トレーニングルームお試し中!
可哀想に、子供達はぷるぷる震えながら、兵士達に蚊のなくような声で説明している。
まぁ、ナギは堂々としたモンだが、マークに至っては声すら出ない。
兵士達もさっきからの流れを見ているせいか、笑顔が必死だ。猫なで声で、子供達の緊張をほぐそうと四苦八苦している。
まぁ、俺でも子供好きな上司の前で、こんなちびっこを泣かせたくはないな。
心中お察しするよ…。
兵士達の努力の甲斐あって、次第にトレーニング機器が動き始めた。20人もの男達が、一斉に体を鍛え始める。
うわぁ、むさ苦しい!!
これぞ、地獄絵図…。
見てて一斉楽しくない!
カルアさんも一緒に汗を流して欲しい。ホントに…。
兵士達が実際にトレーニングを始めると、カルアさんも興味が出てきたのか、機器を巡りながら、使っている兵士達に声をかけていっている。
「これは?」
「主にっ…背筋をっ…鍛える、機器のっ…ようです!…負荷も…変えられます!」
律儀に、運動を続けながら答える兵士。筋肉ムキムキになりそうな動きだ。
「へぇ、これは面白いわね」
「はい!不規則に跳ね返ってくるので、動体視力も体の使い方も、総合的に鍛えられそうです」
純粋に楽しそうだな。
あっ!
カルアさん、ついに自らやり始めた!
うん、眼福、眼福。
カルアさん、頑張れ!
面白かったのか、兵士の皆さんは取っ替え引っ換え、いろんな機器を試している。
明日は確実に筋肉痛だろうな…。
兵士達があまりに楽しそうなので、発案者の王様も、トレーニング機器を詰め込んだゼロも、会心の笑顔だ。
「皆さ~ん!今日はトレーニングはそれ位にして、汗を流して下さ~い!」
ゼロの声に、兵士達は我に却ったように、トレーニング機から離れ、俺達の前に集合する。
皆、あり得ないくらい汗だくだ。
って言うか、汗くさっ!
早くシャワーを浴びてくれ!
「こっちがプールで、こっちがシャワールーム、こっちがサウナ。タオルや着替えもあるので、お好きなところにどうぞ!」
おおっ!と野太い賞賛の声。
兵士達はバラバラと好きな所に入っていく。
汗臭さから開放されて、ホッと一息。
…ん?
カルアさんが、汗だくで困ったようにモジモジしている。
そうか。ここにきて再発、女風呂問題。
うん、まさかカルアさんまで、汗だくになるほど夢中になってくれると思ってなかったもんな。
困った…。
このシチュエーション、エリカ姫を思い出すなぁ。
「あっ!カルアさん、僕、気が利かなくて…。こちらへどうぞ」
ゼロ、どうするつもりだ…?
あっ、そうか。シルキーちゃん達の風呂に連れて行くつもりか。
いいなぁ。
なんて天国な空間。
よく考えたら、ここで野郎の風呂上りを待つのもなんだしな。
俺達はカフェに移動した。
風呂から上がって、身も心もさっぱりしたカルアさんと兵士ご一行は、上機嫌で帰っていった。
子供達も、兵士達が優しくしてくれたおかげか、まあまあ懐いてるし、今日はなかなかの戦果だったと思う。
明日のプレオープンには、王様、王子様、騎士団が総出で来てくれる事になった。
なんだか大掛かりな事になっただけに、物見高い一般の方々も多く来るかもしれない。




