明日に向けて、戦力増強!
俺達はマスタールームに移って晩メシを食いながら、ダンジョンの人員配置を再確認する。
子供達が来た事で、カフェは人手が余ったから、シルキーちゃん達のうち、2人をダンジョン内の店の売り子に回す。
それでもやっぱり売り子が足りない。
「シルキー召喚するか…でも、売り子さんはバラエティに飛んでた方がいいかな…」
ゼロはそう呟きながら、ダンジョンコアに手を伸ばす。
「あ、新着情報入ってる」
そうか、今日は朝からバタバタしてて、新着情報も見ていなかった。
…ていうか、ブラウのステータスも、昨日召喚出来るようになったモンスターのラインナップすら見てねぇ!
すぐさまダンジョンコアから流れる新着情報をチェックだ。
『ゼロのレベルが上がりました』
『ゼロが、新たなスキルを入手しました』
『ゼロが、新たな称号を入手しました』
『条件を満たしたため、新たなモンスターが召喚可能となりました』
『分裂によりスライムが3匹、ポイズンスライムが6匹増えました』
………
『条件を満たしたため、ダンジョンのレベルが上がりました』
ええっ!?
ダンジョンにレベルとかあるのか!?
慌ててダンジョンレベルを確認するゼロ。
名前:ノーネーム
LV:2
属性:なし
知名度:7
階層数:4
◆能力値
撃破数:0
撃退数:46
総モンスター数:217
……あれ?レベル上がっただけ?
なんか特殊効果とかは?
「な~んだ、特に変わらないんだね。残念…」
ゼロも同じように感じたようだ。
「ハク、早くコアに属性付けてね。そしたら多分、ダンジョンにも属性ついて、少し面白くなるかも知れないし」
ぐっ…俺かよ!
毎晩コア抱いて寝てるし!
期待外れに終わったダンジョンレベルは置いといて(実際は召喚出来るモンスター数とか、基礎スペックは上がったらしい)、お次はブラウのステータスチェックだ。
名前:ブラウ
LV:8
種族:ブラウニー
性別:♂
レア度:2
◆能力値
HP:420/420
MP:210/210
STR(筋力):180
VIT(耐久):165
INT(知力):165
MIN(精神):180
DEX(器用):195
AGI(敏捷):280
LUK(幸運):205
スキル:
・いたずらLv.1
・てきとう錬金
・モンスター改造Lv.1
称号:
・いたずらっ子
・闇錬金術士
・生命の探求者
▽スキル詳細。
《いたずらLv.1》。対象消費MP0。対象者が困惑する状況を瞬時に見抜いて実行し、軽度のダメージを与える。
《てきとう錬金》。成功確率に縛られず、自由に錬金実験出来る。
《モンスター改造Lv.1》。レア度2までのモンスター改造時、成功率30%。
▽称号詳細。
《いたずらっ子》。アグレッシブにいたずらを仕掛ける者に贈られる称号。
《闇錬金術士》。探求心に呑まれ、道を踏み外した錬金術士に贈られる負の称号。通常錬金の成功率が半減するが、闇錬金の成功率が2倍になる。
《生命の探求者》。何らかの手段で生命ある者に進化、種の壁の超越を与えた者に贈られる称号。種の変異確率が上昇する。
おいおい…。
ふてくされたガキのいたずらの結果だぞ?怖い称号つき過ぎだろう…。
一番ビビっているのは、ブラウ本人だ。
「闇錬金術士って何!?なんか怖い!」
一方マーリンは床に座りこんで、いじいじとのの字を書いている。
「私よりも凄い錬金称号が…。闇だとしても酷い…」
確かに称号は凄いっぽいよ。
残念ながら知識が一切ないから、偶然凄いのを生み出すかも、って期待しか出来ないけどな。
「よう!カルアが折れたんだってなぁ!お前ら、やるじゃねぇか!」
うっわ、ビックリした…。
空気を読まないカエン様、登場だ。
遅いと思ったら、王宮に寄ってきたのか、もうカルアさんの事も承知済みのようだ。
「あれ?なんだ、どうしたんだマーリンは。景気の悪い面して」
事情を聞いたカエンは、言うまでもなく大爆笑だ。笑い過ぎて、マーリンに足を思いっきり踏まれている。
…マーリン…忘れてるかも知れないけど、それ、火龍だから…。
マーリンは怒って錬金部屋に籠ってしまった。ブラウは可哀想に締め出しをくっている。
まあ、時間的にも礼儀作法のお時間だし、ブラウはルリに任せて、俺達は昨日、今日と増えた筈の召喚モンスターのリストを見てみるか。
カエンが隣から、身を乗り出して覗き込んでくる。
「ちょ…ウザい」
「ひでーなぁ。俺様は召喚するとこ初めて見るんだぜぇ?ちっとくれぇガマンしな」
…そうだったっけ?
仕方なく、男3人、むさ苦しく並んでモニターをガン見。
う…わ…、ゼロのレベルも上がったからか、召喚できるモンスターが尋常じゃなく増えてる!
これはゼロのダメフィルターでふるいをかけても、結構残るかも知れない。そろそろ、選択して召喚すべきだな。
「うわぁ、召喚出来るモンスター増えたね!これ全部説明読むの、さすがにキツいよ~」
「だよな。なんかさ、こっちから条件付けて検索、とか出来ねぇかな」
やってみる、とゼロがダンジョンコアに新たな指示を出す。
「まだ召喚してないモンスターで、一般的に人間が嫌悪感を抱かないモンスターを一覧にして」
何、そのヘタレ的条件!
カエンも無言だ。
ていうか、そんな曖昧な条件でいけるもんなのか?嫌悪感とか、個人差大きいんじゃないか?
「あ、出た」
出るんだ…。コア、凄ぇな。
・獣人(小型)
・コボルトナイト
・ワイルドドッグ
・コカトリス
・マイコニド
・トレント
・シードラゴン
・シーギャング
・リザードソルジャー
・リリス
・見習い天使
・ケンタウロス
・マーマン
これがコア基準:嫌悪感少なめ判定のモンスター達か…。俺には基準が甘いのか厳しいのかも分からないな…。
「ねぇねぇ!お店の売り子さん、あと3人くらい要るかな、って思うんだ。どの子がいいと思う?」
ああ、店の要員だったか。
そりゃまあ…
「獣人の可愛いのとか、リリス、見習い天使あたりじゃないか?」
「だな。次点でケンタウロスとマーマンまでだろ」
俺とカエンの意見を聞くと、ゼロは「だよね」と言いつつ、またコアに向かう。
「獣人って、今ならどんなタイプの人が召喚出来るの?」
『ネズミ、ウサギ、リスの3種です。小型タイプは総じて身長100cm程、獣が二足歩行して、言葉を話すイメージです。中型以上が人に近いタイプとなります』
コアの無機質な声が応える。
「じゃあね、リリス一人、見習い天使の男性一人、リスの獣人一人、交配強化で!」
ちょ、そこは天使も可愛い女の子だろう!
「もう…超初心者用ダンジョンは女の子もたくさん来て貰うんだからね?シルキー、リリス、リスさん、男天使でバランスはいいんだよ?」
驚きのあまり、また声に出てたらしい。
ゼロに真顔で諭された。
かなり恥ずかしい…。
目の前にバラエティ豊かな3人が現れる。
カエンは「スゲえな!」と感嘆の声。
召喚された3人は、一様にキョロキョロしている。一番先に状況を理解したのはリリスだ。
「召喚…?…あなた、マスター?」
「う…うん。あの…皆、よろしくね?」
いつもの光景だな。
ゼロは初対面の相手にはだいたいこんな感じだ。相手が女だとオプションで顔が赤くなる。
「あはっ♪真っ赤になっちゃって、マスターかぁわいいっ♪」
リリスがゼロにダイブ!
抱きつかれ、耳もとで「戦闘でも、夜のお相手でも、何でもするわ…」と囁かれ…
くそぅ、なんて羨ましい!
そうだよなぁ。
ゼロは立場的には男子の夢、美女ハーレムの形成だって簡単だ。
でも教えない。
「うお~!爆乳美女からのお誘いだぜぇ?ゼロ!今夜お願いしちまえ!」
カエン…いらん事を…!
「ばっ…ばかな事言ってないで…っ、助けてよぉ~っ!死んじゃうっ」
……うん、死ねるかも。
尋常じゃなく顔が赤いもんな。
あっ、ついに押し倒された。
「ハ…ハクっ!助けて…っ!」
名前を呼ばれて我に帰る。
いかん、ちょっとボンヤリ見てしまった。慌てて止めに入る。
「あー…そこまでにしてやってくれ」
スゲえ。
すでに手は服の中をまさぐっている。ズボンもベルトは外され、チャックも全開。
いつの間に…!
恐るべし、リリスのテクニック。
「おっ…遅いよ!」
ゼロに涙目で怒られた。
確かにあと1秒遅かったら、イロイロな意味でヤバい事になりそうだった。反省だ。
「あ~惜しい!面白いとこだったのに」
無責任にブツブツ言っているカエンは放っておいて、俺は召喚された3人に、仕事の内容を説明する。(ゼロは着衣の乱れを正すのに忙しいからだ)
見習い天使:男は、仕事の内容を聞いて明らかにホッとしている。やっぱり天使なだけに、あまり戦いたくはないのだろう。
リスの獣人は「ボクに出来るかな…」と心配そうだ。でも、聞けば計算も普通に出来るみたいだから、シルキーちゃんに鍛えて貰えば問題ない。
リリスは「ええ~っ、店番なんてイヤよぉ。マスターの傍に居れないなら、せめてたくさんの男の人と戦いたいわ」とごねている。
「困ったな。ハク、どう思う?」
「戦わせてやれば?」
代わりに見習い天使:女を召喚すれば万事解決!
「マスタールームにおいてやりゃいいじゃねぇか。ゼロの教育に丁度いい」
「ムリ…」
カエンの提案に、ゼロは再び真っ赤になっている。確かにちょっと免疫がなさ過ぎか。もうちょいソフトに女に慣れさせねぇとな…。
シルキーちゃん達に協力を仰ぐか?
「よし!じゃあリリスはレベル高ダンジョンの断崖絶壁部のラッキーキャラだね。明日は男の人がくるから、楽しみにしてて。ユキ、連れて行ってあげて」
俺がゼロの心配をしているうちに、話は纏まったようだ。
しかしリリス、ラッキーキャラ?
意味がよく分からんが、まあいいか。
その後ゼロは見習い天使:女を召喚してくれた。
清楚で控え目、はにかんだ笑顔が可愛い、清純派女子だ!心のテンションはかなり上がった。
ダンジョンの人員配置はこれで終了だ。カエンはなんだかため息をついている。
「どうした?」
「いやぁ…こんな簡単に、でかい建造物が出来たり、モンスター召喚出来るっつーのは、ホント手に負えねぇな、と思ってな」
「そうだなぁ。ゼロはあんまやんねぇけど、モンスターとかは結構性格やスキルとか、カスタマイズも出来たりするしな」
カエンは「道理でなぁ…」と呟いている。今まで潰してきたダンジョンで、思いあたる事でもあったんだろう。
そう言えば、カエンは今でも他のダンジョンを潰しているんだろうか…。気になる。けど、こればかりは怖くて聞けない。
ゼロも真剣な顔をしている。
まさか…。
「ねぇカエン、明日って、冒険者の人達、何人くらいくるの?女の人っている?」
…ゼロは、全く違う事を考えてたみたいだな。
「あ?ああ…どれも男女混成チームで、レベル3~4のヤツらが5人。レベル6~7のヤツらが4人。レベル20~25のヤツらが5人だ。ハク、負けんなよ?」
「分かってるよ」
「う~ん…やっぱり女の人、居るよね」
ああ、あれか、女風呂問題か。
「ルリ達にどんなのがいいか、聞いたか?」
「聞いたけど…スパがいいって」
すぱ?って、何?
「なんかね、薔薇の花びらが浮いた香りのいいお風呂に入って、お肌がキレイになるオイルを塗って貰ったり、マッサージして貰ったり、するんだって」
「もはやダンジョンじゃねぇ…」
今だって、相当ダンジョンから離れて来てるんだ。何考えてんだ、あのアマ…。
「はははっ!いつの世も、女の欲望は果てしねぇなぁ!」
カエンが爆笑している。
「歴代の女王達も、似たよーな事言ってたぜぇ?泥パックがいいだの、海藻が一番だの、ミルク風呂がいいだの」
ひえぇ、そんなもん、肌に塗るのか?
「真珠をすり潰したクリームがいいとか言ったヤツもいたなぁ。ま、この国は貧乏だから実現できなかったみたいだがなぁ」
…手に負えない。
やり始めたら、きっと次から次に要求がデカくなると、激しく理解した!
「ゼロ…」
「うん、分かってる、スパはムリ。出来て薔薇風呂」
そのラインを死守して欲しい。
ゼロはご褒美ルームの森の中に、大木のウロを入口にした、豪華薔薇風呂を造った。
優雅な雰囲気、フローラルな香り。せめてもの気遣いで、ボディソープなどは、王室御用達品で揃えてある。
男3人でない知恵を絞った結果だ。
俺達は良くやったと思う。
ついでに練兵場にも女性用のシャワールームを造り、準備が一段落ついたところで、俺はカエンに軽く稽古を付けて貰う。
俺も明日はデビュー戦だ。
万が一でも、負けるわけにはいかないからな!
相変わらずギッタギタにのされてばかりだが、少しはカエンの動きも見えるようになってきた。進歩は感じてるんだ。
途中、女性陣の甲高い狂喜の雄叫びが聞こえたから、多分薔薇風呂は、すげぇ好評だったんだろう。
ちょっと安心する。
限界まで体を痛めつけたら、回復温泉でひとっ風呂浴びて、ダンジョンコアを抱き枕に、泥のように眠る。
明日はいよいよプレオープン。
楽しみだ。




