師匠と父親
マールボロ城に転移して、玉座の前に立つ。
視界に映ったのは、またかと頭を搔く王様と、驚く師匠とクダミさんだった。
「何してるんですか、師匠」
「こっちのセリフですよ! ユウトさんですか? どうしたんですかその髪」
「僕も気になるな、その髪はどうしたんだい? あとミントは元気?」
一度に聞かないでくれ。俺は聖徳太子じゃないんだ。
一説によると聖徳太子は一人ずつ話を聞き、一人ずつ答えていたらしい、普通かよ。
「王様、髪のこと話してないんですか?」
「いやはは、忘れてて」
実は覚醒してすぐにマールボロ城に戻って報告をしていた。その後、三日後に魔大陸に遠征すると知った日にも、報告をしている。
そのため、王様は俺の髪の一部が白くなったことを知っているのだ。
『師匠!?』
『師匠な、エルフだったんだよ』
『マジかぁ……』
シロが師匠が生きていたことに死ぬほど驚いている。いやお前は死んでるだろ。
「後で王様から聞いてください。あとミントは元気ですよ、俺も驚くくらいの才能で道具を使いこなしてます」
「だよね! さすが僕の娘、天才!」
クダミさんは涙を流しながら手のひらを重ねた。酒の席で仲良くなってわかったのは、嫁も夫も似たもの同士ということだ。特に変人なところとかすごく似てる。
あと、最初に会った時とテンションが全然違う。もっと大人しかったはずなのに、打ち解けてから奇行に走るようになった。
「それでユウトくん、何の用かな」
「魔大陸への遠征まで、あと二日になりました。明日は遠征前日で忙しくなるので、話でもしようかと思いまして」
兵隊たちに指示があるのなら、それも聞いておきたかったしね。
「そうか、話もいいんだけど、ちょっと頼みたいことがあるんだ、いいかな?」
「ええ、やれることなら」
「この二人を、部隊に入れたい」
師匠と、クダミさんが並ぶ。
「師匠とクダミさんを……?」
「うん、今から向こうの拠点に転移ってのが一番手っ取り早いんだけど、どう?」
「二人がいいのであれば、俺は全然構いませんよ。むしろ戦力が増えるんですから、ありがたいです」
ここまで来たらもう大乱闘ですよ、もし大魔王に手下がいても、簡単に倒せそうだ。
それに、特殊な敵が現れても、対処がしやすい。
「ユウトさん、お願いしますね!」
「師匠、あの頃みたいにかっこよく戦ってくださいね」
「もちろん! あと、もうユウトさんの方が強いんですから、名前で呼んでほしいですね……」
「……フォレンさん」
忘れかけていたが、なんとか思い出せた。危ない、冷たい目で見られるところだった。
『そういやそんな名前だったな』
『お前は恥を知れ』
心の中でシロを罵倒してから、師匠の顔を見る。
あ、顔赤らめてる。この人少なくとも850歳は超えてるんだよな? 全然見えねぇぞ。俺も人のこと言えないけど。
だがまて、俺は異世界転移するたびに若返るのだから、見た目の年齢はノーカンだ。ノーカン! ノーカン!
「ミントに会えるんだね!」
「ミントはメビウスの部隊に混ざるのでそうそう会えませんよ」
「なんでだぁ!」
クダミさんは床に這いつくばって拳を叩き下ろした。忙しい方だ。感情がそのまま行動に出てるんじゃないか? その怒りを魔物にぶつけてください。
「ローアル! ミントと、ミントとすぐ会えるよう指示してくれ!」
「ユウトくん、兵士たちには自分の命優先で、危なくなったら引くように言っておいてくれ。僕からは以上だ」
「おぉい!」
怒涛のツッコミを平然と無視する王様に、寒気すら覚える。そこまで行ったら反応してやれよ、クダミさんが可哀想だぞ。
「くそぉ! ユウトくん、その拠点に着いたら僕のアイテムたちを返してね!」
やっぱ可哀想じゃない、もっとやれ。
「無理やり魔袋に入れたのはあんたでしょう」
「あんなに大量のアイテム持ち歩けるわけないでしょ!? 誰だよあんなに作ったの! あ、僕か!」
ぶん殴っていいかな。
「拠点に着いたらそう伝えておきます。行きましょうか、フォレンさん」
「はい!」
「ハブらないで」
まあ悪ノリはこの辺にして、早速転移をしよう。
俺は師匠に、もっと近寄るように手招きした。
「クダミさんも」
「よしきた!」
クダミさんにも手招きをし、転移を始める。
一度に数人の転移は、久しぶりだ。
「死ぬなよ、クダミ」
「……ああ」
王様とクダミさんが何かを言った気がしたが、転移の音でよく聞こえなかった。
しゅんしゅんと光が走り、完全に包み込まれマールボロの拠点まで転移した。
外は暗い、夜中だから仕方がないのだが、もしかしてみんな寝てる? あ、見張りの兵士が近づいてきた。
「お疲れ様です! ユウトさん! そちらの方々は?」
「俺の師匠のフォレンさんと、ミントの父親兼アイテムマスターのクダミさんだ」
「ユウトさんの師匠ですか! それにあの噂のアイテムマスター……明後日の魔大陸の遠征に参加する、ということでしょうか?」
「ああ、あと王様からの伝言だ、みんなに伝えといてくれ。自分の命優先で、危なくなったら引くように、だそうだ」
兵士は一言一句聞き逃さないように、耳をすませて聞いていた。
大丈夫だから、聞き取れなかったら言い直すから。
「了解しました! 必ずこの私が伝えます!」
「お、おう。頼んだぞ」
「はい!」
兵士の熱意に若干引きつつ、空いているテントに入る。
元々木材などの資材が置いてあった場所だが、拠点を囲う柵などに全て使ったため、空きテントとなっている。
掃除もされ、寝具も用意されているようだ。救急で怪我をした人用に開けていたのだろうか。
「ここにしましょう」
「わかりました!」
「あああと、俺の髪についてはザンとか、その辺に聞いてください」
「二人とも! 敷けたよ!」
クダミさんは真っ先に寝具を用意し、すぐに寝れるよう準備をした。
こういう所はしっかりしてるんだよな。
「あの、男の人と一緒というのは……」
「この人キウィさんにしか興味ないんで大丈夫ですよ」
「は、はあ」
その後、魔袋から大量のアイテムを取り出し、クダミさんに渡した俺は、メビウスの寮に戻り、明日へ向けて就寝したのだった。




