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16m飛行

 昨日は資金の確保やザンとダンの二人との戦闘をした。

 まさかノワールの力を解放するとは思ってなかった、多分街中の人が大規模な魔力爆発に違和感を覚えただろう。

 そして冒険者登録、黒いカードが自分だけになったのは意外だった。

 その後はお姫様に会ったんだよな、ムーン、お姫様にしては暗殺者向けというか冒険者向けだったな。


 今日は昨日王様から依頼を受けた西大陸への訪問だ。

 ちゃんと王様から宝石を預かっている。

 虹色の宝石だ、めっちゃ綺麗。


「僕達も行くとは行ったけどさ、どうやって行くんだよ」

「そんなの俺の魔法で一飛びよ」


 どういうわけか850年前に行ったことがある場所に転移ができなくなっていたので、飛行魔法でソウルとザンを一緒に浮かせて飛ぶ作戦だ。

 知っているはずの魔大陸などに行けないのは世界が変わったからなのか、それとも天変地異の影響かはわからない。


「他の大陸まで一飛びできる魔法なんて聞いたことないぜ。あの青く光る魔法か!」

「いや、あの魔法で移動できるのは行ったことのある場所だけなんだ」

「そうなのか……まあそれでも便利だぜ」


 俺もそう思う。

 これがあれば忘れ物をした時とかすぐに取りに行ける。


「そこで使うのがこの魔法だ」


 周囲の風の流れが変わる。

 一緒に浮かせられる対象にソウルとザンを入れ、10mほど飛び上がる。


「うわぁ!? う、浮いてる」

「これはなかなか気持ちいいぜ、自由に飛べるのか?」

「おう、でも俺を中心に半径10mの範囲から離れたら飛べなくなるからな。離れて飛び続けられるのは1分ってとこだ」

「10mか、覚えとくぜ」


 飛行魔法で飛ぶのは意外と簡単で、こうやって飛びたい、こう曲がりたいと念じるだけで飛ぶことができる。

 今もソウルとザンが不安定ながらも体勢を保てているのはそのおかげだ。

 ザンは早くもコツを掴んで周りをビュンビュン飛び回っているが。


「西大陸は……向こうだな。少しずつスピード上げるから、付いてこいよ?」

「いいぜ、楽しめそうだぜ」

「普通くらいでいいからね!?」


 構わず西大陸に向けて舵を切る。

 いい風だ、君も風になろうよ。

 サッカーしそうだな。


「おおおっ、こいつは、今までにない感覚だぜ!」

「早い早い怖い怖い怖い!」


 ザン程の巨体で空を飛んでいる様は傍から見ればまさに人間パチンコだろう。

 絶対殺傷能力あるってこれ。


 ソウルもなんとか付いてきているがギリギリだ。

 この程度のスピードだと昼までに到着は無理そうだ。


「ソウル、ザン。スピード上げるぞ」

「えっ!?」


 グンッと体に負荷がかかり、景色が霞む。

 前方には山が確認できる。

 小麦村の裏にあった山脈だろう。


「もっとスピード上げてもいいぜ」

「言ったな?」

「いや待てこれ以上はってああああああああ!?」


 容赦なくスピードを上げる。

 地図で見た限りだと、このスピードでいけば昼に到着できる。

 景色は油絵のように山の形状のみしか認識出来ない。


「ソウル、大丈夫か?」

「む、無理……」


 無理無理と呟くソウルの声が次第に遠くなっていく。

 このままでは10mより外に出てしまう。

 仕方がない、無理やり引き寄せよう。

 俺は念動力でソウルをひょいっと自分の近くに引き寄せる。


「おわっ、えっなにこれ!? 自分の意思で飛べてないんすけど!?」

「念動力だ、俺が動かしてる」


 魔法と異能を同時に使うのは結構難しかったりする。

 割と疲れるんだぜこれ。


「僕のスピードをちょっと上げるってのはできないんすかね?」

「飛行魔法の速さは他者からじゃ変えられねぇよ、自分自身の力量で変わるんだ」

「おっ、なら俺は結構いい線いってる感じなんだぜ?」

「まあ、そうな」


 そんな無理にだぜ付けなくていいと思うよ。

 飛行魔法にのスピードは自分の力量、度胸で決まる。

 スピードが上がることによって湧き出てくる恐怖、この恐怖によって無意識にスピードを緩めてしまう。

 元の度胸もそうだが、飛べば飛ぶほど慣れてくるので誰でもこのくらいのスピードは出すことが出来る。

 初めてでこのスピードについてきているということはザンにはなかなかのセンスがあると言えよう。


「なんかつまんないすけど」

「そりゃあお前は何もしなくていいんだから、なっ!」


 鳥の群れを避けながら飛ぶと、山を抜け海が顔を出す。

 あとは鳥に注意しながらまっすぐ飛べば着くはずだ。


* * *


 空の旅はいよいよ終盤を迎えている。

 西大陸には大きな山があり、山頂は雲を軽々突き抜けるという。

 その大きな山が見え始め、もう目の前まで来ていた。

 山には所々に洞穴があり、よく見ると木の枠が付けられている。

 どうやら坑道のようだ、ここで金属などが採掘されているのだろう。


 ちなみにソウルはグロッキー状態だ。


「ソウル、大丈夫か?」

「無理……吐く、吐く」

「そか、頑張れ」

「まさかの根性論!?」


 西大陸目の前にして止まれるかよ。


「仕方ねぇな、ザン、力抜いていいぞ」

「え?」


 俺はザンとソウルの二人を念動力で浮かせ、自分の出せる最高スピードを出す。


「あばばばばばばば」

「うおおおお! すげぇ! すげぇぜこれ! おっほおおおお!!」


 こんな反応になるのも当たり前だ。

 俺の飛行魔法は銃弾より速いぜ。


 あっという間に到着だ。

 最高スピードを出しながら念動力を使うなんて5分ももたないぜ。


「久々の地上だー! 空気がおいし……あんまおいしくないな」


 確かに、なんか変だ。

 むしろちょっとオイル臭いな。


「おい! あっちに街があるぜ!」


 ザンの指さす方向を見る。

 そこには、霧に包まれた街があった。

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