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奴隷

 遠征前日、この日は訓練が少なく、各自最終調整として準備を進めるらしい。俺も朝知った、もっと早く知らせてくれてもいいんだよリビアルさん。


「ユウト、どこ行くの?」

「奴隷になった奴らいるだろ? どこにいるのかわかんねぇからリビアルにでも聞くところ」


 せっかくクラスメイトが奴隷になったのだ。見とかないと損だろ。あと、やらなきゃいけない事もあるからな。

 そんなことを考えながら歩いていると、城の入口が見えてきた。確か、リビアルとかの部屋はこの辺だったはずだ。


「ここだな」


 場所はSランク、今はSSランクか。その部屋の近くにある部屋だ。

 近づくと、声が聞こえてくる。誰かと一緒なのだろうか。

 扉が半開きになっていたので、隠蔽魔法を使ってこっそりと中に入る。ミントは後ろでこそこそしてる。


 リビアルと話をしていたのは、前に笹谷の部屋に行った時に見かけた太った男だった。


「新しい奴隷はできそうですかな?」

「三人奴隷を志望した、全員男だ。遠征前に逃げるとは、馬鹿な奴らよ」

「まあわたくしたちとしては、奴隷が増えて嬉しいですから。しかも男、嬉しい限りですよ。入口付近で待たせているんですよね? ではいつもの採掘場に連れていきますが、よろしいですかな?」


 採掘場……? 奴隷を働かせている場所だろうか。労働力としては女よりも男の方が使えるから、そちらの方が嬉しいのだろう。


「それでいい、金を受け取っている以上奴隷はお前達の持ち物なのだから、こちらのことは気にせず使うことだな。どの道奴隷だ、死んでも構わん」

「わかってますよ、ではわたしはこれで」


 ドスンドスンと音が聞こえてきそうなほどの足取りで扉まで歩き、外に出て行った。扉は出ていけるように完全に閉まる前に止めた。

 今すぐにでも追いかけたいが、その前にリビアルに置き手紙をしなくては。


「扉も閉めずに出ていくか……品のない男だ」


 リビアルが扉を閉めようと近づいてくる。俺は扉の前に立ち、ノワールを抜く。そして、魔力を注いだ。


「黒騎士っ……!」


 辺りが一瞬暗くなる。

 リビアルは後に下がり、護身用の短剣に手をかける。

 俺は警戒しているリビアルを見ながら、魔袋から手紙を取り出し、地面に置く。

 そして、そのままゆっくりと下がり、部屋を出て扉を閉めた。


「手紙……」


 小さな手紙に、俺はこう書いた。


【デビルホーンの塔にて、我らが大魔王様と共に貴様らを待つ。——黒騎士ノワール】


* * *


 太った男、奴隷の所有者を追いかけ、採掘場に向かった。三人の奴隷というのは、数日前俺に絡んできた男だった。


「おい! 何すんだっ」

「お前らは奴隷だろう、黙って従ってればいいんだ」


 奴隷主人は三人の足に鎖を繋いだ。頑丈で、採掘場から出られない長さの。


「くそっ、よ、よお久しぶり」

「うるせぇよ、黙って掘ってろ」

「な、なんだよお前ら……どうしちまったんだ」


 かつてのクラスメイトを見つけ、話しかけたが素っ気ない態度を取られてしまっている。

 みんなもう、奴隷に染まっているのだ。


 ああもう我慢出来ない、このまま見ているだけだなんて、じれったくてたまらない。

 俺は隠蔽魔法を解き、奴隷主人に話しかけるべく走って近づく。


「見学していいか?」

「ん? おういいよ、好きにしてて。ただし、奴隷には手を出すなよ」

「傷つけたら弁償すればいいんだろ?」

「はっ、まあそうだな。金貨一枚で弁償だ。そんだけありゃもっといい奴隷が手に入る」


 昔から変わってないか、どこの世界でも、奴隷はあくまで道具。他人の奴隷を殺そうが弁償すればいいし、主人が殺そうが何も言われない。

 俺も道具だと思ってる。


 ツルハシを必死に振る奴隷を横目に、落ちている石を拾う。


「これは……鉄か?」

「よくわかったなぁ、そいつは鉄鉱石だ。最近は奴隷が少なくてな、鉱石の値段も上がってるんだ」


 時代の流れか、奴隷になるくらいなら冒険者になってみようという人が増えたのかもしれない。


「チッ……あれは、神裂!? なんだおい、てめぇも奴隷になったのかぁ? 結局お前も逃げた雑魚なんだろ!」

「俺は奴隷になんかなってねぇよ、あと自分が逃げたって認めてるじゃねぇか、どっちが雑魚だおい」

「なんだと!? お前なんぐあっ!?」


 男が怒って叫ぼうとした時、奴隷主人が顔面を殴った。


「すみませんね、お知り合いで?」

「ああ、メビウスの異世界人だ」

「あー、それでぇ」


 よかった、この人が殴りかかってくれて。あのままグチグチ言ってたら俺が何かしらアクションを起こしていた。金貨払わなくてよかった。

 顔を抑えて唸っている男の前に立つ。


「お前さ、奴隷がどういう扱いなのか知ってんの?」

「し、知ってるわけねぇだろ」

「奴隷はな、道具なんだよ。使えなくなったら捨てるし、壊されたら弁償してもらう。代わりなんて、簡単に手に入る」


 世界史の授業で聞いたことがある。奴隷に怪我をさせたら、弁償をすると。

 異世界に来てから、それを経験して、考え方も変わった。転生してから間もない頃は、奴隷が可哀想だとか、そんなことを考えていた。


「……なんで、お前がそんなこと」

「さーな」


 男を置いて、他の奴隷を見る。

 明石はー、あれ、いない。


「明石とか今村って奴らはここには居ないのか?」

「あー、最初の五人だろう? あまりにも使えないんでな、奴隷商人に売ったよ」

「ほーん」

「奴隷商人かぁ、まあ魔力も少ないし、仕方ないのかも」


 まあ別に興味もないけど。あの時助けた意味なかったな。あのまま、魔物に食い殺された方が、幸せだったのかもしれない。

 最後に、採掘の手助けでもして帰ろう。


「じゃあな奴隷、後悔しろよっ!」


 そう言いながら、採掘場の壁に剣を投げる。壁に突き刺さった剣は、ピカっと瞬いたと思うと、壁に走ったヒビに沿いながら爆発した。

 唖然としている奴隷たちを置いて、ミントを連れて城へ戻った。

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