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到着

 写真撮影をしてから三日後の夜、相良がデビルホーンの塔を発見した。


 寝る準備を始めた俺たちは相良に魔物を千里眼で探してもらっていたのだ。そしたら、千里眼を使った相良が、進行方向に巨大な塔が見えると言い出した。

 確認をするため、俺たちでも視認できるようにまたしばらく歩き始めた。すると、天を切り裂くかのように突き出した塔が、姿を現した。途中途中にある窓から、紫色の光が漏れている。

 あそこに向かうのは明日にしようと、その場で野宿の準備を進め、夜を明かした。


 そして次の日の昼頃、塔の入口に到着した。


「ここが、デビルホーンの塔でしょうか?」

「でしょうね、俺たちだけで中に入るのは危険です。リビアルが来るまで周辺の探索でもしましょうか」


 どうせ日が沈む前には全員到着するのだ。作戦のためには全員が集まらないと意味が無い。それまでは自由行動だ。

 と、その前に。ここにはアイツがいたな。


「何かいるよ、気をつけて」


 相良が気配を察知した。千里眼を使ったのだろうか、姿はよく見えないようだが、何かがいることには気づいている。


「魔物か!?」


 ソウルくん残念、魔王です。


「いや、魔族だぜ。……それもかなり多いぜ」

「大魔王の手下かもしれません、イアが話をしてきます」


 すいーっとイアが飛行魔法で浮かびながら森の中に入っていった。

 森の中で何の話をしているのだろう、気になる。というか魔王は飛行魔法を知ってるよな。ということはイアが飛んでるのを見てユウトの仲間か聞いてるんだろうな。


 お、帰ってきた。なんかぞろぞろ出てきた、こっわ、悪魔ばっかりじゃん。

 何あの悪魔、フォーク持ってる、なんで。


「大丈夫でしたよー!」

「あ、悪魔……」

「ボクは魔王だ! 目的は……多分キミたちと同じだと思うよ」


 えっへんと両手を腰に当ててドヤ顔をする魔王。

 魔王という言葉に、先生が俺の顔を見てきた。作り笑いで誤魔化した。


「魔王ぅ!?」

「ほほぉ……キミはもしや、ゼーレの子孫だね。イアがマフォの子孫で……もしかしてこの大きいのがアルテの子孫? 似てねー!」


 同意。


「ユウト! こいつ本当に魔王なんだぜ!?」

「俺に聞くな」


 まるで俺が魔王を知っているみたいじゃないか。まあ知ってるけども。


「えっと、この金髪は誰なのかな?」

「出は農民だからな……ダンだ。魔王、というのは本当なのか? その言い方だと、英雄と会ったことがあるかのような言い方だが」

「あるよ、先代魔王、ボクの父親が英雄達に倒された時に会って話をした」


 カラフル三人衆とダンが驚く。数人は俺が過去の話をしたので俺と魔王の関係については知っている。


「この人が魔王……」

「人ではないだろ」


 ミントが魔王を睨みながら呟いたので冷静にツッコミを入れる。

 それにしても敵意がすごい、大丈夫だぞ、魔王は味方だ。敵じゃない。


「ん、もしかしてキミたちは小麦村の子供かな」

「は、はい!」


 魔王がレッドたちに近づき、話しかけた。

 小麦村の騒動か、あれには苦労したな。


「ボクの手下が酷いことをしてしまったみたいだ、ごめんね」

「あ、謝ってもらえたならそれでいいんです」

「ほら謝って! 今すぐ!」

「す、すみませんでしたぁ! 全ては我々の勘違いです!」


 げしげしと悪魔の尻を蹴る魔王。やめたげてよぉ!


「まあ被害は建物や畑が少し荒れたくらいだったし、そこまで気にしてないけど。本当に、勘違いだったんだよね?」

「キミは……そっか。うん、ボクはそんな命令を手下たちにしてないし、させようとも思わない」

「魔王様が平和を望むのなら、我々も同じ目標を持ちます」


 ミントやレッド、ブルー、グリーン、そして魔王たちが和解した。これで諍いは無しだ。


「ところでユート、他の部隊はまだ来ないの?」

「ちょっ! ええと、メビウスの部隊が少ししたら来ると思うよ!」


 まて、バレないようにしてくれよ。あとユウトだ。


「なんで神裂の名前知ってんだし」

「え? だってユートはユートでしょ?」

「ほら! ザンが俺の名前を言ってたじゃないか! それでその呼び方をしようとしてるんだ」

「ふーん」


 危ない危ない。この属性お化けめ、もう少しでバレるところだったんだぞ。


「神裂くん、もう、隠さなくてもいいんじゃないかな」

「さが……ら?」

「相良くん?」


 相良が言った言葉を俺は数秒理解できなかった。隠す? 相良は俺が英雄だと知っているのか? いや、そんなはずはない。そうならないよう、バレないように動いてきたのだから。


「何を言ってるんだよ、俺は隠し事なんて」

「してる。魔王を倒し、大英雄と呼ばれた男、ユウト=カンザキ。神裂くんがその大英雄なんだよね?」


 なんで相良が俺の正体を知ったのかはわからない、だが、ひとつ分かることがある。

 ここで誤魔化すのは、不可能だということ。


「どうして、そう思ったんだ」

「最初は、ちょっとした思いつきだった。Sランクの連中が、何をしているのか、高いところから千里眼で見ようと思った。そしたら、別の方向に、人が沢山いた。そこにいたのが、神裂くんだった」


 そう、か。そういえば相良は上から千里眼で魔大陸を見ていたと言っていた。あの高さで、千里眼を使えば、マールボロの拠点の場所は見える。


「でもそれだけじゃ」

「そう、だから僕は本を読んだ。この世界の本を。解読には時間がかかったけど、ローマ字に似ていることに気づいてからはすぐだったよ。そしてその本に書かれていた人物の名前が、ユウト=カンザキ。神裂くんの名前だった。ここで僕は確信した」

「……すごいな。この世界の人間じゃないのに、わかっちまうのか」


 藤沢や井ノ原、風間が黙って俺と相良の会話を聞いている。


「ユウト……」

「井ノ原、風間、藤沢。ごめん、お前らのこと騙してた」


 深く頭を下げた。こんなに深く下げたのは、久しぶりかもしれない。

 理由はどうであれ、仲間を騙していたのだ、謝らないと気が済まない。


「……状況が理解できないから説明してほしいし」


 ほかの二人もうんうん頷いている。


「わかった、話そう。俺は——」


 俺は自分が現実で死んだこと、何年も異世界を飛び回っていたことなどを話した。大魔王を倒そうと思う理由も、全て。


「……」


 バクバクと音を立てる心臓を必死に鎮めようとするが、どうにも元に戻らない。

 これは賭けだ、もしこれで信用を失うようなことがあったら、作戦は失敗する。それでも、みんななら、俺のことを信用してくれるはずだから、それを信じて、全て話したのだ。

 覚悟を決め、顔を上げた。

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