魔族の街
魔族の街に到着した俺たちは、門番の青い鱗のリザードマンに止められていた。
ちなみにだが、ソウルを先に行かせたら五秒で帰ってきた、話くらいしてこいよ。
「人間を街に入れるわけにはいかない、立ち去るがいい」
「そりゃないぜ、ピンクの髪の女と子供三人、入れたんだろ?」
「……入れていない」
リザードマンは目をそらしながらそう言った。
「嘘が下手だなぁ、門番ならもう少し気をつけるべきだぜ? その入っていった女、俺たちの仲間なんだよ。入れたなら俺たちも入らせてくれ」
「……人間が大勢押し寄せたら騒ぎになる」
確かにそうだな、元々魔族しかいない街なんだ。イアたちが入ったとしても人間が三人、人間と魔族の区別がつけにくい種族もいるので、少人数ならバレる確率は低い。
「別に、食糧を確保するだけさ。なに、荒らしてやろうって訳じゃあないんだ」
「わかった、しかし騒ぎは起こすな、これが条件だ」
「サンキュ、入っていいってよ」
仲間にそう伝え、街の中に入る。
街は亜人が多く、所々に悪魔やスライムがいる。
「な、なんだあの半透明の人は!」
「スライムだ、魔族のスライムは人形なんだよ」
魔物のスライムはプルプルしたゼリーみたいなボールだけどな。
スライムには物理攻撃が効かないから魔法剣士のお前なら戦いやすそうだな。
「魚屋と、肉屋と……まあとにかく大量に買っていこうか」
「金はどうすんだよ」
「ソウル、金渡すから貴族ってことでお前が会計してくれ」
「お、おう。任せろ」
魔袋から金貨の入った袋を取り出し、ソウルに渡す。さて、買い物タイムとしますか。
「イアはどうするだぜ?」
「どうせ動き回ってるだろうし、探すより待ってた方が見つかるだろ」
「確かにそうだぜ」
一番近いのは肉屋、魔獣の肉か、これも大量に買おう。というか、数日間の食糧が手に入ればいい、魔袋……はやめとくか。ミントの収納魔法を使おう。
「ミント、収納魔法で食糧を保管してくれないか」
「いいけど、入るかな……」
「大丈夫だ、覚醒した時に増えたはずだから」
収納数も魔力量に比例する。
ここからなら、五日だろうか。真っ直ぐ五日間走る、それで目的地に到着する。普通の人間がこの距離を走ると、五日じゃ済まないだろう。魔力が上がって走るスピードが上がったので、皆馬並みの速さだ。
馬並みとは言っても、疲れるものは疲れる、結局馬での移動が一番楽なんだが。
とにかく、五日分の食料だな。
「おばさーん、これと、これと、これくれよ」
「いっぱい買うねぇ、お金払ったら持ってっていいよ」
ソウルを会計に行かせ、ミントの収納魔法に肉を入れる。歪んだ空間にほいほいと肉を入れるのは少し楽しいな。
「あの、私たちはどうすればいいのでしょうか?」
「前に会った、ピンクの髪の女の子と、赤青緑の三人を探していてください。食糧はこっちで何とかしますんで」
「わかりました」
先生たちは、通りに出て、イアたちを探しに行った。
さて、次はパン屋だな。調理なしでそのまま食べることが出来るので、米よりも旅に適している。腹が膨れにくいのが難点だけどな。
「おっさん、ここから、ここまでくれ」
「正気か? まあいいが、袋は用意できないぞ」
「それでいい」
またまたソウルを会計に行かせてパンを詰め込んでいると、角の生えたおじいさんが店に入ってきた。
「お前さんが、街に入ってきた人間だな?」
「誰だ」
「わしはこの街の領主でな、まあなに、街での地位が一番高い」
おお、マジか。教えて偉い人。
「その領主様が俺たちに何のようで?」
「そんな喧嘩腰にならんでええ。そうじゃな、食糧を確保するだけと聞いたが、旅の途中か?」
「おうそうだ。大魔王をな、倒しに行く途中さ」
「大魔王を……ほっほっほ、面白いことを言うんじゃのぉ……名前を聞いてもよいか?」
領主の言葉を聞き、近くに先生たちがいないことを確認した。
「ユウト=カンザキ、名前くらい知ってるだろう?」
「まさか……ほお、大魔王を倒すと申したな、場所はわかっておるのか?」
「デビルホーンの塔、と、魔王に聞いている」
「やはりあの噂は本当じゃったか……」
噂? この爺さんは何を知っているのだろうか。
「噂って、なんだ」
「魔王様と英雄が手を組んだという話じゃよ。わしがまだ子供の頃、そんな話を聞いたことがあったんじゃ」
「そうか……」
魔王がその事を広めようとしたのだろうか。俺がこの世界からいなくなってから、あいつも努力したのかな。
「何はともあれ、いいことを聞いた。もしかすると、その大魔王との戦いにこの街の戦士が向かうかもしれんぞ、わしらの王は古くから魔王様じゃ、当然、大魔王をよく思わない者もいるからの」
「そいつはありがたいな、気長に待つよ」
その後、領主の爺さんと別れ、食料確保が終わった俺たちは、先生たちと合流し、一緒にイアを探した。
すると、探している途中でレッドたちを見つけた。
「イアさんは高いところから見下ろすとか言って、上に飛んでいきましたが……」
「上?」
なら上空にいるかもしれないと、空を見上げると、目の前に見慣れた顔があった。
「イア!?」
「どいて、どいてくださいいいいいいい」
ゴチンと、額と額がぶつかり合い、鈍い音が鳴った。いってぇ、死ぬかと思った。普通なら頭蓋骨割れてるぞ。
「やっぱり、みんな来たんじゃないですか」
「か、神裂くん、大丈夫ですか? 治療は……」
あわあわと先生が手を緑色に光らせながら俺を回復しようとしてきた。
「平気です。よし、これで全員集まったし、改めて出発しようか」
「なんか暗い街だったし」
「んねー、でも雰囲気は良かったよね」
現時点でのメンバー全員が揃った俺たちは、街から出て再びデビルホーンの塔目指して走り出した。
街から出る途中で、武器を持った魔族の軍団が、集まっているのが見えた。




