御一行様、ボス部屋へご案内
巫女殿、幻術士、侍二人、修行僧の5人に色とりどりのスライム達4体が加わって、総勢9人になったこの賑やかしいパーティーは強かった。
しかも、第3ステージを進む毎に強くなっていく。
スライム達の司令塔でもある幻術士が、段々と個々のスライム達の特性を把握してきて、無駄なく戦わせるようになってきたからだ。
第3ステージに入ってから、攻撃も回復もスライム達を主力で使っているから、巫女殿達は体力も魔力も温存している。
ヤバい。マジで意外とヤバい。
この巫女殿のパーティーは、スラっちを魔王だと思っているくらいだから、きっと手加減なんかしてくれないだろう。本気で息の根を止めに来るに違いない。
スラっちはこの前レジェンドの爺さんに一閃されて、命を落としかけた。あの時の不安な気持ちが蘇る。
大丈夫か……スラっち……。
こちらの不安を余所に、これといった危機もなくあれよあれよという間に第3ステージを突破し、スラっちが待つラスボス部屋に辿りつく巫女殿達。
扉を開けるとスラっちがちょこんと鎮座していた。
「む……これが魔王か」
「貧相な姿に騙されてはならんぞ!」
クール侍が呟くと、すかさずジャガイモ侍が檄を飛ばす。
…貧相とは失礼な…。
コテンパンにのしてやって欲しいが、スラレンジャー達まで連れたこの挑戦者達は多分、なかなかに手強いと思う。
「ふむ、まずは様子見といこうか。そこなスライム達、あやつを退治てくれ。……ああ、桃はここに控えていて良いぞ」
幻術士のやんわりとした号令で、スラっちに向かって飛び出していく赤・青・黄の3色スライム達。ピンクちゃんはやっぱり仲間のピンチが来るまでは大人しく応援なんだな。
3色スライム達の矢継ぎ早な攻撃に、スラっちは身軽に避けるだけでなかなか反撃しない。
仲間を攻撃したくないのか、単に何か思惑があっての事なのか、声も表情も分からず仕草もプルプル意味不明なだけに、全く読めない。
ただグズグズしてたら、あの幻術士が次の手を打ってきそうで気が気じゃない。 早いところ気絶なりなんなりさせた方がいいんじゃないかと思うんだが。
…すると。
相変わらず三色スライムの攻撃を避けているだけのスラっちが、微妙に色付き始めた。
爽やかな若草色が変化して、鮮やかな赤に。
…前にも見た事があるこの赤さは、やっぱりお怒りなんだろうか。
レッドと見まごうばかりに赤くなったスラっちは、突然高く高く飛び上がり、ギュルギュルと激しく音を発しながら回り始めた。
一体何をする気なんだ?
高速回転のまま、凄い速度で急降下。
小さな竜巻が、スラレンジャー達を避けながら的確に挑戦者達だけに体当たりしていく。挑戦者達だけを倒そうって腹なんだろうか。
小さな呻き声を上げながら、次々にぶっ飛ばされる侍達。修行僧までは気持ちよく直撃したものの、さすがに幻術士は一筋縄ではいかない。
スラっちが幻術士に体当たりしようとした瞬間、バリアにでも当たったかのように、激しく弾き飛ばされてしまった。
「イエロー!?」
ゼロが驚愕の声をあげる。
なんと、黄色いボディが体を張って幻術士をガードしていた。
何やってんだ!?
お前はピンクちゃんのガードだろう!
「おお、守ってくれたのか。愛い奴よ」
こら!幻術士に褒められてプルプル喜んでる場合じゃない!
いやいや、イライラしてもしょうがないだろう、俺。しかし、スラっちの体当たりでも正気に戻らないって…厄介過ぎるかもしれないな。
弾き飛ばされた先でゆっくりと体を起こした(多分)スラっちは、軽くポヨン、ポヨン、と跳ねている。
体の色も元の若草色に戻ってるし、回復魔法さえ使わないところを見るに、どうやら大きなダメージではなかったみたいだ。
それから考えこむようにしばらく体を右に左によじっていたスラっちは、急に吹っ切れたように高く跳躍した。
それと同時に色とりどり、大きさも形も様々なスライム達が四方八方から押し寄せ、降ってくる。
「なんと!スライム達が次から次に降ってきます!!スライム一斉攻撃!早くもスライム一斉攻撃が出ましたぁぁぁ!!」
キーツの絶叫アナウンスも響く。
かなり耳が痛い。
「キメ技と言っても過言ではないこの技!早くもここで使ってきました!勝負に出たのか、それとも…!」




