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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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主従の共闘

「クリームヒルト様!!!」



蒼白な顔で、そばかす従者が走り出す。


スラっち目がけて一目散、矢継ぎ早に繰り出される土筍や雷を掻い潜り、これまでとは比較にならない俊敏さで間合いを詰めた。


剣を閃かせ、斬る。


斬る。


斬る。


スラっちの膨張したゼリー部が閃く刃に何度も穿たれ削られていくけれど、それでも第八王子の元へは遠く及ばない。スラっちも大きなダメージは受けていないようだ。



「くそっ! 届かねえ!」



肩で息をしながら、そばかす従者が悔し気に叫ぶ。


スラっちの中にとりこまれた第八王子は身じろぎもしない。気絶しているのかと思ってステータスを見てはみたが、不思議と気絶しているわけでもなく、ダメージを受けているわけでもなかった。


でも。あれ、息ができてるように見えないんだが。



「クリームヒルト様!! 絶対に……助けます!」



ゼリーに包まれた第八王子に届けとばかりに力強く叫んだそばかす従者が、再度地を蹴りスラっちに襲い掛かる。


そばかす従者の声が届いたのか、第八王子の手が緩慢に動いた。


スラっちのゼリー部を掻き分け、ゆっくりと身体を捻った第八王子がそばかす従者を視界に入れる。


パクパクと口を動かして何かを伝えようとしているようだが、そばかす従者は少しでもスラっちを削って第八王子に近づこうとしているのか、必死に剣を振るっていて、第八王子の様子には気づいていないようだ。


一瞬の間のあと、第八王子はおもむろにそばかす従者の方に手をかざす。


その掌から、えげつない光が放たれた。


空砲、なのか?


スラっちのゼリー部に、大きな穴がぶち抜かれる。



「……………!!!」



突然の事態に口をぽかんと開けたそばかす従者だったが、この機を逃すはずもない。さすがの切り替えの早さで瞬時に穴に手を伸ばした。


再生力も物凄いのか、大穴が開いたはずのスラっちのゼリー部はみるみると修復されていく。


再生されていく穴の中をかき分けて、第八王子が進んでいるがなんせスラっちの体が巨大すぎる。思うようには進んでいないようだ。


なんとか穴が閉じ切る間にまでに合えばいいが。



「クリームヒルト様!」


「来てはならぬ!」



らちが明かないと思ったのか、穴の中に飛び込んで来ようとしたそばかす従者を、第八王子は厳しい口調で止めた。



「お主まで囚われては、打つ手もあるまい!」



すんでのところで足を止めたそばかす従者は、そのまま真横に飛び跳ねる。その僅かな間に、第八王子がスラっちの体に開けた風穴は、再生するゼリーでぴったりと埋まってしまった。


第八王子の体は再び巨大なスラっちのゼリーの中に閉じ込められてはいるが、さっきまでに比べたらかなり端の方まで移動出来たんじゃないだろうか。


もう一発、あの空砲ぶっ放せばいいのに。


俺もそう思ったけれど、第八王子も同じように考えたようで、またも緩慢な動作で手を上げていく。



「おっ」



俺の真横で、カエンが感心したような声をあげた瞬間。


地を蹴って高く飛び上がったそばかす従者が、大剣を思いっきり振り下ろした。


ズバッと、小気味のいい音が響く。



「おおおーーー! これは凄い! ぶった切りましたぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



いきなり耳をつんざくような声量で、キーツのアナウンスが響き渡った。


モニターには、スラっちから切り離されたゼリー部がゆっくりと落ちていくさまが映し出される。スラっちの今の体のデカさからすれば欠片なわけだが、第八王子を軽く閉じ込められるほどの巨大なゼリーの塊。


地に落ちる前に、そばかす従者が受け止め、第八王子からゼリーを剥ぎ取った。



「すまぬな、手間をかけた」


「すみません、まさかいきなりクリームヒルト様を狙うとは……私の落ち度です」


「そのように情けない顔をするでない、調子が狂うであろうに」



鷹揚に笑う第八王子は、ゼリーまみれではあるものの不思議と貫禄が感じられる。



「やるじゃねえか、なかなかいい護衛抱えてるよ。」



カエンが面白そうに隣で笑う。



「ちょっと会ってみてもいいかもなあ。何か思うとこあってこのダンジョンに挑んでんのかも知れねえしな」



どうやらますます興味が湧いて来たらしい。


国がかかわる事になると俺達じゃ分からないことも多いから、ここはもうカエンに任せてしまおう。早めに呼んでおいて良かった。



「おーーーっと!? これは何でしょうか?」



ちょっとカエンに気を取られた隙に、モニターの先ではちょっと変わった光景が繰り広げられていた。


ぼよん!


ぼよん!


ぼよん!


ぼよん!


鈍い、なんとなく間の抜けた音がボス部屋を満たしている。


なんだあれ。


なんかの儀式化か?



スラっちがあのでっかい体で、重い音をたてて飛び跳ねてるんだが。


さすがにこのサイズじゃ「可愛い」とは言い難い。


しかも、跳ねる度に大量の水が第八王子達に降り注ぐ。雨のように……というか、土砂降りのように。


どんどん排水しているせいか、スラっちの体は跳ねる度に小さくなっていく。


これで第八王子達も少しは戦いやすくなるのか? ……そう思った俺はバカだった。

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