01-02 幽霊の始祖と鑑定の魔眼
「実に興味深い話よの」
ダンジョンの最下層、ドゥーラキューラの部屋に連れてこられた俺は、問われるままに異世界転生と幼女神様から貰ったスキルについて、隠すことなく話した。
ついでに、前の人生と合わせて79年間も童貞だってバレてしまったけど。
ドゥーラキューラの種族は吸血鬼であると、部屋に連れてこられる途中で聞かされたのだが、見た目の通りだったので、「でしょうね」と、薄いリアクションをしてしまった。
寂しそうな顔をしてたけど、気が付かないフリをしておいた。
後ろから声をかけられた時には殺されるかと思ったけど、なんだか気の良いおじさんのようで安心した。
ちなみに、崖の下にはドゥーラキューラの部屋に直通の隠し通路があり、移動は楽だった。
天井にはシャンデリアが吊ってあり、ロウソクではなく淡く光る玉が付いていた。
テーブルやソファー、本棚等があり、生活感に溢れている。机の上には謎のガラス容器が所狭しと並んでおり、赤色や青色に発光している液体が入っている。
吸血鬼にお約束の棺桶はなく、部屋の隅にフカフカのベッドが置いてあったのは興醒めだったのだが。
「ところで、幽霊とはなんなのだ?」
ドゥーラキューラは、俺の頭上を見ながら問いかける。
「⋯⋯死んだのに成仏しないで彷徨うモノですかね。ですが、空想上のモノです。死んだら即転生らしいので」
「そんなハズはない。鑑定魔法で、お前のステータスを見るとこうなっとる」
ドゥーラキューラは、俺のステータスを紙に書き込み見せてくれた。
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氏名:テッペ
種族:人族の幽霊
年齢:39
レベル:1
体力:0/0
魔力:150/3,000
筋力:0
状態:幽霊化
スキル:気合、草むしり、穴掘り、憑依
称号:幽霊の始祖
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⋯⋯ナンダコレハ?
「ご、ご冗談を。俺は幽霊ではありませんよ?」
そうだ。ドゥーラキューラの悪ふざけに違いない。
「信じておらんのか。ならば、お前に良いものを与えよう」
ドゥーラキューラは、俺の顔の前に人差し指を伸ばし、その長い爪で何やら丸い文様を描いた。
やがて、空中に顔の大きさ程の輝く魔法陣が誕生した。魔法陣が小さくなったかと思うと、俺の左目に飛び込んできた。
「ーーーー!!!」
真っ赤に焼けた鉄を押し付けられたような痛みが目の周りに走る。眼を押さえながら、声にならない声で叫ぶ。
だが、痛みは一瞬で消えた。右目は無事のようだ。
「な、何をした!」
「魔眼だ。鑑定の魔眼《真理を見通す目》を移植したのだよ」
鑑定の魔眼だと?異世界転生の定番のアレか?
「頭上を見るが良い」
ドゥーラキューラが俺の頭上を指差す。
指につられて頭上を仰ぎ見ると、そこにはまるでゲームのようなウィンドウが表示されていた。
紙に書いてあったステータスが表示されていた。
確かに、種族が人族の幽霊になっていた。
あの高さから落ちたのだ。もしかしてとは思っていたのだか、やはり助からなかったということか。
「俺は、元々は普通の人族でした。崖から落ちた時に死にたくないと、気合スキルに願った結果、新しい種族〈人族の幽霊〉を作り出し、変化したのかもしれません」
死んだら即転生の世界には、やはり幽霊は存在しなかったのだ。称号に〈幽霊の始祖〉とあるのが、何よりの証拠だ。
まったく、想像の斜め上に作用するスキルだぜ。
「なるほどの。それなら、自分が幽霊だと気づいていなかったのにも納得ができるな。見た目はレイスのようだが、まったく新しい種族か。永く生きていれば面白いことがあるもんじゃな。かっかっか」
初めてあった時にもレイスとか言っていたけど、この世界にはアンデッドがいるようだ。魔族は死んだら即転生以外に、アンデッドになる選択肢があるのかな?