1 先生と生徒の話
「先生、私不眠症なんです」
「授業中に寝る言い訳がそれですか」
「先生、何故タコの足って八本なんですか?」
「一週間に一本づつ食べても余るようにですよ」
「先生、化学と物理ってどうちがうんですか?」
「私の人生に関わらないと言う点に於いては違いはありません」
「先生は子供は好きですか?」
「百メートルより近くに来なければ」
「先生、なんで夕日は赤いのですか」
「太陽の光が斜めに入ってきて、青い光は散乱して少なくなり、赤い光が届くからです」
「……」
「分からないなら無理して理解せずとも」
「わかりました、先生! あの青い猫型ロボットは夕方には見えなくなるのですね!」
「落ち着いて」
「先生、かぼちゃととうもろこしどちらが好きですか?」
「私の植木鉢に種を植えるのならばどちらもやめてください」
「先生、宿題忘れました」
「いいですよ、倍出しますから」
「お弁当も忘れました!」
「……私のお弁当を狙わないでください」
「先生、旅行に行くたびにおみやげを買うのは何故ですか」
「義理と付き合いと、後はあなたの事を忘れていないと言う気持ちを送るためですかね」
「私におみやげはないですか?」
「ありません」
「先生、数学で分からないところがあるのですが」
「数学の先生に聞いた方が」
「ここの文なのですが、『容器Aから容器Bに60㍑毎分で移動させた後、
また容器Aに毎分30㍑毎分で戻し』っていう所ですが」
「はい」
「何でこんな意味のない事しているんですか」
「視点が違います」
「先生、プレステがお陀仏してしまい、喪に服していました」
「昨日休んだ理由がそれですか」
「先生、美しい日本語って何ですか」
「人を傷つけない言葉は総じて美しいと思いますが」
「先生、貧血が起こりやすいのですが」
「その肉まんを置いて、ほうれん草やモロヘイヤを食べて鉄分を吸収しなさい」
「金欠も起こりやすいのですが」
「まずはその買い食いをやめなさい」
「先生、運命って信じますか?」
「その言葉を自分自身の都合に合わせて使わなければ」
「先生、猫派と犬派って何故別れるのですか?」
「子供をパパと呼ばせるかお父さんと呼ばせるかに似た葛藤があるからですよ」
「先生、優しさを主成分とした薬って出ないですかね」
「どこから抽出するのかが問題ですね」
「先生、何故人は桜を見たがるのですか」
「ドクダミの花では酒が進まないからですよ」
「先生、卒業は悲しいことですか?」
「そうですね、学生時代に積み上げてきた友情がどの程度か暴かれますからね」
「先生、寒くて布団から出れません」
「だからといって布団を教室に持ち込まれても」
「じゃあ教室にこたつを入れてください」
「その主張おかしいですから」
「先生、ホッカイロは何故暖かくなるのですか」
「酸素と結びつくのです。そして発熱する」
「なるほど」
「人でも物でも、一つだけではなしえないことは沢山あるのですよ」
「先生、何故バナナはおやつに入らないのですか」
「バナナは主食だからです」
「先生、給料安いんですか……?」
「先生、春休みは何をすればいいですか」
「まずは通知票を親に見せる努力をするべきですね」
「先生、自転車で強風に負けました」
「田圃に落ちたならさすがに帰っていいですから」
「先生、分からないことがあるのですが」
「なんですか」
「ガラスの仮面はいつ終わるのですか」
「……私が知りたいくらいです」
「先生、チャンネル変えてください」
「笑点の面白さが分かるまでは大人とは言えませんね」
「先生、雪は何故降るのですか」
「何もかも包み込むものがこの世に一つくらいあってもいいとは思いませんか」
「先生、じゃあまた、新学期に」
「はい、さようなら」