええもちろん! なんだって言ってください!」
「おまっ!?」
まだ何かわからないのに引受けるなよ!
無理難題押し付けられたらどうすんだ。
「我が生まれた頃からこの街は霧に包まれている、貴様らも知っているであろう?」
王様が生まれた頃からあの霧なのか。
あの霧は不自然だよな、鉱山からガスが出たとしてもあれほど濃い霧はおかしい。
「かつての街はこれほどまで霧が濃くなく、人もみな明るかったそうだ。書庫の記実にはヴォグ山の採掘が進むにつれて霧が濃くなっていき、人もみな暗くなっていたと記されている。そこで、貴様らには霧の正体を調べてきてもらいたい」
「霧の正体……」
確かにかつての街は空気も澄んでいて、人も明るかった。
この街が変わった理由が霧であるとするなら、原因を突き止める必要がある。
俺が単純に気になるという理由もあるが。
「採掘員たちもみな突然辞めてしまったり、発狂して暴れ回ることがあった。我はこの問題をどうにかして解決させたい」
「わかりました。では、鉱山に入って霧の原因を調べるということでいいでしょうか?」
「! ……よろしく頼む」
玉座の間から退出し、城を後にする。
また昔のような街に戻るのなら、手を貸すのもいいかなと思えた。
なにより、俺もあの頃の街をまた見たい。
「引き受けたのはいいけどさ、どうやって解決させるの?」
「さあな、掘れば掘るほど霧が出るってことは最深部に何かあるんだろ」
その何かが有害なのは確実だ。
あの王様はさらっととんでもないことを言っていた。
『発狂して暴れ回ることがあった』
幻覚が見えているのかもしれない。
採掘員が発狂するほどだ、もしかしたら街の人も既に幻覚が見えている可能性がある。
「それよりなんか食おうぜ、腹が減っては戦はできぬってやつだぜ」
「どこか適当に店探そうよ」
俺たちは近くにあったお店に入り、食事をすることにした。
俺は宝石を渡しても交渉できなかったことについて、あとで王様に文句を言おうと心に決めた。
次回、霧の正体、街の秘密




