15歳の少女
交渉、というより話し合いも終わり、俺は王様から冒険者カードを受け取ることにした。
「冒険者カードってどうなったんすか?」
「ああ、忘れていたね。えーっと……これだよ」
王様が取り出したのは黒い長方形のカード。
みんなこんなカード持ってんのか、ブラックカードみたいな見た目だな。
「ありがとうございます」
「見たことねぇ色だぜ、ランクどうなってんだ?」
「俺のは金色だ」
「僕は銅色だね」
ダンはおそらくSSランクだろう。
ソウルがAランク。
ってことはザンも金だな。
Aが銅でSが多分鉄か銀、SSが金か。
黒ってなんだ。
冒険者カードのランクを見る。
『Y』
「Yって書いてある」
「Y……? 俺のSSランクよりも上……だろうな」
みんなワイワイ言っているがもちろんライ文字のYであってアルファベットのYではない。
アルファベットのライ文字は八種類の記号の空きスペースに書かれている点の数で決まる。
Yは2本の斜線に1本斜線が重なっている記号に点が3つ書かれている。
点が2つならX、4つならZ、というふうに変化していく。
最初は混乱したな、懐かしい。
「そう、このYというランクは僕がさっき考えたランクだ。ユウトのイニシャルだね」
頭文字Yか。
でも俺車乗れないんだよな、まずどの異世界にも車がなかったし。
「基本自由行動にしようと思う、本音を言うとね……この国の冒険者って肩書きが欲しいんだ」
「ま、俺が味方なら敵無しっすからね」
自由行動じゃなかったら冒険者やめてたぞ。
「僕からの命令は断ってくれても構わないからね、でも意見はあるから命令とかはさせて欲しいよ」
それは命令というのか。
「それで、ソウル君は何をしているのかな」
見るとソウルが玉座の周りをうろうろしながら王様を探していた。
「僕に触れてごらん」
「……見えた! 触ったら見えるようになるのか……」
王様はサイキックス少年かなにかですか。
Ψ難にでも会うんですか。
「影の薄さが娘にも遺伝しちゃってね……本気で隠れればユウト君でも数秒かかるかもしれない」
そんなことありえるのか。
さすがに気づくだろ、こっちだって本気で探すぞ。
「ムーン、入ってきなさい」
ムーンというらしい。よし、探してやる。
どこから来る、前か……後ろか……?
……え、マジでどこ。
「またそこにいるのかい……」
……上だ!
上から来るぞ! 気をつけろ!
「……すごい、2秒で私に気づいてくれた」
天井に開けられた四角い穴から覗き込んでいるのは王様と同じ白髪ショートの少女。
ここから見てもわかる、胸はない。
「む、今失礼なこと考えた」
「考えてない考えてない、てか近い」
シュタッと着地した少女はずずいと俺に近寄ってきた。
身長が足りてないので背伸びしても頭が目の前にくる程度だ。
ロリ枠か、今日は周りが男ばっかりでむさくるしくて仕方なかったんだ、助かった。
「この子が僕の娘、ムーンだ。事項紹介しなさい」
「ムーン、歳は15。読書が好き。よろしく」
遺伝とか以前に性格が暗い。
影薄いのも相俟って隠密性に関しては最強である。
聞く限りじゃ今のは隠れようとして隠れたのだろう。
なにもしてないムーンなら気づける気づける、余裕余裕。
「ムーンちゃん、そこの紫髪のやつにイタズラしてきてよ」
「わかった」
「わかるな!」
いい子だ、素直な子は好きだよ。
ソウルはツッコミをしたはいいがやはりムーンが見えていないようだ。
俺も隠密魔法使ってイタズラしよう。
隠密魔法は割と最初の方の世界で手に入った魔法だ。
影の世界に転移したときにさらに魔法が強化された。
「なんでユウトも消えるんだよ!?」
ゆっくり近づく。
そして目の前で魔法を解く。
「わっ!」
「ぎゃああああああ!? で、出た!?」
「出たんじゃねぇ居たんだよ」
王様はニヤニヤしながら見ている。
さてはSだなオメー。
ソウルの意識は俺に集中している。
俺はアイコンタクトでムーンに指示を出す。
『やれ』
ムーンはコクっと小さくうなづいた。
次の瞬間、ムーンはソウルに膝カックンをした。
「あがっ……あんたら最悪だな!?」
「そんな褒めんなよ」
「褒めてねぇよ!!」
ソウルはいじられキャラだからな、仕方の無いことだ。
「仲良くなれたみたいでよかったよ。実はね、ムーンの婚約相手を見つけようとしているんだが婿候補がみんなムーンに気づかないんだ」
なにそれ悲しい。
虚しすぎるだろそれ。
「それで、出来ればユウト君が婿になってくれたらなぁと……どう?」
「なんでそうなるんすか」
「そこをどうか……ムーンはどうだい?」
ムーンに聞くな。
親のいいなりなんて嫌だろ? 断れ断れ。
「構わない」
「構えよ!」
そんなに見つかったのが嬉しかったのか。
「とにかく、そんなのお断りだ。だいたいさ、俺が暴力ばっかりのDV男だったらどうすんだ?」
「やだ」
「だろ? せめて相手を知ってからにしろ、あと別の男探せ」
ムーンはこくこくうなづく。
王様は煮え切らないと言った表情だ。
「まだ15歳だから大丈夫だって、きっと相手見つかるさ」
「そうだといいんだけどねぇ……」
きっとそういうのに特化した人がいるはずだ。
こう、観察眼が鋭い人とか。
「あ、そうだ。明日西大陸か、東大陸のどちらかに行く予定なんすけど。なんかして欲しいことあります?」
「そうだね……なら西大陸の王に物資の補給を頼みたい。この間北の港で大規模な火災があってね、あそこの復旧のための資材が足りないんだ」
火災?
物騒だな、それは事故なのか、放火なのか。
気になるが後回しだ。
「わかりました、なんか渡します?」
「あそこの王は石が好きだからね、中央大陸でしか取れない宝石をプレゼントするよ」
石が好きなのか。
鼻水とか垂れてないよね?
春日部で防衛隊してそう。
「僕もついて行っていい?」
「どうします?」
「好きにするといいよ、ザン君も行くんだろう? 明日は休みにしておくよ」
「それはありがたいぜ、ありがとな!」
明日、西大陸に行くことが決定した。
その後街を見て回ったが、米は東大陸から輸入しているようだ。
いつかこの国で作らせよう。




