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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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騎士団長、登場

おおっ!これはこれは。なかなかだ。


琥珀色の瞳にまっすぐな長い黒髪。ひとつに纏めているのが凛々しさを引き立たせている。艶やかでハリのある褐色の肌。線の細いうちのダンジョンメンバーとはひと味違う、健康的なダイナマイトボディだ。


つい見惚れていたら、ルリに後ろから叩かれた。


ゼロがいつも通り、真っ赤になってモジモジしているのを見て、今日は王子様が助け船を出してくれる。


「カルア、こちらがこの施設の主で、ゼロ。こう見えて、やり手なんだよ」


「子供ではないですか!」


直球だな。


「あのっ…ゼロです。アライン様から練兵場の設計図を…い、いただいたんですけど」


息継ぎ。

なんかいつもより頑張ってるな。


「僕、どうしても、皆さんにご提案したい施設があって…あの…無理を言って来ていただいて、…ありがとう、ございました!」


美人騎士団長カルアさんは、ゼロから視線を外すと、キッ、とユリウスを見た。


「こんな子供に、あんな凶悪な部屋造らせてないでしょうね!?」


「心配しなくても、私の案はスルーされた。それにゼロは、君が鬼のようにしごいている新兵と、年令はさほどかわらないと思うが」


「新兵は言っても兵だもの。強くないと意味ないわ。じゃあ、ゼロくん。早速案内してくれる?」


うーん…ルリと似た匂いを感じるな。ゼロも複雑な表情をしつつ、練兵場の扉を開けた。中はもちろん、闘技場仕様の練兵場だ。カルアさんのオーダーからは外れている。


「…………」


沈黙が怖い。カルアさんは、ジト目で王子様を見ている。


「アライン様?これ、却下しましたよね?」


黒いオーラが立ち昇る。

王子様は「そうだけど…これには深い理由が…」と歯切れが悪い。


「あの、カルアさん。これには理由があって…あの、次のトレーニングルーム見てから、詳しくお話ししても、いいですか…?」


ゼロの言う事には割と素直に従うカルアさん。20人の兵士達も言われるままについてくる。確かに、ゼロと変わらないくらいの年頃のヤツも結構いるんじゃねぇか?


トレーニングルームに入るなり、いきなりカルアさんが絶叫した。


「な、何をしているの!!」


全員がビクッとした。


だが、一番ビックリしたのはトレーニングルームで遊んでいた子供達だ。真っ青になって、ごめんなさい、ごめんなさい、と謝っている。


ゼロは慌てて駆け寄って、子供達をよしよしと宥め、ナギは敵意に燃えた目でカルアさんを睨みつけた。


「…なんだよ。ああ、王様や王子様のために造ったものに、薄汚ねぇガキが触ったからか?」


ナギから出たとは思えない低い声だった。相当怒っているのだろう。


「違う!違うわよ!だって…危ない機械に見えたから…!」


あ、なるほど。俺みたいに、拷問部屋にでも見えたのか?


「ご…ごめんなさいね?脅かして」


カルアさんは、子供達に謝ろうと近寄るが、すっかり怯えてしまっている。ストリートで大人達からも怒られ、邪険にされてきたのかもしれない。


ローラ、トマス、マークの3人にしがみつかれ、ゼロはすっかり保父さん状態だ。子供に怯えられ、敵意の目で見られ、カルアさんはすっかり意気消沈してしまった。


ビックリして一言叫んだだけなのに、さすがに可哀想だ。


「まぁまぁ、このキレイなお姉さんは、お前達が危ないと思って叫んだんだ。そんな顔しちゃ可哀想だぞ?俺も最初、この部屋、拷問部屋に見えたし」


今度はゼロが「酷い!」と怒ってるけど…ここは堪えてくれ。


「拷問部屋…?」


振り返ってトレーニングルームを改めて見回したナギは、「ああ…」と呟き、カルアさんに、「本当か?」と確認している。


どうやら分かってくれたようだ。


今回はこれから交渉したい相手に精神的ダメージを与えた上、貸しも作れたから、結果オーライだが、ナギの被害妄想気味の敵対心は、今後治していかないといけないな。放っとくと、いつかデカい問題を起こしそうな気がする。


カルアさんは、子供達に嫌われたのがショックだったのか、ベンチプレスというゴツい器具に腰かけうなだれている。


「カルア、あの子達、孤児なんだ」


王子様の言葉に、カルアさんは息を飲んだ。


「本当は国営の孤児院に入れるべきだけど、どこも溢れかえってる状況だから…ゼロ達のところに引き取って貰ってるんだよ」


当たり前だが、王様も気まずそうだ。

ナギは、フン!と鼻を鳴らし、腕組みしたままソッポを向いてしまった。


「あの…王子様は、闘技場で稼いだお金を、孤児院とかの公共事業に使うって…。僕達、凄くいいなって思ったんです」


沈黙が流れる。


王子様、ゼロ、絶妙なコンビネーションだな!この流れで反対出来る強者はなかなか居まい!


「…最初からそう言ってくれれば、私だって…」


カルアさんが、消え入りそうな声で呟く。


「じゃあ、闘技場許してくれるんだね?」


「わぁ!良かった!絶対成功させましょうね!」


ひとしきり喜んだ後、ゼロは笑顔全開で「カルアさん、ありがとう!」とダメ押し。


勝負あったな。



「うむ。カルアも承知してくれるなら、近々武闘大会を開催するとしよう。アライン、計画を進めるようにな」


コホン、と咳払いし、王様が重々しく告げる。民間人に負けるような醜態をさらさないよう、兵士達はきっと、カルアさんから地獄の特訓を受けるんだろう。


なんとなく申し訳ない。



話がついたところで、本題のトレーニングルームの説明にうつる。兵士の方を20人も用意して貰ったんだ。効果を体感して貰いたい。


ゼロは子供達を呼ぶと、なんと「このお兄さん達に、使い方を教えてあげて?」と促した。


なんちゅうハードル高い指示を出すんだ!

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