第3話 ドリームキャッスル (1)
ーーねぇ、ドリームキャッスルのウワサって知ってる?
ドリームキャッスルには隠された地下室があって、しかも拷問部屋になってるんだとさ。
遊園地にあるわけないのに。
だから今度確かめに行ってくるよ。
◇◇◇
愛莉は昔から幽霊やゾンビなど怖いものが嫌いだった。
だからさっきミラーハウスで一人でいた時には驚いた。
うずくまって泣いているかと思ったら、泣かずに立っていたから。それどころか、鏡に向かって笑っているようにすら見えた。
笑っているのは俺しか見ていなかったようだけど、確かに一瞬だけ笑っていたんだ。
「よし、拷問室探すぞ!」
「拷問室ってそんなに楽しそうに探すものじゃないでしょ」
桐谷将吾の言葉に渡瀬ひかりは思わずツッコミを入れた。
「いーんだよ。未知の部屋探し、楽しそうだろ」
「まぁ、面白そうではあるけどね」
桐谷将吾は楽しそうに言った。そして渡瀬ひかりは抑えつつも面白そうなことに興奮を隠しきれていなかった。
「愛莉はさっき怖い思いさせちゃったし、嫌だったら無理に入らなくてもいいんだよ?」
「ううん、大丈夫だよ。ありがとう、ひかりちゃん」
こうして誰一人掛けることなく、ドリームキャッスルの地下の拷問室の捜索のために、中へと入って行った。
◇◇◇
俺は昔からムードメーカーだと言われ、よくクラスの中心にいた。暁人はムードメーカーではないけど、クラスの中心にいるような人物だった。だから仲良くなれないだろうなと最初会った時は思った。
だけど、話していく内に同じ様なことが好きだと知り、そこから徐々に仲良くなっていった。
今ではお互い怪奇現象のことを1番盛り上がりながら話せる関係になっていた。
ドリームキャッスルはお城のような建物で、それなりの広さはあるのだが、人が動きやすいようにと物自体はそんなに置いてはいないため、探すのは然程大変ではない。
「じゃあ、まずは地下に繋がる部屋を探そうか」
「地下って言うくらいだから床下とかに階段が隠れてたりするのかな?」
「いや、もしかしたら普通の扉が何かの仕掛けを解除することで地下への扉へと変わる可能性もある」
「案外こういう普通の扉が地下への扉だったりしてな……うわっ!」
檜山暁人、渡瀬ひかり、鈴村直紀が真剣に考える中、桐谷将吾は適当に近くにあった扉を開けた。
だが、みんなの方を向きながら扉を開けので、扉の先が下りの階段だということに気付かなかった。
それに加えて、その扉は奥に押す扉。桐谷将吾は扉に体重を乗せながら開けたため、数段下まで転げ落ちた。
「だ、大丈夫?将吾」
「ちょっと、何やってるのよ桐谷、大丈夫?」
「まったく、ちゃんと確認してから開け」
「大丈夫?桐谷くん」
みんな桐谷将吾の方へ懐中電灯を照らす。
「はは、わりぃ、大丈夫」
桐谷将吾はみんなの方を見上げながら少し恥ずかしそうに笑った。
地下へ続く階段は元々明かりをつける予定がなかったのか、他の場所と比べても一段と暗さが際立つ。
5人とも懐中電灯を照らしているから歩けているのだろうが、例え昼間であってもこの階段は暗く光を通さなかったであろう。
階段を下った先には、階段へ入る扉より大きめの両開きの扉が現れた。
「あ、開けてもいいか?」
「開けた瞬間罠が作動する可能性もあるな」
「罠の可能性も考慮しながら慎重に開けてみよう」
桐谷将吾、鈴村直紀、檜山暁人の男子3人が先頭に立ち、慎重に扉を開ける。
少し、少しずつと開けていく。
だけれど、どんなに扉を開こうとも罠らしきものは作動しなかった。
「罠は作動しなかったね」
と、檜山暁人が言う。
「いや、まだ安心はしない方がいいだろう。もしかしたら足を踏み入れたら……」
と、鈴村直紀が話している途中で桐谷将吾が割り込んで言う。
「めんどくせぇから入っちまおうぜ」
桐谷将吾が足を踏み入れようとする。
「おいっ、待てっ!」
それを静止させようと鈴村直紀は叫んだが、それを聞く前に桐谷将吾はもう足を部屋に踏み入れていた。
「なーんだ、何も起きねぇじゃん」
足を踏み入れても何も起きなかったことにみんなはホッとした。そんなみんなの気も知らずに、桐谷将吾は一人、部屋の中へと入って行ったかと思えば、興奮したように大声でみんなに話し掛けてきた。
「おいっ!見てみろよ!拷問器具がいっぱいあるぜ!」
部屋の中には色んな種類の拷問器具が揃っていて、なかには見たことのないような拷問器具まであった。
だが、桐谷将吾の言葉に一番早く反応したのは広崎愛莉という意外な人物であった。
「ねぇ、桐谷くん。拷問器具の使い方って知ってる?」
「いや、知らねぇけど……」
「あはっ、だよね!私思うんだ、拷問って使い方を知らない人がされるのが最高に楽しいんだろうなってね!」
「あ、愛莉……?何言ってるの?」
広崎愛莉の突然の変化に誰もが驚いた中、そんな広崎愛莉に最初に話しかけたのは渡瀬ひかりだった。
「何って、拷問だよ!だってこんなにあるんだよ!?試さないでどうするの!?」
広崎愛莉は両手を広げて、興奮したかのように目を輝かせていた。
そんな見たこともない広崎愛莉をどうすればいいのか分からずに、4人は動けず、何も言えなかった。
「ほら、桐谷くんこっち来て」
そう言って掴まれた腕は力強く引っ張られた。
まるで女子の力ではない、それどころか人間でも出せないほどの強い力で引っ張られて行く。
悪寒がした。
このまま広崎愛莉に付いて行ってはいけないと本能が叫んでいるように感じた。
「ちょっと、まっ……」
言葉を最後まで言い終える前に、腕をさっきよりも強く引っ張られ、強引に椅子に座らされた。
椅子に座らされたと同時に、広崎愛莉は桐谷将吾の腕や足、体を椅子に固定していく。
そして全く身動きが取れなくなった。
「本当は裸で座るものなんだけど、まぁ、これでも充分楽しめるよね!」
広崎愛莉はそう言うと、椅子の近くにある赤色のレバーを下ろす。
すると、桐谷将吾が固定された椅子に数々の針のようなものが飛び出してきた。
その針は桐谷将吾の全身を突き刺し、苦痛を与えさせた。
「ああああ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
桐谷将吾は苦痛に耐え切れず叫びだした。
桐谷将吾を突き刺した針の先からは大量の血が流れ出す。
そして、次に広崎愛莉は黄色のレバーを下ろす。
すると、椅子から大量の電気が流れ、桐谷将吾の体を包み込む。
「あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
先程よりも苦しそうに痛そうに桐谷将吾は叫ぶ。
「……や、やめて!!」
渡瀬ひかりが耐え切れずに叫び出す。
檜山暁人と鈴村直紀は突然の目の前の光景にまだ追いつけずにいた。
広崎愛莉は渡瀬ひかりの方を無言で少し見た後に、赤と黄色のレバーを元に戻した。
電流が止まり、針も引っ込んだ。
だが、逆に針が引っ込んだせいで、桐谷将吾の体の全身から血が止むことなく大量に滴り続ける。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
桐谷将吾はまだ意識を保っていた。
その姿を見て、檜山暁人はようやく動き始める。
「うぉぉぁぁぁ!」
近場にあった鉄パイプを手に持ち、檜山暁人は広崎愛莉の方へ勢い良く走って行き、鉄パイプを広崎愛莉目掛けて全くの容赦をせずに振り下ろす。
だが、その振り下ろされた鉄パイプを広崎愛莉はいとも簡単に手で受け止めた。
そして、その掴んだ鉄パイプごと檜山暁人を投げ飛ばした。
檜山暁人は投げ飛ばされた後、すぐに立ち上がり再び広崎愛莉に向かって振り下ろしながら叫んだ。
「おまえ、愛莉をどこにやった!!愛莉を返せ!!」
檜山暁人はミラーハウスを出た辺りからずっと広崎愛莉に違和感を感じていた。
その違和感は桐谷将吾のあの光景を見た後に確信へと変わった。
「ふっ、あはは!広崎愛莉は鏡の中にいるよ!まぁ、もう一生出られないけどね!」
広崎愛莉に成り代わった『それ』は檜山暁人の攻撃を避けながら楽しそうに話す。
「なら、鏡を割って救い出すだけだ!」
「キヒヒッ!そんなことをしたら広崎愛莉は死んじゃうよぉ?」
檜山暁人と『それ』が闘っている姿を見ながら桐谷将吾は今にも意識が遠くへ飛んでしまいそうだった。
めちゃくちゃ痛ぇはずなのになんでかな、すっげぇ眠いんだよ。
このまま寝ちまえばこの痛みも感じなくなるのか?
だけど、そしたらもう渡瀬に会えなくなっちまう……。
そもそもなんで広崎はこんなことするんだ?
俺が知る広崎は、いつも暁人か渡瀬の隣にいて、大人しくて弱々しくて……。
確か暁人に広崎は怖いものや痛いものが嫌いって聞いたな。
それなのに超常現象研究部に入ったのは、暁人がいるからなんだろうなって、2人のことをよく知らない俺でもなんとなく感じた。
けど、きっと何か理由があってやってるんだろうって信じてぇなぁ……。
意識がほとんどない桐谷将吾は、檜山暁人と『それ』の会話を聞いていなかった為、なぜ広崎愛莉が自分にこんなことをしたのか知らずにいたのだ。
第3話目です!
今回は前回よりも長くなったのに加え、まだ続くので、2つに分けました!
まだ書いていないので分かりませんが、多分ドリームキャッスルは次で終わらせられると思います!
拷問をもう少しグロくしようと思いましたが、私の技量ではこれが限界でした(。>_<。)
もっと勉強しようと思います(`・ω・´)ゞ