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-敵対する星は怪しく輝く-

 

「渡辺 楓汰は暴力魔だ。路地裏で男子3人をボコボコにしているのを見た。」


 俺の教室の黒板に大きく書かれていたその文は、俺の平穏な生活を壊すには十分だった・・・。




 周囲の人間が俺を見る目は一瞬にして変わった。

 山本と中村とことり以外のほとんどが俺を悪だと決めつけていた。

 俺への嫌がらせが始まった。

 どれも地味なものだったが、幾度となく繰り返されるときつかった。

 そんな中、山本と中村は俺の事を微塵も疑う事なく接してくれた。

 影で黒板に書かれていた事は嘘だ、とみんなに言っていてくれたらしい。

 さすがマイフレンズ!いいやつらだなぁ。

 そんなこんなで黒板の文の件は解決していった・・・。


 解決したはずだった・・・。




「なにこれむずっ!おい楓汰、ちょっと教えてちょんまげ」


 いつの時代の人なんだお前は・・・。

 いつの間にか俺の事を名前で呼ぶようになった山本は数学の問題に苦戦しているよーだった。


「え、なにお前こんなのわかんないの・・・?これはね、ここをこーして・・・」


「あーなるほど!さすが!天才じゃね!」


「盛りすぎだよ。俺より上なんてざらにいる。」


 事実、1年2組にも俺より頭のいいやつは2人いた。

 どちらにも勝てる気がしない。


「まぁ、そーかもしんねーけど。楓汰ならいい高校いけそうだよな。」


「もちろん行くための努力はしているつもりだよ。」


「ひゅー!さすがだね。」


 そんな会話をしているときだった。


「あのー・・・渡辺 楓汰さんはいますか?」


 教室のドアが開かれ、控えめな声で俺を呼ぶ男の子が現れた。


「あいあーい。俺だけど、どーしたの?」


「あの、少しいいですか?」


「うん。大丈夫だよ。」


 男の子、1年4組の田中はそー言って、俺を体育館の裏に連れ出した。


「えっと・・・楓汰さんはことりさんとお付き合いをしているんですよね?」


 唐突に何を言い出すんだ。

 そー思って少し恥ずかしながら、


「あぁ、うん。そーだよ。」


 目をそらしながら答えた。


「実は僕もことりさんの事が好きで・・・」


 ふぁっ!?まさかのライバルっっっ!

 ど、どーしたものか・・・


「そ、そーなんだ・・・」


「ですから、僕に譲っていただけませんか?」


「は?」


 え、何言ってるんだこいつ・・・

 チョットワケワカンナイ。


「お前、自分が何言ってるかわかってるの?」


「えぇ、もちろん。僕の方がことりさんを愛せる自信があります。だから、ことりさんを僕に譲ってください。」


「なにそれ・・・おもしろい冗談だね・・・」


「いえ、冗談じゃないですよ。」


「そんなことできるわけないだろ。」


「もしも・・・もしもことりさんが楓汰さんのことが好きじゃなかったら、どーしますか?」


「え・・・?」


 田中は怪しい笑顔で言った。

 ことりが俺のことを好きと思っていない・・・?

 本当にそーだとしたら俺はどーしたらいいのだろう・・・


「そーゆーわけですから、考えておいてくださいね。」


 田中はそー言って俺に背を向けて校舎の方へ消えていった。




 一体どれだけその場所でぼーっとしていたのだろうか。

 空はオレンジ色に染まり、辺りには街灯が眩しく感じるほど光っていた。

 ことりは今、どこで何を考えているんだろう・・・

 俺は今まであまりことりの気持ちを考えた事がなかった。

 彼女にも俺といて嫌な事はあっただろう。

 ことりはどちらかというと根暗な方のグループに所属しているのだ。

 彼女にとっては、騒がしいことはなにもないほうが幸せなんだろう。

 なのに、俺が暴力魔なんて騒がれたから彼女の幸せを壊してしまったのかもしれない。

 そー思うと、心臓を何者かに握られてるような感覚がして、体中に寒気が走った。

 俺は本当に彼女といていいのだろうか・・・

 本当に彼女に見合う人間なのだろうか・・・

 そんなネガティブな考えが、俺の頭の中を埋め尽くしていった。


「こんなところにいたの?探したんだよ?」


 この声に俺は顔を上げた。

 その声の主はことりだった。


「あ、うん。ごめん。」


「何かあったの?」


「いや、なにもないよ。」


「そっかー。でも、何かないとこんなところにずっといないでしょ?何かあったか言ってみて?」


「4組の田中ってやつがことりの事好きなんだってさ。」


「ほぇ!?そ、そーなんだ!」


「それで、ことりを譲れって言われたよ。僕の方がことりを愛せる、とか言ってた。」


「え・・・?」


「なぁ、ことりは俺の事、どー思ってる?」


「い、いきなりどーしたの?!そりゃあ、もちろん大好きな彼氏さんだと思ってるよ!」


「そっか。ならいいんだ・・・」


「うん・・・」


 俺は少し安堵した。

 ことりは俺の事を想ってくれている。

 ことりは暗い顔をしていた。


「いきなり変な事聞いてごめんね。もー大丈夫だから。」


 俺はことりの頭を撫でながら言った。


「そっか!ならよかったよ!」


 ことりは嬉しそうに笑った。

 やっぱりことりには笑顔が似合う。

 この笑顔を守っていかなきゃ・・・。

 俺はそー思った。


 黒板の文を誰が書いたのかも知らずに・・・


新第3話です。


話を大幅に変えました。

旧第3話を読んでいただいた皆様、申し訳ありません。


これからもよろしくお願いします。

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