エピローグ
ーー裏野ドリームランドって知ってる?
ーーあぁ、あの廃園になった遊園地でしょ。気に入られた人は出て来れないってウワサの。
ーーそう。でも記憶を消されて元の生活に戻って来る人もいるらしいよ。その人はよっぽど気に入られたんだろうね。
◇◇◇
誰も助けることができなかった。
俺はなんて無力なんだろうか。
みんなでもう一度あの部室で喋りたかったなぁ……
「……きと……暁人!」
声がする。この声の主は広崎愛莉だ。
「ん……え、あ、愛莉」
ここは檜山暁人が通う高校の教室。
檜山暁人は広崎愛莉の声に目を覚ました。
窓の外を見てみると綺麗な夕日が沈み始めていた。
どうやら広崎愛莉は、放課後まで目を覚まさなかった檜山暁人を起こしに来たようだ。
「もぉ、まさか放課後まで起きないなんて思わなかったよ」
「あはは……、そんなに寝てたんだね」
「あれ、暁人、なんで泣いてるの?」
「え……?」
頬を触ってみると確かに濡れている。
寝ている間に泣いていたのだろうか。
なんだかとても悲しくて憎ましい夢を見ていた気がする。
だけど、何も思い出せない。
どんなに思い出そうとしても思い出せないので、取り敢えず部活に向かうことにした。
部室に向かう途中で、檜山暁人は広崎愛莉の手の甲の怪我に気が付いた。
「その手の怪我どうしたの?」
広崎愛莉は自分の手の甲を見ながら微笑んだ。
「あぁ、これ?猫を抱っこしようとしたら引っ掻かれちゃって」
広崎愛莉はなんだか少し嬉しそうに話していた。
だが、檜山暁人はその言葉に疑問を抱いた。
あれ?でも確か、昔猫に顔を引っ掻かれてから愛莉は動物の中でも猫が一番嫌いだった筈じゃ……治ったのかな?
「そうなんだ、猫かわいいもんね。でも良かったね、猫嫌い治って」
その言葉に広崎愛莉は、ほんの一瞬だけ檜山暁人を睨みつけたように感じたが、すぐに笑顔に戻った。
「うん、まぁね……」
だけどその笑顔は、なんだか冷たい笑顔のように感じた。
部室に着いて扉を開けた瞬間、なんだか静かな気がした。
いつもはもっと賑やかだったような、そんな気がしていた。
だけど、それはありえないことなのだ。
だって超常現象研究部の部員は、檜山暁人と広崎愛莉の2人だけなのだから。
「部員って、俺達2人だけだっけ?なんかもう少しいたような……」
「えー、何言ってるの?元々私達だけだったじゃん。それにこんなマニアックな部活に普通誰も入りたがらないよ」
「……それもそうか……って、もしかしたら入りたい人まだいるかもしれないじゃん!俺はまだ諦めてないよ!」
「あはは、そうだといいねー」
確かに、入学した時に超常現象研究部の部員は、2つ上の先輩しかいなかった。
だけどその先輩もすぐに引退してしまって、部員は俺と愛莉の2人だけになってしまったのだ。
そうだと分かっているのに、やはり何かが引っ掛かる。
部員のことだけじゃない。
あの、猫に引っ掻かれたという手の傷。あれは前にどこかで見た気がする。
確かあれは、俺が抵抗するために……。
何に抵抗したんだ?
そう、首を絞め殺されそうになったから、必死に抵抗して……その時に俺がつけた傷……だよね……?
あれ?俺、もしかして記憶が欠けてる?
あの夢は本当に単なる夢だったのか……?
エピローグです!最終話です!
「廃園のスペクター」はこれにて終わりです。
最後まで読んで下さった皆様方、本当にありがとうございました!
小説を最終話まで書き終えることがほとんどできずに、途中で終わらせてしまうことが多かったので、今回は最後まで書けたのでとても嬉しいです(*´ `*)
次の作品を書いた時も読んで頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします(*^^*)