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第5話 裏野ドリームランド



ーーねぇ、裏野ドリームランドが廃園になったウワサって知ってる?

あの遊園地には度々"子どもがいなくなる"って噂があったな。

閉園した理由は知らないけどさ、そんな噂があるようじゃねぇ。



◇◇◇



檜山暁人は『それ』によって受けた打撃がまだ体に残っていたが、必死に立ち上がり渡瀬ひかりの元へと近寄った。


「渡瀬、今のうちに逃げよう!」


檜山暁人が渡瀬ひかりにこの遊園地から逃げるように持ち掛けたが、渡瀬ひかりは絶望から立ち直れずにいた。


「でも、桐谷が……」


「うん……将吾は死んだよ……」


「私のせいだ……私がもっと早く助けていれば、桐谷は助かったかもしれないのに……」


違う。

俺は愛莉の様子がおかしいと気付いていたのに、それを事前に止めることができなかっただけでなく、将吾が捕まった時にすぐに反応することができなかった。

俺なら止められたかもしれないのに……。


「違うよ。渡瀬のせいじゃない。そもそもこの遊園地に来た事自体が間違いだったんだよ」


廃園の遊園地なんて面白半分で来ていい場所ではなかったんだ。

最初は楽しかった。

普通では見られない光景が見られて。

でもそれは、誰かの犠牲が伴ってでも見たいものではないんだよ。

今、生き残っている人だけでも生き延びなければ。

直紀を探さなきゃ。

でも、まずは渡瀬だ。

渡瀬はもう限界だ、彼女だけでも家に帰さないと。これ以上ここにいたらきっと壊れてしまうから。


「渡瀬、確かに将吾は死んだよ、愛莉に成り代わった『やつ』が殺した。『あれ』が何をしたいのかは分からない。もしかしたら俺達全員を殺したいだけなのかもしれない。でも、だからこそ俺達は殺されちゃいけないんだ。俺達まで殺されたら誰が将吾を外まで連れ出すの?ちゃんと弔ってあげよう。それが今、俺達にできる最善だよ」


「……桐谷にはちゃんと天国に行ってもらいたい。うん、分かった。今はここから出て、助けを呼びに行こう。そのために生き延びなきゃ!」


渡瀬ひかりは目元をグイッと涙を拭い取った。

そして、覚悟を決めたようにその目は決意に満たされていた。


「『やつ』が戻ってくる前に行こう」


「そうだね。でも、檜山走れる?」


渡瀬ひかりは檜山暁人の体はもうボロボロなのだろうと思ったのだろう。

確かに、檜山暁人の体は歩くのがやっとで、走れたとしても全力で走ることはできない。

だけれど、今は無理をしてでも走るしかないのだ。


「大丈夫……とは言えないけど、頑張るよ」


「いつでも肩貸すからね!」


「ありがとう」


そして、檜山暁人と渡瀬ひかりの2人は地下に拷問部屋があるドリームキャッスルから外へと出た。


どのくらい走っただろうか。

全身が痛い。だけど止まるわけにはいかない。

いつ『やつ』が来てもおかしくはないんだ。

愛莉を助けたい。

直紀を探したい。

でも今は、ここで起きたことを外の人に知らせないと。


檜山暁人と渡瀬ひかりは必死で走ったおかげか、出口が目の前に見えてきた。


「やった!出口だよ!」


「はぁ、はぁ、よかった。これで……」


檜山暁人が息を荒立てながら言葉を発している途中で、その言葉はある者によって遮られた。


「あきとぉ~、ひかりちゃ~ん!キヒヒッ」


あの不気味な笑みを浮かべる『それ』が現れたのだ。


「ひ、檜山、逃げよう!」


「ぐぁ……っ!」


「檜山っ!!」


『それ』はものすごい速さで近寄ってきて、一瞬で檜山暁人の首を締め上げ始めたのだ。


「ぐ……くそっ!」


檜山暁人は、うめき声を上げながら必死に抵抗をする。

『それ』の手の力が少しでも弱まるように檜山暁人は『それ』の手の甲に力一杯、血が滴れるくらい必死に"引っ掻く"。

広崎愛莉の姿をした手の甲から血が滴れる。

だが、『それ』は痛くないのか、痛みを感じないのか、全く効いてはいなかった。

それでも、檜山暁人は抵抗を続けた。

だけれど、どんなに抵抗しても手の力が弱まるどころか、ビクともしなかった。

流石にもうダメかと思ったその時。


「うりゃぁぁぁぁぁ!!」


渡瀬ひかりが叫びながら『それ』に飛び蹴りを食らわせてやろうとした。だが、『それ』には届かなかった。

それは距離が足りなかったとか、勢いが足らなかったとかそういう理由ではない。

足がないのだ。

渡瀬ひかりの両足の膝から下が、消えてしまったかのようになくなってしまったのだ。

『それ』はどこから取り出したのか、草刈りの釜ほどの大きさの斧を持っていた。そして、その刃先には血が。

よく見ると渡瀬ひかりの下には渡瀬ひかりの足であろうそれが落ちていた。

つまりは、『それ』が斧で渡瀬ひかりの両足をものすごい力と速さで切断したのだ。


「え……い、いやぁぁぁ!私の足が!!」


渡瀬ひかりは痛みと絶望から叫び声を上げた。

だが、渡瀬ひかりに攻撃を仕掛けたおかげで、『それ』は檜山暁人の首から手を離したのだ。


「ゲホッ、ゲホッ!お、お前っ!」


『それ』に攻撃をしようと立ち上がろうとしたが、檜山暁人の体はもう限界だった。

檜山暁人が少し隙を見せたと同時に、『それ』は檜山暁人の髪を鷲掴み、渡瀬ひかりの髪までもを鷲掴んだ。

片手ずつ掴んで何をするのかと思ったら、髪を引っ張りながら檜山暁人と渡瀬ひかりを引きずり出したのだ。


「みんなで仲良くあっそびーましょぉ~!キヒヒヒヒヒッ」


やはり『それ』は不気味に楽しそうに笑う。


「やだっ!離して!いやぁぁぁぁぁ!」


渡瀬ひかりは叫ぶ。もう痛みと恐怖の違いすらも分からなくなっていた。


「離せっ!お前さえ現れなければこんなことにはならなかったのに!離せぇぇぇ!!」


檜山暁人は何もできなかった自分に苛立ち、誰も救えなかったことに絶望をしながらも、今の状況をを抗えずにはいられなかった。


だが、『それ』は容赦なく2人を引きずり、来た道を戻るように遊園地の中へと戻って行く。





ここは裏野ドリームランド。廃園した遊園地。

数々のウワサが流れ、その遊園地に存在する者達に気に入られた人達は、死ぬまで遊ばれるのだとか。

今宵は誰が気に入られるのだろうか。

さぁ、新しい客人のお出ましだ。







第5話目です!

今回は何のアトラクションにも触れていません。

ちなみに、遊園地の話はここで終わりです。

そして、次回最終話です!


最後まで読んで頂けると嬉しいです!

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