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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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他ギルドの挑戦者達②

「もう~お化粧が落ちちゃうじゃない!」


とかブツブツ言いながら、懲りずに岸に近づくオネェ呪符使い。


「化粧なんかなくても姐さんは充分キレイだから大丈夫!」


「お肌ツルツルですもんね!むしろ羨ましいですよ~」


「あら嬉しい。ホントいい子ね、あなた達」


オネェ呪符使いはニッコリと微笑んで、男戦士と女アーチャーの頭をヨシヨシと撫でているが…水に浸かったままだというのに余裕だな。このパーティーは、泳ぎはそれなりにいけるらしい。


「全く…あんまコイツを甘やかすんじゃねぇよ。それよりこの水路をどう攻略するかが問題だぞ。…後ろ、見てみろよ」


男格闘家の言葉に振り返った3人は、とても嫌そうな顔をした。



水路は岸から1mくらいを残して、見渡す限り一面の緑色…。


水草が繁殖しまくっていて、その下がどうなっているのか…危険なモンスターはいないか、深さや水質すら見当がつかない。


「最悪…これ、掻き分けながら進むの?」


オネェ呪符使いのため息にも似た愚痴に、追いかけるように同意の言葉が重なる。


「モンスターでたら結構ヤバいなー。俺、剣が上手く振れなそう」


「あたしなんか、泳いでる時点で弓とか難し過ぎですよ~」


それを聞きながら、男格闘家は厳しい顔で水路を見つめていた。


「水の中を行くのはあんま得策じゃねぇ。蓮の葉もたくさんあるし、とりあえず乗れないか試すか」


言いながら屈伸する男格闘家を、オネェ呪符使いが慌てて止める。


「待って!アタシが試すから。誰か全体を俯瞰出来た方がいい。シャウはその高い位置から見ててちょうだい。」


つまらなそうにチッと舌打ちしながらも、男格闘家も頷いている。オネェ呪符使いはそれを見てニッコリ笑うと、今度は男戦士に指示を出した。


「アタシが蓮に乗ってみるから、フレッドは水中の様子を見て来てくれない?」


「ラジャー!!」


大きく息を吸い込んだ男戦士が水中に消えたのを見届けると、オネェ呪符使いは蓮の葉に泳ぎ寄った。


おもむろに蓮の葉に手を掛ける。

その瞬間。


「ジュリアン!離れろ!!」


男格闘家の叫び声に、思わず身を引いたオネェ呪符使いの手を掠め、蓮の葉がバックリと口を閉じた。


「ひ………っ!」


目の前でモグモグと蠢く蓮の葉を、気持ち悪そうに見つめる挑戦者達。なんと一見普通の蓮の葉に見えるそれは、立派にモンスターだったらしい。


グレードアップ…し過ぎじゃねぇか?



「怖……っ!」


顔面蒼白になりながらも、オネェ呪符使いは再度蓮の葉もどきに近づいていく。


「バカ!近づくな!!」


「大丈夫よ…どこまで反応するのか見極めないと…」


男格闘家の叫びに小さな呟きを返しながら、オネェ呪符使いは胸のあたりから1枚の呪符を取り出した。


「最悪…ビショビショだわぁ。ちゃんと使えるんでしょうねぇ?」


ブツブツと呟きながら、取り出した呪符を蓮の葉もどきの上や横でひらひらとさせる。意外にも、蓮の葉もどきはピクリとも動かなかった。


散々蓮の葉もどきの上や横でヒラヒラさせた後、オネェ呪符使いは呪符から指を離す。水けを含んだ呪符はアッサリと蓮の葉の上に落ち…その途端、さっきと同じように葉が食いつくように持ち上がって呪符を捕らえた。


オネェ呪符使いが短い呪文を唱える。


ボフン!!


音をたてて蓮の葉が飛び散った。


「良かった、呪符は効くわね。それに、触れるまでは反応しない…飛びのりさえしなければ、恐れるまでもないトラップだわ」


おお、オネェ呪符使いは意外となかなか冷静なヤツだな。


一定の安全が確認できたからか、オネェ呪符使いは蓮の葉と藻がひしめきあうゾーンに慎重に分け入って行く。


だが、予想以上に前に進めない。


やっぱり藻がすごくて、掻き分けても掻き分けても藻と蓮の葉が寄って来て、とても掻き分けながら向こう岸まで進めるレベルではなかった。


「ちょっとぉ…」


次第にイラつくオネェ呪符使い。


1mも進んでないというのに、身体にまで藻がまとわりついて、もはや動くのも困難な様子になっている。


地味に嫌なトラップだな。

通り抜けるには相当の時間と精神力をもぎとられそうだ。


「イラつくわー!全部燃やしてやろうかしら!」


胸から無数の呪符を取り出すオネェ呪符使い。


「こんの単細胞がぁ!!序盤で呪符使い切る気か、バカ!アホ!カス!!」


すかさず男格闘家の怒号が飛ぶ。びくっと肩を揺らしたオネェ呪符使いは、ちょっぴり気まずそうに振り返った。


「やーねぇ、冗談よぉ」


言いつつも笑顔はぎこちない。


「頭はいい癖に、なんでいざとなると突飛で考えなしな事ばっかするんだ、オメーは!マジ付き合ってらんねぇ」


「はいはい、そこまでー!!」


いつの間に水中から戻ったのか、男戦士が陽気に割って入った。


「あっ、フレッド~。遅いから心配しましたよ」


女アーチャーが、安堵のため息を漏らす。

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