召喚チケット、使います!
「それじゃあ、いよいよレアモンスター召喚チケットも使っちゃいましょうか!」
『生命の宿木』ゲットですっかりテンションがあがったらしいラビちゃんが、わくわくした様子でコアの前に立った。
ライオウも若干緊張した面持ちで見守っている。ああ、あの気持ち分かるなぁ、俺もそうだった。
『レアモンスター召喚チケットの使用を承認しますか?』
コアの問いかけに、全員の期待を一身に背負ったラビちゃんの高い声が答える。
「承認!」
そして目の前に、ラビちゃんの新たな仲間が召喚された。
「…………」
あれ? これ。なんか見た事ある……。
率直な感想はそれだった。
「フクロウさん……ですか?」
「だな」
「寝てるね」
「昼だしな、夜行性なんだろう」
こっくりこっくりと船をこぐ、いかにも平和なその姿はまさしくフクロウ。丸めがねと四角い帽子が若干のインテリジェンスを感じさせる。古ぼけたとまり木つきで召喚されたのはなんかサービスなんだろうか。
あ、船漕ぎすぎて、おっとっとっと……って、とまり木から落ちそうになってるし。
「可愛い……ですけど、人型ではないですね……」
ラビちゃんの幾分残念そうな様子が遺憾だったのか、ついにフクロウが目指めた。
「そうですのぅ、ワシは獣族ゆえ人型にもなれませんのぅ、申し訳ないですじゃマスター」
途端にラビちゃんがアワアワと両手を振り「違うんです!」と言い訳する。
「わぁ、でもこのフクロウのお爺さん、かなりすごいよ?」
ゼロの興奮ぎみな声に思わずコアを覗きこめば、確かになかなかなレア度。
「確かに。レア度5っていったらハイエルフのルリよりもレア度が高いって事だもんな」
「えっ!ルリさんよりもレア? うわぁ、凄いんですねぇ、フクロウさん」
ラビちゃんが感心したような声を出すと、フクロウ爺さんがちょっとだけ仰け反った。あれか、それは胸を張ったつもりなのか。
個人的にツボに入ってしまって、一人笑いを噛み殺す。まぁ、誰だってマスターに褒められりゃ嬉しいもんだよな。
「うわぁ、能力も凄いですぅ!」
「へぇ、知恵を象徴する森の賢者。古より培ったその智識で、知を求めるものに数多の解をもたらす……か、なかなか頼もしいじゃないか」
ライオウにも褒められて、フクロウ爺さんはいよいよ反りかえった。
「本当ですね、ちょうどいいです!」
「……ちょうどいい?」
「はい! ライオウさんが武力で、フクロウさんが知力を担ってくれるなら、すっごく安心です。ちょうどいいです!」
なるほど、確かに。
「ふむ、マスター殿はさすがに分かっておられるのぅ、嬉しい限りですのぅ。この老いぼれでも知恵だけは溜め込んでおりますで、うまく役立ててもらえりゃあ本望ですのぅ」
「はい!まだまだ私、マスターになったばっかりで、分からない事がたくさんあるんです。いっぱい知恵を貸して下さいね」
「お任せくだされ」
にこにこと笑いかけるラビちゃんに、フクロウ爺さんはおっとりと目を細める。ふわっと羽毛が膨らんでまん丸になったフクロウ爺さんは、満足そうに首肯くと……そのまま眠ってしまった。
「お?」
「寝ちゃった……みたいだね」
……なんて自由なんだ!
「まあ、扱いに満足したって事じゃないか?」
「ですかねぇ」
若干唖然としながらも、ラビちゃんもライオウもフクロウ爺さんを起こすつもりはないようで、二人して顔を見あわせて苦笑しただけだ。
止まり木の上でまんまるに膨れてコックリコックリと船を漕ぐ姿は平和そのもの。
これは、フクロウ爺さんにはなんか困った時に知恵を借りる体で、通常のダンジョン運営はこの二人がやっぱり主力でやるしかないんだろうなぁ。
二人もどうやらその結論に達したらしい。
「じゃ、次のレアモンスター召喚チケット、いってみっか」
「はい!」
もう一度顔を見あわせて、早速次のチケットにうつった。
『レアモンスター召喚チケットの使用を承認しますか?』
「承認!」
さて、お次はどんなモンスターだ?
皆の期待を一身に背負って表れたのは、爽やかな笑顔が眩しい天使だった。
「よっ! ……って、俺のマスター、どの人?」
といっても、短髪の赤毛に浅黒い肌と引き締まった体躯で、俺の持っていた天使のイメージとはちょっと違う。俺達のダンジョンにも天使系は何人かいるけど、皆線の細い金髪美形だもんな。
キョロキョロと周りを見回す爽やか系天使は、おずおずと「あの、私がマスターで……あの、よろしくお願いします」と名乗りでたラビちゃんに、満面の笑みで「よろしく!」と握手した。
ライオウは人間でいうと25~6歳のイメージだけど、こいつは17~8歳くらいのイメージだな。あ、ちなみにフクロウ爺さんは90歳オーバーのイメージだ。
「まだまだ俺は修業中の身ですが、精一杯頑張りますんで、先輩方、よろしくお願いします!」
俺やゼロにまで、これまたハキハキと挨拶してくれた。




