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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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今日からオープン!③

俺は今日も上級のキング・ロードのモニター担当だ。


初心者用のプリンセス・ロードは、今回ユキが担当している。すでに人型に変化して、準備万端。初めての仕事にワクワクするのか、自然にシッポが揺れている。


中級のプリンス・ロードは固定でルリだ。なぜか一番リタイアが続出するから、回復担当として状況を掴んでおきたいのかも知れない。


そしてゼロは、全体の統括が役割だ。皆の情報を受けてキーツにアナウンスの指示を出したり、交代で各々のモニターについたりもしてくれる。大変だが、まぁマスターだからな。



俺が担当するキング・ロードにも、ついに冒険者達が入ってきた!


今度はどんなヤツらかな?


ワクワクとステータスを確認する。

確か前情報では、全員がレベル25オーバーの中堅冒険者達だ。


えーっと、人数は…4人だな。


戦士:女:レベル27

戦士:男:レベル25

盗賊:男:レベル25

魔術師:男:レベル28


あれ?こいつら、どこかで見たような…。とは言え、ダンジョンの外にはたった2回しか出ていない。


うーん…どこで見たんだか…。


「あっ、そうか」


やっと思い当たった。

プレオープンの日、キング・ロードの冒険者達を、細かく分析しながらみていた観客。異常に真剣に見てたから、何となく印象に残ってたんだな。


早速モンスターにエンカウントしているが、レベル25オーバーだけあって、戦い慣れているせいか落ち着いたものだ。


「あら、コカトリスだわ」


「前回は出なかったよな」


女戦士と魔術師は、まるで緊張感がない。ほぼ世間話のノリだ。


「何悠長な事言ってんだ!状態異常、マジでヤバいんだからな!?」


「まあ…当たらなきゃ良いんだし…」


この中で、危機感を感じているのは、男戦士だけらしい。盗賊もいたって呑気に構えている。だがコカトリスも、一緒に出現しているリザードソルジャーやウォーキングツリーだって、レベルは充分に上げてある。勝てないまでも、いい戦いが出来る筈だ。


頑張れ!

舐め切ったヤツらを見返すんだ!



「グオォォオォォォォ!」


雄叫びと共に、リザードソルジャーが襲いかかる。振り上げたアックスが、轟音と共に振り下ろされた。


「うっわ!危ねえー!」


「やっぱりリザードソルジャーでも、結構高レベルのタイプみたいね。スピードが違うわ」


女戦士は気を引き締めるどころか、唇を舐めて嬉しそうに剣を抜いた。刀身が反った、変わった形の片手剣だ。


一方、男戦士はすんでのところでアックスをかわし、やや青ざめている。リザードソルジャーから素早く距離を取ると、大振りな両手剣を構える。型通りの、綺麗な構えだな。


追い打ちをかけるように、リザードソルジャーが男戦士にアックスを振り下ろす。しかし、その攻撃を華麗に剣で流したのは、かばうように出てきた女戦士だった。


「リザードちゃん、私にちょーだい?」


可愛らしくおねだり。

でも、言ってる事は相当物騒だ。


「んじゃー、ウォーキングツリー、俺がもーらい!」


魔術師が高火力の火炎魔法を放つ。

メラメラと燃え上がりながらも、大きな体をよじってなんとか火を消しとめたウォーキングツリー。


可哀想に、瀕死の重症だ。


「へへっ!いっちょあがり!」


魔術師がとどめとばかり、詠唱に入る。


その目の前で、なぜかキラキラと光り出す、ウォーキングツリー。見る間に焼けていた木肌が再生されていく。


魔術師は、あまりの事に、詠唱の途中で口を開けて放心している。


「グリード!敵に回復魔法かけてんじゃないわよ!」


リザードソルジャーのアックスを受け止めながら、女戦士が叫ぶ。


「俺じゃねーって!」


キョロキョロと辺りを見回す魔術師。


ウォーキングツリーがまたもやキラキラと輝く。明らかに、ダメージは全て回復したようだ。


「くそっ!何なんだ!」


その時、魔術師の目の端に、淡いピンクの固まりが跳ねているのが目に入った。


「…え?まさか、あのスライム…?」


俺も思わず目を凝らす。

ああ…。そうかも知れない。


あの淡いピンク、昨日進化したばっかりの、ヒールスライムだ。


ヒールスライムは、ウォーキングツリーが全快したのを見届けると、嬉しそうに(多分)2回飛び跳ねて、さっさとダンジョン奥に消えていった。


仲間の危機を、黙って救って去っていく。カッコいいな。ヒールスライム。



魔術師は、怒りを抑え切れないように絶叫した。


「~~~っ!なんだよ!なんだよ今のはっ!超腹たつ!」


男戦士は、何が嬉しいのか、笑いを堪えた顔で魔術師に近づき、肩を叩きながら話しかけた。


「まぁまぁ、たまにはこんな事もあ……」


そこで動きが止まる。


髪が、服が、差し出した腕が、ニヤけた顔が…。


一瞬のうちに石と化した。


コカトリスの石化攻撃が炸裂したようだ。


ポカンとした表情で、石になった男戦士を見る魔術師。その静寂の瞬間をついて、大音量が響き渡った。


「なんと!出ました、石化攻撃ぃ!!」


焦燥感を煽る効果音は、間違いなくイナバだろう。


…ああ、ちゃんと実況してくれてたんだな。戦いの行方に集中し過ぎて、気付かなかった…。キーツとイナバには、とても言えない。


気がつけば、さすがにカフェからも、「おーっ!石化だ!」「初めて見た!」と、驚きの声が上がっている。



一方、石になってしまった男戦士を、マジマジと見ていた魔術師。


「本当~にアホだな…」


正に呆れ顏。


「戦闘終わるまで反省してろ」


と言い置くと、石のままの男戦士を放置して、戦闘に戻ってしまった。



「グリード!こいつに火炎魔法お願い!剣じゃ時間がかかってしょうがないわ…!」


見ると、すでにリザードソルジャーを倒したらしい女戦士が、ウォーキングツリー相手に苦戦している。


コカトリスの相手は男盗賊だ。

石化攻撃をちょこまかと躱しながら、ナイフで地道にダメージを与えているらしい。


改めて高火力の火炎魔法を放つ魔術師。

ウォーキングツリーは、また激しく燃え出した。


「よし!とどめっ!」


女戦士が華麗に跳躍する。

全体重をかけた一撃が、ウォーキングツリーに突き刺さった。


「見事な一撃です!あえなくウォーキングツリー、撃破ぁ!」


キーツの派手なアナウンスと共に、ウォーキングツリーが地響きをたてて倒れていく。女戦士は、地面に降りたその足で、一気に間合いを詰めると、コカトリスを一刀両断。


あっと言う間に決着を付けてしまった。


「コカトリスも一刀~両~断!女戦士:アイカ、圧勝です!」


キーツの叫びと共に、キング・ロードの戦いは終了した。


俺的には、石になった男戦士をリタイアさせるかどうかを決めなければならない。

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