表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/320

今日からオープン!⑥

「うっひょ~!これがダンジョンか!」


ズカズカと先頭きって歩く、4人の中ではガタイがいい黒髪。


「ふ~ん、よく出来てるじゃないか」


観察するように辺りを見回すメガネの男。


「ちょっとちょっと~?ここクリア出来たら俺達、冒険者になっちゃえるんじゃないの~?」


お調子者感丸出しのそばかす。


「僕、ヤダよ!帰ろうよ~」


気弱そうなひょろひょろの金髪。



どうやら野郎4人は、度胸試し的ノリでチャレンジしているようだ。そんな彼らの前に、いつものモンスター達が登場する。そう、スライム3体と、ピクシー2体だ。


4人の実力やいかに?



「よっしゃ、いっちょやるか!」


迷いなく、黒髪がスライムに襲いかかる。それを見て、メガネが無言で弓を引いた。


呆気なくピクシーが1体犠牲になる。


「さっすがぁ!アーチェリー部エースは違うねぇ。ほら、オレらも行こ?」


お調子者が誘うも、ひょろは「嫌だって~!」とその場を動かない。


「しょーがねーなぁ、ほんじゃ、オレらの勇姿をそこでしっかり見てな!」


お調子者はひょろをおいて、戦列に参加した。決着はあっと言う間につく。


学生…のようだが、この前の街娘達と一緒にチャレンジした冒険者より、よっぽどスジが良い。カエンが大喜びでスカウトしそうだ。何にもしてないのに「もうやだ、怖いよ~」と泣いているひょろ以外は、充分に素質がある。


ひょろを慰めながら、奥へ進んでいく4人組。これからが楽しみだな。




それを見届けてキング・ロードのモニターに戻ると、彼らは宝箱ゾーンに到達していた。盗賊の腕の見せどころだ。


うーん…勝率は見たとこ7割だな。


罠の解除に失敗して、毒をくらったり、マヒをくらったりもしている。その度に魔術師が呆れ顔で治癒するわけだ。


それでも、開ければそれなりの装備品や回復薬が入っている。黙々と罠の解除を進める盗賊。そこに、男戦士がズカズカと近づいていく。


「…?」


怪訝な顔で見上げた盗賊に、いきなり男戦士が切りかかる。


「うわっ!?」


回避能力が高いおかげか、すんでのところで攻撃を躱す盗賊。


「危ないな!何する……」


言いかけて、黙ってしまった。

明らかに様子がおかしい。


体はユラユラと揺れている。

目はどこを見ているのか、焦点が定まっていない。


それなのに、男戦士は執拗に盗賊へと剣を振り下ろしていた。


この感じ、見覚えあるな…。


「くそっ!本当~にテメェは…!あのリリスに魅了されやがったな!?」


反撃も出来ず、ただ攻撃を躱す事に専念する盗賊。



「ああん、もうバレちゃったぁ」


残念そうな呟きとともに現れたのはもちろんリリス。


なんと、何時の間にか魔術師を腕に捉えている。そのまま口付けの体勢に入る。回復されると厄介だからか、魔術師から吸精するつもりのようだ。



唇が触れる一瞬前に、リリスはいきなり飛びすさり、魔術師から距離をとった。


なぜか、顔が青ざめている。

ギリギリと歯ぎしりし、燃えるような目で魔術師を見つめた。


「あんた…、魔族ね!?」


「はは、気付いたか。反対に精気吸ってやろうと思ったのに」


魔術師はヘラヘラと笑っている。


…魔族か!

それならあの魔法の豊富さも、嫌味なくらいイケメンなのも、納得出来る。きっとリリスより、かなり上位の魔族なんだろう。リリスは僅かだが震えている。


「…なんだって人間と仲良く冒険者なんかやってんのよ」


「えー、だってアイカちゃんが可愛かったから」


魔術師は女戦士を見て、ヘラヘラと答える。女戦士は「バッカじゃないの!?」と、真っ赤だ。


「魔族がいるって噂聞いて、俺の事たった一人で討伐に来たんだよ。無鉄砲過ぎるし、第一俺、別に悪い事してないし、危なっかしくって可愛いから~。」


女戦士は「謝ったじゃない!」とますます真っ赤だ。


「ま、そーいう訳で。悪いけど容赦しないからな?」


不敵に笑う魔術師。

でも、リリスはなぜか逃げない。


「じゃあ、アタシも遠慮なく。…ホーリーちゃん!やっちゃって!!」


リリスの言葉で現れたのは、こちらも昨日進化したばっかりの、ホーリースライムだった。



プルプルっと震え、薄い黄色だった体色が、瞬時に濃くなり、ついには光りだした。それと共に、突如魔術師の体が金色の光に包まれる。



「……っ!?何…?あっ!痛てっ!あ…うわぁ…っ!」


最初は不思議そうに光を見ていた魔術師、徐々に苦しみだしている。


「うあ……何をした……っ!」


ガクリと膝をつく魔術師。

対照的にリリスは勝ち誇ったように高笑いしている。


「うふふっ…効いてるみたい♪こっちは頼んだわぁ。」


さっさと男戦士のところに戻るリリス。

男戦士は、今は女戦士と剣を交えている。体勢を崩して倒れた盗賊をかばって、女戦士が刃を受けた格好だ。


「その女は任せたわぁ。」


男戦士にそう声をかけると、リリスは尻餅をついている盗賊に近付き、容赦なく精気を吸う。


こりゃダメだ。

魔術師も今は回復出来る状態じゃない。


俺の報告を受けて、ゼロがキーツに指示を出す。ここにきて、ついにキング・ロードから初のリタイアが出た。


「キング・ロードに挑戦してくれた、シーフ:ワーツ・ハイマーさん!HPが限界です!無念のリタイア~!リリス、強い!」


キーツのアナウンスに、カフェからは冒険者達へ励ましの声援が飛んでいる。


「くっそ…力が…でねぇ…。」


魔術師は悔しそうに呻いているが、ホーリーが効いているのか、立ち上がる事さえ出来ずにいる。



一方、マスタールームでは、ホーリースライムのまさかの健闘に、盛大な頑張れコールが贈られていた。


「ホーリー、すごい!」


「あの魔族魔術師を足止めって、かなりポイント高いぞ!?」


「色も可愛い!」


「ホーリーちゃん、頑張れ!」


皆好き勝手に応援している。

ちなみに名前は、ホントにホーリーらしい。


俺達から見たら可愛い仲間だが、当然冒険者達から見たら、憎たらしい敵なんだろうな…。可愛いのに。


その証拠に、魔術師はすごい目でホーリーを睨んでいる。


「こいつさえ…なんとか…出来れば…!」


スライムのくせに、小さな体で聖魔法を放つホーリーは、魔族である魔術師にとって天敵と言ってもいい。魔術師の前でポヨンポヨン飛び跳ねている姿は、なんにも考えてなさそうに見える。


「こんなヤツに…!」


魔術師の目がギラリと光る。


その瞬間。


殺気を感じたのか、ホーリーがびっくりしたように飛び上がった。


空中で、クルクルっと回って、ホーリーの体が目映く光る。


光は瞬時に凝縮し、一筋の閃光となって、魔術師の肩を貫いた。


「!!!」


苦痛に顔を歪める魔術師。

あれは、単体攻撃の聖魔法、ライトだ。


恐慌状態に陥っているのか、クルクルと回りながら、ライトを打ちまくるホーリー。もはや無差別乱射だ。


だが、無理もない。


魔族から見たら、聖魔法を使う天敵かも知れないが、そうは言ってもホーリーは、たかだかレア度2のスライム属だし。


魔族から本気の殺気を向けられたりしたら、恐慌状態になるのは当然だと思う。


本当~に!可哀想だ…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【作者の先日完結作品】こっちもオススメ♪

ここをポチッと押してね(^-^)

『魔法学校の無敵の首席騎士様は、ちょっとコミュ障、大型わんこ系でした』

先日完結しました。首席騎士様が強いのにカワイイとの感想を多数いただいております(笑)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ