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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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他ギルドの挑戦者達④

壁からの光が満遍なく水中を照らす。光を浴びると頭上の藻まで幻想的に見えるから不思議だ。それに、向こう岸まで何とか見通すことが出来る。


命の綱とも言える蓮の大きく膨らんだ茎が遠くまで連なっている様は、それだけでとても安心出来た。水の中にいない俺でさえそうなんだから、挑戦者達はもっと如実に感じている事だろう。


水の中では毒舌格闘家が待機して、手近な蓮の茎をナイフで切り取っては渡している。


息継ぎしながらで時間はかかるものの、順調に距離を稼ぐ挑戦者達。モンスターも出ず、なんだか不思議に静かな時間が過ぎた。


「水の中、凄い綺麗じゃない?早く皆にも見せたかったのに、この前の挑戦者の人達まともに水に入ってくれないからさぁ」


嬉しそうにゼロが呟いた。

確かに凄く綺麗だ。このモニター見ながらクラシックでも聞いた日には熟睡できる自信がある。


ただし隣のモニターからはダミ声の、口汚い罵声が聞こえるんだよ。ぶっちゃけ台無しだ。これはあれだな…。スライム・ロードに挑戦中の他ギルドのヤツらだ。やっぱりガラが悪い。


うわ…ムキムキの大男がか弱いスライム達を襲っているようにしか見えない。どう見ても悪者だ。


「ふざっけんな!スライムの癖に避けるんじゃねぇぞコラぁ!」


理不尽な事を言っているのは、体中に尋常じゃないほどの武器を仕込んでいるバトルマスター。この前来たバトルマスターはバカっぽくはあったが、武器は隠し持っていた。


それに引き換えこいつに至っては見せ付けるように持ち歩いてるあたり…タイプの違うバカかも知れない。


「うはっ!何このキンキラキンの成金スライム。超倒してぇ!!」


スキンヘッドに口髭のムキムキ格闘家がゴージャススライムを追い回している。俺もスキルだけで言ったら格闘家なんだろうが…こいつと同じカテゴリーだとは思いたくない…。


しかしゴージャススライム…金色の体がひらりひらりと宙を舞い、その度に宝石が煌めく。なかなか魅力的な眺めだな。


「タリぃ。スライムはスライムらしく瞬殺されろっつうんだ」


魔法戦士は、縦横無尽に飛びまわり攻撃してくるウィップスライムを、ダルそうに迎え撃っている。動きを予測して剣を振るうものの、変則的な動きに翻弄され致命傷は与えられないようだ。声色からはイライラした様子が窺える。


「…………」


そして丸眼鏡の魔術師は、ただ黙々とノートに何かを書いていた。


相変わらずジャングルのスライム達は集団で現れるらしい。


今も挑戦者達と相対するのは多彩なスライム達。お馴染みのウィップスライムやゴージャススライムはもちろん、進化したのか見慣れないヤツもいるな。


茶色の濁った色のスライムは、「マッドスライム」と言うらしい。泥たまりが幾つかあったから、そこに浸かっている間に進化したんだろう。


泥たまりから跳ね上がっては高速で体を回転させ、飛び散る泥水で目潰しするという、何とも地味な攻撃をしていた。


「うおっ!?痛ってぇ目に入った!」


「このアホスライム!体中に泥が飛び散っただろうがぁ!!」


ムサくてイカツい上に泥だらけの汗まみれか…。スラっちには悪いが、ホント俺の方じゃなくて良かった。


素直な感想を漏らしている間に、マッドスライムは怒りのバトルマスターによって瞬殺。可哀想に、元々が普通スライムから進化したらしいマッドスライムは、基本そんなに強くはないんだな。


そこに、体中から可愛い花を咲かせた愛らしいスライムが現れた。


「お!?なんだ?フローラルな香り…」


言いながら、ハゲでヒゲのムキムキ格闘家はそのまま前のめりに倒れていく。


て言うか、フローラルとかいう言葉知ってたんだな、そのナリで…。


ステータスを見るとムキムキ格闘家には「眠り」の状態異常になっていた。可愛いフラワースライムは、甘いフローラルの香りで相手を眠らせる事ができるんだな。


「味なマネすんじゃねぇかコラぁ!」


襲いかかるバトルマスターの鼻先で、フラワースライムは盛大に花粉を撒き散らす。顔中黄色くなったバトルマスターは、激しくクシャミをし始めた。いくら武器があっても振るえなければ意味がない。


ここぞとばかりに可愛いうちのスライム達が、寄ってたかってバトルマスターに体当たりを始める。


色とりどりのスライム達が次々に体当たりしていく様は、対象がゴツいバトルマスターだとしても、それなりに可愛い。


まぁ、HPはゴリゴリ削られてるけどな…。


そこに、今まで少し離れた所でひたすらメモをとっていた丸眼鏡の魔術師が、初めて呪文を唱えた。


キラキラの光が、バトルマスターとムキムキ格闘家を包む。その光はなぜかピンク色をしていた。


「へぇ、あいつやるじゃねぇか」


後ろから突然カエンに話しかけられて、軽くビビる。振り返ってみると、カエンは面白いオモチャを見つけたように、ニヤニヤと笑っていた。

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