大魔王戦開始
俺たちを包み、球状になったマジックシールドが、宙を舞う。
アイアスのマジックシールドが解けて着地するまでの間に、塔を見た。塔はボロボロと崩れそうになっている。
「っなんだよありゃ」
ざざざっと靴が地面とぶつかり、停止する。魔王は羽でふわっと着地していた。
「ユウト!」
「神裂くん!」
「なるべく離れるぞ! 作戦を考える!」
ミントや先生が駆け寄ってくる。幸いかなりの距離を飛ばされたので危険はなさそうだ。
大魔王とは逆方向に走りながら、振り向く。塔は完全に破壊されている。
塔があった場所には、身体中を魔力で包まれた黒い巨人が立っていた。
「魔族の突然変異……やっぱり完璧には合ってなかったんだろうね」
「アイツの目は昔の俺に似てた。きっと狂ってたんだ、戦いに」
俺もそんな時代があった。ヤケになって、各世界の魔王を倒すことを楽しみにしていた。それが目標なんだから、そうやって楽しめばいいと。
「でかすぎだぜ!」
「セ、セブンスタの時くらいでかくね!?」
確かに、あの巨大ゴーレムもあんな感じの大きさだったな。アレはデカいだけで弱点をつけば一瞬だったけど。
「何も知らずに塔に軍を連れていったら全員死んでたぞ……」
班を離れて一足先に到着したのは正解だった。
そんなことを考えていると、馬の鳴き声が聞こえた。丘を登ると、馬車が物凄いスピードでこちらに近づいてきている。
「神裂くん、無事だったんだね!」
「笹谷か、無事だけど、無事じゃないっつーか……」
馬車から顔を出す笹谷、俺は頭を掻きながら大魔王を見る。
「な、なんだいあれは!?」
「大魔王だ」
その瞬間、馬車がガタガタと揺れ、他のSSランク冒険者も顔を出した。皆大魔王という言葉に反応している。
「ユウトよ、何があったか説明してもらおうか」
「大魔王がデビルホーンと合体してああなった、とんでもない魔力だ、正直メビウスだけじゃ足りない」
俺の言葉にリビアルはむっとした表情をした。誤魔化すために目をそらすと、後から別の馬車が数台来ているのが見えた。
その馬車は目の前で止まった。中から人が降りてくる。
「ミントーー!!」
「お父さん!?」
サンタみたいな巨大な袋を持ったクダミさんがミントに抱きつく。抱きつく前に袋から手を離したので袋が地面に落ちた。ガシャンという音を立てながら。
「マールボロ軍、到着しましたよ!」
「し……フォレンさん、遅いですよ」
「ユウトさんが早いんですよ、こっちはスピードホースですよ?」
よく見ると馬の大きさが違う、これは確かにスピードホースだ。メビウスにはスピードホースはいなかったよな。
ということはスピードホースはマールボロの持つ固有の馬? そりゃ馬で来ようと思えるわ。
他の馬車からもぞろぞろと兵士が降りてくる。スピードホースならもっと早く来れるのでは……?
「途中で何かありました?」
「え!? えっとですね……道間違えちゃったりー、海に出たりー、ありましたねー、それだけです」
原因それだろ。
「はぁ、まあ来てくれたからいいです」
「おい英雄! なぜマールボロの兵士がここにいる……!」
「俺が呼んだんです、セブンスタもピースも来ますよ」
「なん……だと……!?」
何ちょっとオサレな言い方してんだよ。
「クソッ、これでは単独で大魔王を討伐し俺の名を轟かせるという作戦が……!」
「どのみちメビウスだけじゃ倒せなかったんだ、諦めな」
それが目的だったか。じゃなきゃ、自分まで戦場に来ないよな。
どうせ「俺の素晴らしい指揮があってこその勝利」とか言って盛るつもりだったのだろう。
「ま、他の国と協力して大魔王を倒せば、良い印象はつくかもしれないけど」
「そうか、その手があったか!」
リビアルはナイスアイデアだと両手を腰に当ててフーハハハと高笑いをし始めた。
「アホだ、こいつ自分が利用されてることに気づいてない……」
「アイアス、黙っててやれ。多分ミントの事件で落ちた信頼を取り戻すのに必死なんだ」
主に王様にな。
「じゃあ、ちょっと試してくるわ。すぐに戦えるように準備させとけ」
「あ、ああ」
そうリビアルに言い、飛行魔法で宙に浮く。
「飛んだ!?」
SSランクの連中が騒いでいる。
上に飛び、周りを見る。メビウスの他の班が見えた。もうすぐで到着しそうだ。
さらにその集団の横を走るのはセブンスタ軍、いい歳した歴戦の戦士たちがここまで走ってきたのだ。
「大魔王は……ん?」
大魔王の体の周りで爆発が起こっている。なんだあれは、攻撃か?
俺たちの来た方向からは逆方向を見た、そこには巨人と子豚がいた。あの爆発はゴピの攻撃だったか。
その近くでは沢山の人が鎧を着て進軍している。
「全員集まったか、よし!」
俺も負けじと大魔王に剣を振り下ろす。落下する速度と剣を振る速度が合わさった斬撃は、大魔王の指を一本切断した。
ように思えた。
切断した指は、落ちることなく、消えることなく、元に戻った。
斬撃が効かない?
とりあえずピース軍とボヘーム軍の所へ向かおう。全員集まっているのかを確認せねば。
スピードを上げ、ゴピとドグラマの所まで飛ぶ。
「ユウトォ……キタゾォ……」
「私が来たからには安心するのだ!」
ワーカッコイー、何その私が来た! 的なの、ヒーローなの? 無個性の主人公に髪の毛食わせちゃうの? 画風違うの?
「ゴピ、ドグラマ、来てくれてありがとう。それでゴピ、手応えはあるか?」
「ふむ、爆破魔法を使ってみたのだが、ダメージは与えられていないな。しかぁし! 魔法が命中するごとに、大魔王の魔力が削れていくのを感じたぞ! まあすぐに元に戻ったのだが」
「元がデビルホーンだからな、体はほとんど魔力でできている。魔法を当てれば相殺できるってわけか」
身体は魔力でできている。無限の魔製ってわけか。
要するに魔法ぶつけたら削れるけどすぐに魔力作っちゃうから倒せないよってことだ。
「さっき俺が剣で斬ったらさ、切断したはずの指が一瞬でくっつきやがった。斬撃は効きそうにない、多分だけど、魔力を削ればコアか何かが出てくるはずなんだ。大魔王だって、全部が全部魔力ってわけじゃないんだから」
あの巨人の中に大魔王、もしくはコアが入っていると仮定する。そうすると、魔力を削り、コアを叩くというのが正しい倒し方だ。
「剣を魔法で強化すれば攻撃をすることもできるだろう。とにかく今は魔法で削ることしかできないぞ。向こうの軍に魔法を使えるものは魔法を、それ以外の者は剣を魔法で強化するよう伝えるのだ」
「了解。そっち側は頼むぜ」
「任せておくがいい!」
ゴピは兵士の中に入り、全員に説明を始めた。
「オレハァ……ドウスレバイイィ……」
「お前の攻撃は全部魔力入ってるから普通に戦えばいいさ」
「ワカッタァ……」
ドグラマと今の大魔王は似ているのかもしれない。ドグラマも、強大な魔力を持っている。
俺はゴピの言ったこと伝え、命令するためにミントたちのいる場所へ転移した。




