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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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312/320

仕掛ける場所は様々に

「ルリの話聞いててさ、碁盤の目みたいなのの方が混乱しやすいのかなって思って、そんな感じにしてみた」



ゼロが楽しそうに言うけど、そもそも『ゴバンノメ』ってのが分からない。この、縦と横に爪でひっかいたみたいな形のことをいうんだろうか。



「ほら、縦と横が綺麗に整列してるみたいに見えるでしょ。でも、あっちこっち途切れてて普通には端から端まで行けないようにしてあるんだ」


「ホントだ。不規則に途中で切れてるし、端までの長さもまちまちだ。闇雲に歩いてたら迷うだろうな、これは」


「うん、ただの行き止まりもあったり、宝箱に続く道もあったり、どっかに隠し扉つくってもいいし」


「いいじゃない、これならマッピング必須よね!」



ルリも太鼓判を押してくれて、ゼロも嬉しそうだ。グレイがモニターをのぞき込んで、ニヤリと笑った。



「これはいいですなぁ。ディテールにこだわりたいところですが」


「ディテール?」


「曲がり角のところのライトのどこも等間隔にするとか、岩のヒビの割れ目をそっくりにするとか、要するに混乱を促進する仕掛けですな」


「えげつねえ」


「まぁ、あえて変えてそういう細かいところに注意する癖をつけさせるのもいいかも知れねぇがな」



カエンが軽く言った言葉に、俺も同意した。冒険者をただ迷わせたいのならグレイのやり方も正しいんだろうけど、あくまでここは訓練のためのダンジョンだ。仕掛けをするにもそれなりの期待できる効果がないと意味が無い。



「よし、じゃあ曲がり角とかにはちょっとずつ違いをだしてマッピングの腕があがるようにしておくね」



ゼロが手元のメモに小さくそれを書き込み、今度はモニターに向かって話しかける。



「二人とも、ダンジョンを探索する気持ちで少し探検してみてくれる?」


「分かった-!」



二人は入って来た道を右にも左にもそれることなく、どんどん前へと突き進む。あれだけある脇道に見向きもせずに直進できるのはある意味凄い。


行き止まりまで進んだら二人で顔を見合わせて、今度は左に向かってまっすぐ駆けていく。まだモンスターが配置されてないという安心感でダッシュで進んでいけるけど、冒険者達はこんなにサクサクは進めないだろう。



「あれ?」


「あっ、すぐに突き当たっちゃった」


「右に行く?」


「おう!」



なんの躊躇もなく適当に進んでいく二人はその後も右だ、左だと特に悩む風でもなく言い合っている。やがて突き当たりにはまりこんだとき、ゼロがまたマイクに手をかけた。



「ユキ、その突き当たりの左の壁に、適当に手をついてみてくれる?」


「分かったー!」



ぽし、とユキの白い手が壁に触れたら、そこがぽわっと優しく光る。



「隠し扉出現ボタンを設置します。承認しますか?」


「承認!」



おーびっくりした! いきなり隠し扉出現ボタンって……このまま作っていくつもりかよ。


驚いている間に壁にポコンと小さくて目立たないボタンが設置される。小さな仔犬程度のサイズのユキが、その前足でぽし、と押した場所に設置された小さな小さな地味なボタン。


普通だったら見逃して当然だろう。



「じゃあユキ、もう一回今度はそのボタンを押してみて」


「うん!」



ユキの白い前足がボタンを押すと、ただの石壁だったそこに木製の上品な扉が現れた。



「おー! これはわくわくするな!」



こんな扉が目の前で現れたら、ボタンを見つけた冒険者は興奮が止まらないだろう。



「開けるぞー」



ブラウが言うが早いかその扉に手をかける。開けたそこには、小さな部屋の真ん中に宝箱だけがどんと置いてあるシンプルなものだった。



「いかにも、って感じの部屋ね」



ルリが苦笑するのも分かる。ぶっちゃけ俺もそう思った。



「うん、まだ地下一階だし、これくらいベタな方がいいかなと思って」



部屋の内装とか広さとかトラップとか、カスタマイズは色々できるらしいが、まぁ確かにまだ地下一階だしな。



「そこの宝箱を開けて、中身を持って外に出て」


「リョーカイ!」



ゼロの指示に従ってブラウとユキが扉から出てくると、一瞬で扉は消失し、ついでに隠し扉出現ボタンも消えてしまった。何度もは入れないようなつくりになっているんだろう。



「すっげぇ、ドアが消えた!」


「ボタンももう無いよ!」



モニターで見ている俺ですらけっこう驚いたんだから、ダンジョンの中で扉やボタンが消える様を目の当たりにしたら、驚くこと請け合いだ。



「そのまま探検を続けていいよ」



ゼロの言葉に促され、宝箱から出てきたレイピアを握りしめたままブラウとユキは進んでいく。いったんはダンジョンの最奥までまっすぐ進んだ筈の二人は、いつの間にか入り口に近い地点まで戻ってきてしまっていた。



「ここはただの行き止まりだね」


「またもどるのかぁ、メンドイな」


「どこまで来たか分からなくなっちゃうよね」



そう言いつつも、曲がり角が来る度にユキはふんふんと鼻を鳴らして匂いを嗅ぎ「まだこっちには行ってないみたいだよ」とブラウを道案内している。そうか、こういう特殊能力があると便利なんだな。



その時、カチ、と耳障りな音が小さく鳴った。

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