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第2話 ミラーハウス



ーーねぇ、ミラーハウスのウワサって知ってる?

ミラーハウスから出てきたあと「別人みたいに人が変わった」って人が何人かいるらしいよ。

なんというか、まるで中身だけが違うみたいだって……。



◇◇◇



メリーゴーラウンドの突然の点灯により、ウワサは真実だと確定し、恐怖する超常現象研究部だったが、檜山暁人だけは期待と高揚感を抑え切れていなかった。



「い、いや、絶対に誰かが動かしたのだろう」


「誰かって誰だよ!」


「そんなもの分かるか!」


鈴村直紀と桐谷将吾が恐怖心を紛らわすかのように揉め合いを始める。


「落ち着いて2人とも。たまたま何かに反応して点いただけかもしれないよ」


そんな2人を檜山暁人はいつものように落ち着かせようとする。


何故だか分からない、が一番怖いためみんなで原因を探し始めた。

しかし、結果として原因となるものは誰一人として何も見つけることができなかった。


「ねぇ、もういいじゃん。なんで点いたのかは分かんないけどさ、次行こうよ。ミラーハウスの方が面白いって」


渡瀬ひかりは次の目的地であるミラーハウスに行くことをみんなに提案した。


「そうだね。こんなに探しても分からないんだから次に行こうか」


そう、分かる訳がないんだ。本当は誤作動だなんて俺は全く思っていない。これは怪奇現象というものなのだ。

あの場では誤作動のせいだと言わないと収拾がつかないからああ言ったが、これは人間の仕業ではないと俺は考えている。

次のミラーハウスではどうなるのだろうか。

誰も傷付いては欲しくないけど、少し楽しみでもある。



◇◇◇



暁人が超常現象研究部に入りたいと言うから私も一緒に入った。

怖いのが苦手だから本当は入りたくなかったけど、一人になりたくなかったから。

でも結果として、ひかりちゃんって言う友達ができたから入って良かったって思う。

でも、裏野ドリームランドには行かなければ良かった……。



「みんな懐中電灯の明かりはちゃんと点く?」


廃園となった遊園地なので当然明かりは点かない。もちろんミラーハウスも同様だ。それに伴い、檜山暁人はみんなに懐中電灯の明かりが点くか確認をした。


「うん。大丈夫」


「大丈夫だよ」


「おう、ちゃんと点くぜ」


「ああ、大丈夫だ」


広崎愛莉、渡瀬ひかり、桐谷将吾、鈴村直紀その全員ともが懐中電灯がちゃんと点くことを確認した。

そして、ミラーハウスの中へと入って行く。


暗い。怖い。それに少しでも横を向くと自分が鏡に反射して自分自身の姿が写し出される。それがさらに怖い。

メリーゴーラウンドではみんなも結構怖がってたのに、どうしてそんなに早く立ち直れるんだろ。


広崎愛莉は疑問を抱いていた。何故私はこんなにも怖いと思っているのに、みんなは怖がっていないのか。

さっきのメリーゴーラウンドから、このミラーハウスに行く間に広崎愛莉以外のみんなは立ち直ってしまったのだ。

だから聞こうと思った。今、腕を掴んでいる渡瀬ひかりに。


「ねぇ、ひかりちゃ……」


私は確かにひかりちゃんの腕を掴んでいたはず。

でも、今私が掴んでいるものは何?

これはひかりちゃんじゃない。確かに人の形はしているけど、違う。

私は怖くてひかりちゃんの腕を掴みながらずっと下を向いていた。でも離した覚えなんてない。

いつ?いつ入れ替わったの?


「な"あ……に"……?」


振り返った『それ』は顔なんてものはなく、まるでシルエットだけが動いている。そんな感じのものだった。


「ヒィッ……!」


『それ』はとても不気味な、嫌な感じがした。

広崎愛莉は咄嗟に『それ』から離れようと『それ』を突き飛ばそうとしたが、全く動かず、逆に自分自身が後ろへと弾き飛ばされた。

弾き飛ばされた先は当然鏡。

ぶつかる、と思ったその時。

鏡の表面が歪み、広崎愛莉は鏡の中へと入ってしまった。


「……え?」


広崎愛莉は一瞬何が起こったのか分からなかった。

まさか鏡の中に入ってしまうなんて思いもしなかったのだから。


「え、なに?どうなってるの?ここはどこ?」


目の前にはさっきまで自分が立っていた通路が見える。

だけど、そこへ行こうとしても目の前の『何か』が邪魔をする。

だけど、その『何か』はよく分からない。

まるで『ガラス』のように硬い。


「もしかしてこれ、鏡……?ここは、鏡の中なの?」


通路に立っている『それ』はこちらを見てきて、徐々に色を付け始めた。

そして、『それ』はまるで広崎愛莉の生き写しのように完璧な広崎愛莉になった。


え、私になった……?

でも、どうして。


そこで広崎愛莉は気付いた。

なぜ『それ』は広崎愛莉を鏡の中に閉じ込め、そして『それ』が広崎愛莉になりきるのか。

声が聞こえたのだ。

超常現象研究部のみんなの声が。


「待って!!やめて!私のフリをしないで!ここから出して!」


広崎愛莉がどんなに叫んでも『それ』はこっちには来なかった。


「愛莉、良かった。無事だったんだね」


「愛莉ごめんね、気付かずに先に行っちゃって。怖かったよね」


檜山暁人と渡瀬ひかりは『それ』を広崎愛莉だと思い込み、『それ』に話し掛けた。


「ひかりちゃん、私怖かったよ~!」


『それ』は泣きながら、いや、泣いたフリをしながら渡瀬ひかりに抱きついた。


「ひかりちゃん!『それ』は私じゃないよ!私はここだよ!」


広崎愛莉がどんなに叫んでも、超常現象研究部のみんなには届かなかった。それどころか、鏡の中の広崎愛莉の姿は誰にも見えていないようだ。


「お願い、気付いてよ……暁人……」


届かないと分かっていても、広崎愛莉は叫び続けることを止められなかった。

そして、超常現象研究部のみんなは歩き出す。本物の広崎愛莉ではなく、偽物の『広崎愛莉』を連れて。




私は暁人が好きだった。

生まれた時からずっと一緒にいたから、一緒にいるのが普通だった。

小さい頃は私にも同性の友達はいた。でも、確か中学の頃から同性の子達から無視されるようになった。

私の体が女性的になってきて、男子に色目を使っていると言われた。そんなことしてないのに。


対象的に暁人はクラスの人気者だった。何でも出来て、誰に対しても優しいから。怪奇現象が好きだとクラスの人達が知った時は、みんな暁人とは少し距離を置いた。

でも、私はそれが嬉しかった。だって、暁人のことを一番分かってあげられるのは私だけだと感じられたから。

だけどクラスの人達はまた暁人と仲良くし始めた。

また私だけの暁人ではなくなってしまった。


高校生になって、暁人が超常現象研究部に入りたいと言い始めた。私はあまりノリ気ではなかったけど、ここなら邪魔をされないと思ったから仕方なく入った。


結局2人きりではなかったけど、超常現象研究部の人はみんないい人達で、それに同性の友達もできた。

それに暁人のことを独り占めしようとする人もいなかった。


でも、まさか裏野ドリームランドに来てこんなことになるなんて思わなかった。

こんなことになるなら暁人に告白しておけばよかった。

だけどもう会えない。声を聞くこともできない。

だって私は鏡の中にいるのだから……。






「廃園のスペクター」第2話目です!

今回は前回よりも長めになってしまいました(^^;)

今後は偽物の愛莉が広崎愛莉として登場します。

少し分かり難いかもしれませんが、今後も読んで頂けると嬉しいです(^^)

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