13日の金曜日
さあ舞台は格闘場。
なにここ、なんで城にこんなに大きなスペースがあるの。
「たまに剣技大会で一般公開するんだぜ、俺も何回か優勝してるんだぜ」
前から気になってたけどだぜだぜ言ってるのはなんなんだ、口癖か?
誤植とかしそう。
やっちゃったぜ。
それか魔法使いそう。
マスター○パーク。
「さ、始めようか。ここに印があるだろう? 反対側にも同じ印があるから、ユウト君は向こう側に立ってくれないかな」
「早くやろうぜ!」
すぐ近くにピッチャーが立つところみたいな一本線が埋め込まれていた。
俺が反対側なのね、いいけどさ。
「あ、言い忘れてたけど寸止めだからね、当てちゃダメだよー」
言うの遅くない? まあ初めから寸止めのつもりだったが。
ちょっと風魔法で加速して移動。
まあこのくらい誰でも出来るだろ。
この世界で使えたっけ?
「ふむ、ソウル君。スタートの合図頼めるかな?」
「きょ、恐縮っす! やらせてもらいます!」
誰だ、お前。
「よーしお前ら! 僕がスタートって言ったらスタートだからな!」
「早くしろ」
「わ、わかってるよ。よーい……」
俺は剣に手を当て、すぐに抜けるようにしておく。
最初は魔法を使わずに戦おう。
「スタート!」
「うおおおおおおおお!!」
「ザン! お前は左から行け!」
剣を抜き、軽く走る。
中心、円形の格闘場の中心部分で剣がぶつかり合う。
円を描くように砂埃が舞い散る。
軽い、剣に重みを感じない。
「くそっ、動かねぇ……! 二人がかりだぞ!」
「もっとガンガン来いよ」
ザンは小さく唸るのみで声を出そうとしない。
力で押し切ろうとしているのだろうが、俺相手にそれは通じない。
「な、めるなああああああああああ!!」
ダンが力勝負をザンに任せ、横から斬りかかってくる。
残念、初動で剣が来る場所がバレバレだよ。
両手で持っていた剣から左手を離し、ダンの手首を掴む。
反射的にダンの剣を持つ手が緩む。
「なっ!?」
「ふっ」
足祓いでザンの体制を崩し、ジャンプしてダンの剣の柄を空中で蹴り飛ばす。
ダンの剣は蹴られた方向に真っ直ぐ飛んでいき、壁に突き刺さった。
すかさずダンは剣を取りに走る。
それと同時にザンとの距離を取る。
「一対一だな」
「……行くぜ」
再び剣と剣のぶつかり合い。
ザンは足や頭、腹などをランダムに狙ってくるが、動きを読みそれら全てを剣で受け流す。
ワンパターンすぎる。
あまりにも甘い攻撃に少々がっかりしつつも、決着を付けなければいけない。
「はあああああああ!!」
「はぁっ!」
ザンは剣を真っ直ぐ振り下ろしてきた。
俺はそれを回転しながら避け、首筋に剣を当てる。
「へっ、完敗だぜ」
「動きが甘すぎるんだよ、力はあるのに振り下ろすまでが長い」
「よそ見してんじゃねえええええ!!」
いつの間にか剣を取ってきたダンが横から斬りつけてきた、もちろん軽く受け流す。
こいつに現実を見せてやんなきゃな。
「こいよ、実力の差ってのを見せてやる」
「光よ! 我が剣に答えよ!」
ダンの剣が光を放つ。
光魔法か、いいセンスだ。
ならこっちも魔法使っちゃおうかな。
「よく見ておけ、魔法剣士の魔法ってのは強化だけじゃないってことをな」
俺は愛剣にありったけの魔力を注ぐ。
剣が黒く染まり、刀身も50cmほど伸びる。
「征服しろ、ノワール」
剣を地面に突き刺す。
黒い刀身は少しずつ地面に埋まり、その姿を晦ましていく。
辺りが薄暗くなり、生暖かい空気が漂う。
「な、なんだこれは……」
転移魔法を使い、ダンの背後に回る。
「な、消えっ」
「こっちだ」
「なにっ!?」
ダンは俺を斬りつけようと振り向くが、振り向いた体制のまま動きが止まってしまう。
「俺が英雄ってわかったか?」
「ふざけるな! 英雄はこんなことをしない!」
「あの頃の俺だったらそりゃしないさ」
俺は魔袋から薬草を取り出し、ダンに見せる。
「お前がこの草ならば俺は世界樹だ、まず自分の弱さを知れ」
「世界樹……」
念動力で薬草をダンの背後に浮かせる。
薬草から黒い剣が現れ、ダンの身体を貫いた。
「ぐっ……あれっ? 痛くない」
全て終わったので愛剣ノワールを鞘に入れる。
王様やザン、ソウルが駆け寄ってきた。
「王様、俺が英雄って信じてくれるか?」
「君が人間離れしているのはわかったよ」
これは対処に困ってる顔ですね。
「ユウト、なんだよあれ! こう、剣がぶわーって! 黒くなって、草から剣が生えてきて!」
「俺の剣と魔法を組み合わせただけだ」
ノワールは魔力を入れれば入れるほど色が黒くなり、斬れ味も上がる。
だがそれは魔力一定量入れただけの効果だ。
俺はノワールの真の姿を見つけたのだ。
このノワール、魔力の上限があり、その上限まで達すると影世界に潜ませることが出来る。
別の影から剣を出すことが出来るため、不意打ちにも便利だ。
薬草から剣が出てきたのはダンの剣が光ってたおかげだな。
光魔法を使っていなかったら別のやり方で剣を当てていたことになる、その時の俺はどうやって決着を付けるのだろうか。
「さすが英雄様だぜ、ところで薬草だとか世界樹だとか言ってたのはなんだ?」
「あんま気にすんな」
今更だが自分で言ってて意味わかんなかったわ。
なにが薬草だ、なにが世界樹だ。
普通に足元の影から剣を出したり、薬草じゃなくなにか適当なものでも浮かせればよかったのに。
「ユウト君、なんで剣が刺さったダン君が無傷なんだい?」
「影化したまま刺したから当たらないんです、本来は影から出した瞬間に影化を解除させる仕組みっすね」
フレンドリーに話してるけどこの人王様だよね?
大丈夫かこの王様、そもそも国民に知られてんのか。
「……ユウト君、冒険者になる気はないかい?」
「元々冒険者になりに城に来たんだけど……」
「それは丁度よかった、登録はこっちでやっておくから安心して。冒険者カードはすぐに用意するよ」
「どうも」
簡単になれちゃうもんだな。
やっぱ強い奴が味方にいると心強いのだろうか。
近所のガキ大将の隣にいるやつみたいな安心感だろうな。
それか兄がヤンキーの弟、ちょっと違うか。
王様は冒険者カードを作るためにスタコラサッサと城内に消えていった。
「ユウト……っていったっけか。悪い、お前のこと弱いと思ってた」
「そうそう、俺は強いんだよ。ああそうだ、お前らに言いたいことがあるんだった」
「俺もか?」
そう、ザンとダンに言いたいことがあるのだ。
この二人と戦って思ったこと、感じたことを指摘してやらねばなるまい。
「お前らさ、見せるための剣術で戦ってんだよ。派手な動きをするのも客に見せるためだろ?」
「そうかぁ? 俺は普通に戦ってるだけだぜ」
「でも確かに、無意識の内に大振りになったり大技の時に若干遅く振ったりしてたかもな……」
ザンは剣技大会で優勝したと言っていた。
ダンも上位に入っているのだろう。
こいつらが覚えた剣術というのは初めから実践向けではなく、剣舞に向いている剣術だったのだ。
「そのせいで弱くなってるんだ、それを直せばもっと強くなるぞ」
「僕は?」
「お前は普通に弱いだろ、筋トレでもしてろ」
「もうちょいオブラートに包んでくださいよ!?」
ゼーレだってアロンダイト持ってやっと覚醒したんだぞ、下積みは大事だろ。
さて、冒険者登録もしたし、街でも見て回ろうかな。
色々と知りたいことがある。
米をどこで作っているのか、国の兵力、冒険者の掲示板、などだ。
一日は長い。




