12人居ても気がつかない人
少し短めです
金貨を確保した俺は城の入口付近で入れるようになるのを待っていた。
一家に一台、ザン。
「待たせたな、入れるぜ」
「あんがと」
冒険者登録って何やるんだろ。
過去に十数回冒険者制度のある世界で登録したが、言うだけで登録できたり、テストをしなければならないと様々な登録の仕方があった。
かつてのマールボロでは冒険者制度を前面に推していなかったため、テストなしで冒険者のようなものになれた。
今も変わらないのかな?
「お、お前は……あの時の!」
見知らぬ男が俺を指さしながらそういった。
金髪に藍色のバンダナが特徴的な男だ、アニソン歌ってそう。
あとね、人に向かって指をさすのはいけないことですよ。
ていうか誰。
「ダンじゃねぇか、どうしたんだ?」
「ザン! そいつは何者だ! 昨日図書室で突然消えた二人組の片方じゃないか!」
だから指さすなっての。
どうでもいいけどダンとザンって響き似てるな。
ダダンダンダダン。
「聞いて驚け」
見て笑え。
このボケ前にもやったな。
「なんと、あの大英雄ユウト本人なんだぜ!」
「とうとう頭おかしくなったか」
ダンという名前の男はあからさまに呆れたという顔をした。
まあ850年前の英雄だって言われても信じないよな、この二人がおかしいのかもしれない。
こいつらは揃って頭おかしいから気にすんな。
「と、そんなことよりだな……王が話しをしたいと言っている、悪いが来てもらうぞ」
王様か、いつか話したいと思ってたし、丁度いいかもしれない。
どうせだからでかいことやりたいよな。
トップに自分という存在を知らせてやろうぜ。
「俺も行っていいか? このまま放置は暇すぎるぜ」
「まあ、いいだろう」
ザンが付いてきてくれるのか。
俺が本物だって言ってくれるとありがたい。
ザンで渋々ということは……
「僕も行っていいっすよね」
「お前はダメだ」
「なんでだよ!?」
まあ知ってた。
城に入れて貰えないやつが王に謁見できるわけないわな。
「ソウルも連れて行ってやったらどうだ、俺の連れってことでさ」
「でもな……いや、うん。いいんじゃないかな」
あの巨体で頼まれたら断れないよね。
凄みってのがある、知らんけど。
「マジすか!? 初めての王室だ!」
ソウル、王室は部屋の名前じゃない。
おそらく玉座の間って言いたかったのだろう。
「いいか? 絶対にうるさくするなよ? あくまでいるだけだからな」
「いやいやー、ちゃんとわきまえてますってー」
ソウルはゴマをすりながらダンに擦り寄った。
もう媚び媚びである。
「やめろ気持ち悪い!」
「えへへへえへ」
うわ本当に気持ち悪い。
しかも媚び損してる、媚び損ってなんだ。
「まあ、あの方は緩いから少しくらいなら会話もいいだろう」
ダンがなんかボソボソ言っている。
緩い……会話……?
少ししか聞き取れなかった。
「ザン、ダンと知り合いなのか?」
割と親しそうにしていたので一応聞いてみる。
強さを調べてみたがザンと同じくらいの強さはあるようだ。
ザンと違って魔法も使えるっぽいな。
「おう、あいつは国二番の剣士だ」
「へぇ、ザンの次に強いのか」
てことは国の発展に必要な人材だな。
キープしとこう。
家具選んでるみたいな言い回しだな。
「何をしている! 早く行くぞ」
いつの間にかソウルから距離をとったダンが、玉座の間があるであろう場所を指さしながらそういった。
指さすの大好きね。
俺は別にいいけどお偉いさんに指さすのはやめといたほうがいいと思うよ。
ダンについて行き、玉座の間へ移動する。
玉座の間に入った俺たちは王様が来るのを待っていた。
呼んどいていないのかよ。
「王様いつくんの?」
「すぐ来るから、待ってろ」
気配を感じた。
王様が来た、奥の部屋から出てきたのだ。
玉座に座ったのは白髪の男、おそらく40代。
俺じゃなかったら気づくまでに時間がかかるだろう。
暗殺者の才能あるんじゃないの。
とりあえず挨拶はしとこう。
「はじめまして」
「驚いた、よく気がついたね」
王様は微笑みながらそういった。
自覚してるのか。
「何独り言喋ってんだよ」
ソウルはもちろん気づいてないらしい。
まあ知ってた。
「……あ、王様。昨晩お話した者を連れて参りました」
「王様、相変わらず影薄いぜ」
「はは、ごめんね。生まれつきなんだ」
あ、この人タメ口で大丈夫な人だ。
気さくな人で良かった、年下に敬語はあんまり使いたくないんだ。
王様だから少しは使うかもしれんが。
キウィさんは別な。
「え? 何お前ら怖い、誰もいないじゃん怖い、あと怖い」
「ソウル君、だったかな。私はここだよ」
「おわっ!? え、誰? まさか王様!? こここっこれは失礼を司るっていうかあの」
テンパってるな、失礼を司るってなんだ。
「自然に話していいよ。それでユウト君、だったかな。君は何者なんだい?」
「850年前の大英雄」
「へぇ……証拠とかあったりする?」
「そうだ! 証拠を出せ証拠を!」
ダン落ち着け、犯人みたいになってるぞ。
証拠ねぇ……あ、そうだ。
魔袋に手を突っ込み換金していなかった旧金貨を取り出す。
「この金貨は850年前、使われなくなった貨幣っす」
「ふむ……確かに大昔の金貨だね、ここまで劣化していないとなると、これは大変価値のある物だよ」
そりゃそうだ、現在のレートに換算すると金貨100枚だからな。
その時ユウトに電流走ったからね。
一番電流が走ったのはソウルだと思うけど。
「しかしこれだけで判断するというのもな……そうだ! ザン君、ちょっとユウト君と斬り合ってくれないかな、勝てたら認めてあげるよ」
そんなことでいいのか、おじさん頑張っちゃうぞ。
「おもしれぇ! ユウト、手加減はしねぇぞ」
「どうせならダンとザン二人同時に相手するけど?」
「気安く名前を呼ぶな! ってはあああ!? 身の程知らずにも程があるぞ!」
ザン、俺は手加減するからな。
ダン、地獄を見せてやるよ。
「ほぉ、すごい自身だね。ソウル君はやらなくていいのかい?」
「0をいくら足しても数字は増えないっす」
「どういう意味だ!!」
そのままの意味だ。
俺たちは王様について行き、剣を使えるという場所まで移動することになった。




