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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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得体の知れない幻術師

「見ておられぬ」


強固な防御魔法で守られている巫女どのは、一人だけ無傷だ。いたたまれない気持ちになるのも分かるが…巫女どのの攻撃手段、ちょっと見てみたい気もする。


でもなぁ、侍達がモニターごしで見ててもはっきり分かるくらい怒ってるしなぁ…無理だろうな。


「巫女どのの力は魔王を倒すためのもの、軽々しく見せてはなりませぬ!」


「我らの力が信じられぬのですか!嘆かわしい!嘆かわしゅうございますぞ!!!」


口々に騒ぎ立てる侍達を見て、巫女どのは「そう言われるとは思っておった…。」としゅんとしている。術師達がさりげなく巫女どのを労っているのが微笑ましい。


「…だが、モニターとやらで観客に丸見えだと聞いたぞ?妾の力など隠したところでどうせ見られてしまうではないか」


あ、ちょっと食い下がってみてる。巫女どのも意外とめげないな。


「だからこそ、魔王との戦いまで温存するべきです」


「対策を講じられては戦いが長引くゆえ」


侍達に諌められ「むぅ…」と唸りつつも、巫女どのは我慢すると決めたようだ。


「では任せた。 」


一言言いおくと、簡素だが上品な白い扇子を開き、防御壁の中で優雅に居住まいを正した。


話している間にも、一旦頭上を通り越した能天使の光翼スライムが大きく旋回し、侍達にぐんぐん近づいてくる。


「また来おった!」


途端に侍達が青ざめる。片意地を張ってはいても、実際、空飛ぶ相手になすすべもない…というのが、正直なところなんだろう。


「仕方ない、私が出よう。貴殿らには荷が重かろう」


ゆったりとした所作で、細身の男が歩み出る。こいつは…幻術師…なんだろうか?


それなりに失礼な言い方をしている気もするが、侍達がホッとしたように道をあけているところを見ると実力者なんだろう。


レベルは侍達の方が高かった筈だが、力関係って分からないもんだな。


間近に迫った能天使の光翼スライムに目線を送った後、幻術師はフワリとした袖を優雅に揺らしながら、大きく円を描くように腕を振った。


腕が通った空間を中心に、透明な膜が張られていく。一瞬で男4人を軽く包む程のドーム型の膜が張り巡らされた。


これは…俗に言うバリアだろうか。


時を同じくして、能天使の光翼スライムから光の弾丸が続け様に発射される。


光の弾丸はドーム型のバリアに当たり、消失………しなかった。


跳ね返り、能天使の光翼スライムを追いかけて飛んで行く。撃った全ての弾丸が、能天使の光翼スライムの小さな体に命中した。


続け様に与えられる衝撃に、能天使の光翼スライムはかなり遠くまで吹っ飛ばされてしまった。


これは…ただのバリアじゃなくて…反射壁か!!


「かたじけない。」


「どうという事もないさ。」


侍達の賞賛の眼差しをクールにかわし、幻術師はまた何事もなかったかのように歩き始めた。


敵の息の根を止める事にも興味がないらしく、吹っ飛ばした能天使の光翼スライムの後を追うこともない。


どこまでも冷静だ。


しかしそれにしても「幻術師」という割にはさっきの反射壁はどうみても実体があるように見えたし、表示レベルよりも実力は高そうだ。……謎な男だな……。


得体の知れない幻術師、少々薄気味悪い…。


何となく浮かぶ嫌な気持ちを払拭するために、今回の癒し、チビ獣人達のモニターを覗き見る。


よしよし、まだ頑張ってるな。


崖っぷちが続く攻略し辛い地形ではあるが、獣人達にはあまり問題でもないらしい。軽い身のこなしでヒョイヒョイと岩場を飛び跳ねて越えていく。


崖の上の細い道にも一切恐怖は感じていないようだ。むしろ後ろから前の子に飛びかかってみたり、ちょっとした遊び場のような雰囲気だ。仔犬がじゃれあってるみたいで可愛いが…ほのぼのし過ぎだ。


呑気にしているが、ちょっとはモンスターも倒せたんだろうか。こっちが心配になってくる。


「お前ら、ダンジョンなんだぞ!緊張感はどこに行った!?」


ほら、狼兄さんがお怒りだぞ?


「大丈夫だもーん!」


「勝てるもーん!」


うわ、いくつか戦闘をこなしたのか、完全に調子にのってるな。ゴールするまでに少し痛い目にもあっておかないと、逆に心配かも知れない。


どうやら狼兄さんも同じ気持ちらしく、苦虫を噛み締めたような顔だ。腕組みでため息をつきつつ、前を跳ねるように進んでいくチビ獣人達を見ていた。


「子守も大変ね。私とも遊んでくれない?」


狼兄さんの頭を頭上から抑え、リリスが無理矢理目を合わせた。

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