今日は休日! ①
18日目の朝。
俺は珍しく自力で起きた。
と言っても早起きできた訳じゃない。時間的には昼近いしな。
多分ゼロが、1週間のうち1日は、各自が好きに過ごせるお休みの日だって言ってたから、誰も起こさなかったんだろう。
ぶっちゃけゼロも、魔道書読みながらゴロゴロしてるしな。ベッドの横には、すでにお菓子と飲み物が置かれてるし、きっと「今日1日ゴロゴロするぞー!」という、ゼロの決意の現れだろう。
「おはよ」
「あ、おはよう。よく寝てたね。なんか食べる?」
「んー…もう昼メシだよな。とりあえずコーヒーだけでいいかな」
起き上がろうとすると、なぜかゼロが「僕がやるよ!」と俺を押しとどめる。
寝起きのボケた頭でも分かるぞ?
怪しいって!
「ゼロ…?何隠してるんだ?」
軽く睨むと案の定、ゼロの背中がビクッと動いた。しばらくの間のあと、しゅんとした表情で振り返る。
「怒らねーから言ってみろ」
何やったかは知らねぇが、すでに反省してるみたいだしな。
そもそもゼロがマスターなんだし。
…とは思うが、抑止力も重要だから、とりあえずこのスタンスだ。
「ゴメン…」と言いながらゼロが指差した先には見覚えのある、真っ赤な四角いフォルム。
あれ、昨日スライムとの合成の素材にした「加熱水蒸気オーブンレンジ」か!?
「あれ、また召喚したのか?」
ゼロは気まずそうに頷く。
「朝ご飯の時に、皆が見たいって話になって…後で還元すればいいか、って思ったから…」
ゼロの世界ではメジャーな機械らしい。機能を説明したら皆が気に入って、マスタールームとカフェに置く事になったんだそうだ。
…皆が欲しいなら別にいいけどな。ゼロの中ではよほど、俺に内緒で買っちゃいけない感が定着しているようだ。
「そうか、皆が欲しいんならしょうがないな。そんな凄いなら、俺にも見せてくれよ」
ハードルを下げ過ぎないよう気をつけつつ、怒ってない感を伝える。
…俺の立ち位置ってどうなんだよ…。
一方ゼロは安心したのか、喜々としてレンジの説明を始めた。
…………凄ぇ!
なんかもう、なんでそうなるかは一切分からないけど、ゼロがボタンをひとつふたつ押しただけで、生野菜が数秒でホットサラダになり、肉にはこんがりと焼き色がつき、アイスコーヒーがホットになって出てきた。
なんと言うか…ゼロが貧弱でヘタレっぽく見えるのがなんでか、分かった気がする。
自販機といい、これだけ便利なもんがあったら、必死で体を動かす必要がない。多分ちょっと鈍くても生きていけるもんなぁ。
ゼロにそう言ったら憮然とされた。
「魔法の方がよっぽど便利だよ。機械がなくてもどこでも使えるし、レベルが上がれば、出力調整も簡単だし」
…そんなもんか。
「バカ言ってないで、早く魔法覚えよ?」
そう言ってさっさとベッドに転がるゼロ。そうだな、俺も一刻も早く覚えたい。ホットコーヒーを片手に、一心に魔道書を読む。
…………。
…………。
「……スターセイバー、難し過ぎる…。頭に入んねぇ…」
元々、座学は苦手なんだよなぁ…。
ゼロはこういうの、得意そうだ。代わりに覚えて欲しいくらいだよ。
「マジで…?」
「頑張るけど…今んとこ、書いてある内容が意味不明に見える」
「………」
隠しもせずに、あちゃー…、という顔をするゼロ。俺だって情けないと思うけどさ…。
「う~ん…じゃあ、二択かなぁ。僕も今読んでたけど、大体中級魔法って初級に下位の魔法があるヤツが多いみたいだし…」
へぇ、そんなもんか。
ってか、そんな分析しながら読んでたのか。見た目ダラダラごろごろしてたのに!
「下位の方が簡単だから、それから覚えると上位のも理解しやすいよ?」
理屈は分かるけど、それでもあんまり自信がない。 察したのか、ゼロも渋い顔だ。
「…ちなみに、もう一つは?」
「…僕が覚えて、ハクに教える。一回ハクから下級の聖魔術、どれか教えて貰ったら、多分いけると思う」
「お願いします!」
俺は折り目正しく最敬礼した。
「調子いいなぁ」
ゼロに苦笑されても、ここはお願いするしかない。
魔術は言語みたいなもんだ。別の属性の魔術は別の言語…まずはその特性を掴む必要がある。 ゼロやあの魔族の魔術師みたいに何属性もいけるのは珍しいんだ。
だから、本だけで覚えるよりは、先生がいた方が覚えやすい。
…買う時は、本だけでもいけると思ったんだけどなぁ…。
早速、最下級の聖魔術、ライトを教えていたら、ルリとマーリンが大量の袋を下げて帰ってきた。
今日は皆、たっぷりとお小遣いを貰っている。数人はゼロに許可を貰ってダンジョン外に買い物にも行ってるみたいだな。




