ギルドトップの実力①
俺にはないフレンドリーさに思わず感心して見ていたら、一通り聞き終えたのか、チャラたれ目騎士が満面の笑顔で戻ってきた。
「分かった分かった!分かったよ~!」
……どんなノリだ。
やっぱり騎士団上位者とは思えないな…。
複雑な俺の心境にも気付かず、チャラたれ目騎士は得意満面で仕入れた情報を披露する。
「あれねぇ、有名ギルドのトップ同士らしいよ。そりゃ盛り上がるよね!」
それは確かに盛り上がるカードだな!
あ、もしかして…。
「有名ギルドって…クラウンとか?」
カエンのギルドはクラウンって名前だった筈だ。毎日このダンジョンの営業が始まる時にキーツがアナウンスするから、さすがの俺も覚えている。
「いやいや、クラウンのトップもまだ残ってるけど、この闘技場にいるのはムーンとティースのトップみたいだね。どちらも5本の指に入るギルドだよ」
へぇ…。
どれくらいの強さか興味あるな。
武闘場を見てみれば、かなり対照的な二人がゴツい武器を構えて睨み合っていた。
重そうな大斧を担いでいるのは、デカ爺さんに負けず劣らずの大男だ。身長2mは越しているだろう長身に、モリモリについた筋肉。鎧なんかなくてもちょっとした攻撃なら跳ね返してしまいそうに見える。
対する相手は自分の身の丈程もある巨大な両手剣を携えた小柄な若い男だ。剣を一振りしたら、剣の勢いに振り回されてしまいそうな頼りなさを感じる。
あまり筋肉がついている風にも見えないのに、どうやってあのデカい剣を振り回してるんだか。
「お得意の魔法が使えねぇのに、こんなとこ出てきちまって大丈夫かぁ?今日は強化系も回復系も、一切魔法は使えねぇぞぉ?」
からかうように斧男が言えば、チビ太くんは元気いっぱい弾けるような笑顔で答えを返す。
「だいじょーぶ!、魔法なくってもボク結構いけるっス!!対戦相手なのに心配してくれるなんて、超いい人っス~!!」
チビ太くんは魔法剣士なんだな。
「ボク感激っス!!感謝の気持ちを込めて、手加減してあげるっスよ!」
満面の笑みで凄い事言うなぁ。
素なんだろうか、それとも実は腹黒な奴で相手を挑発してるんだろうか。
…気になるところだ。
「バカにしてんのかぁ!」
「ええ!?なんで!?」
見事に挑発されてるなぁ斧男…。
こっちは単細胞っぽい。
実際チビ太くんの言葉はあながち大袈裟でもないようで巨大な剣を軽々と振り回す姿は圧巻だ。
「くぬおぅ!ちょこまかとぉ!」
斧男がブゥン!ブゥン!と風切音を唸らせながら、大斧を振り回す。しかしこれが当たらない。
「逃げるんじゃねぇ!」
「無理っス~!これ当たったら死ぬパターンっス!」
確かに死ぬパターンだな。斧の振り抜き方に容赦がない上、急所ばかりを狙っている。
「武闘大会は殺生無用がルールっスからね!?死んだらシャレにならないっスから、華麗に避けさせて貰うっス~!!」
チビ太くんは巨大な両手剣を背中の鞘に納め、本気で逃げる事に集中し始めた。あの斧を剣で受けたら剣がダメになるかも知れないもんな、俺でもそうするだろう。
「いい人なんスから、ルールは守るっスよ!!」
「うっせぇ!!」
完全に頭に血が上った様子の斧男は、力任せに大斧を振り回す。斧が風を切る音だけが、闘技場に虚しく響いた。
そこに、一喝するような怒号が飛ぶ。
「ブルーノ!!」
ビクぅ!!と斧男の肩が上がり、動きがピタリと止まった。
そろそろと後ろを振り返る顔は青ざめ、心なしか震えている。
振り返った視線の先にいたのは、…いたのは…誰だろう。群衆がひしめき合っていて判別出来ない。
振り返った先にいたのは誰も彼も普通の奴で、あの気性の荒らそうな斧男を震え上がらせる事ができそうな奴が見当たらないんだが。
「す…すまねぇ…」
さっきまでの勢いが嘘のように、プルプルと震えている。う~ん…あのフツメン達の中のいったい誰が、このデカゴツい斧男を一喝したと言うのか…。
興味津々で見ていたら、フツメンの一人がやっと口を開いた。
「ブルーノ、分かってるよな?…冷静に、だ」
ブンブンと頭を激しく上下に振る斧男。
するとフツメンはニコリと笑って、「じゃ、頑張って」と送り出す。言った内容も含め、どこまでも普通な奴なのになぁ。
斧男のビビりようが解せない。
あのフツメンは怒ると怖いタイプなんだろうか。
再びチビ太くんに向き合った斧男は、見違えるようにクールな居住まいになっていた。
「凄いっス!別人みたいっス~!」
チビ太くんは目をキラキラと輝かせ、思いっきり賞賛している。確かに、俺から見ても別人みたいだ。
構えに隙がない。
圧倒的に闘い辛くなった印象だ。
「面白くなってきたっス!!今度はボクから行くっスよ!?」
ワクワクが抑えられない様子で、チビ太くんが斧男に向かって跳躍した。その勢いを借りて、巨大剣を振り下ろす。




