スキル、真剣に検討中。
晩メシを食ったら早速スキル一覧と首っ引きで思案する。
ルリ…なんて言ってたっけな。
カエン使役はダメだから…スキルコピー…は死ぬほど便利だけど、スラっちとかぶるし面白みにかけるか?
…いかん、だいぶルリに毒されてきてるな俺。判断基準が面白いになっちゃダメだろ…。
頭を振って再考していると、ゼロが遠慮がちに近づいてきた。
「ハク、これ良かったら…」
ゼロがコーヒーと共に何か紙をくれる。
「なんだ?」
「この前ルリが言ってた面白そうなスキルに、僕が思いついたの足したリスト。参考になればいいかと思って」
ゼロ…!
今、丁度欲しいと思ってたんだ!
早速手元のスキルリストと見比べると、ちゃんと該当するようなスキルも存在している。覚える事は可能なわけだ。
「どう?いけそう?」
「ああ、参考にできそうだ」
「良かった。スキルチケットは1枚だけだから、覚えるなら自分の弱点補完できるか、将来的に伸ばしていけるのがいいと思うよ」
弱点…それ、遠回しに魔法系覚えてくれって言ってないか?いや、被害妄想だな。ゼロの顔から悪意は感じられねぇし。
「僕のオススメは『吸収』だよ。じゃ、頑張って!」と言いおいて、ゼロはさっさと向こうに行ってしまった。
…武闘大会の準備もあるんだろうが、もうちょっと相談に乗ってくれても…。
いやいや、これだけは最終決断は自分ですべきだな。
ゼロが言った事を思い出しながら、ゼロがくれた紙を眺める。ここは消去法でいこう。
魔王召喚…自分が強くなるわけじゃねぇしなぁ。却下だ。
物理攻撃無効…魔法が使えない武闘大会に出ようってのに、これはない。卑怯すぎる。
必ず相手の弱点をつける…これはちょっとアリだな。弱点をつければ意外とアッサリ勝負がついたりするし。
相手の動きを操れる…スキルリストにもあったなこれ。えーとこれか…からくり:対象者の動きを操る事が出来る。熟練により上位スキル:支配にランクアップ、精神まで操る事ができる。……怖っ!!
ジョーカーズ・ダンジョンのボスっぽいちゃぽいが、これはない。
誘惑…?なんでこんなの入ってるんだ。戦うのはおっさんが多いんだぞ?要らねーし、こんなスキル!次だ、次!
見せた幻覚がダメージになる…あー、これもジョーカーズ・ダンジョンのボスっぽいけど…ただ俺の貧相な想像力だとちょっと心配かも知れない。ルリならなぁ…最強のスキルになりそうだ。
吸収…あ、これか。ゼロのオススメのスキル。オススメだけあって色々書き込んであるな。
えーと…「リリスの吸精とかとは違って、成長性の高いスキルだよ」…ふぅん、どう違うんだか。
「最初はHPだけだけど、熟練度によってMP、スキル、ステータス、属性…色々吸収出来るようになるから便利だし」おいおい、これはマジでいけるんじゃねぇのか??
しかし「吸収」って事は、もしかして吸収された相手はそのスキルが使えなくなったりするんだろうか。それは…嫌だな。苦労して習得したものが一瞬で奪われたら…相手の気持ちを思うと絶対に嫌だ。
あ、やっぱそう言うメモがあるわ。
「ただ吸収された相手はそのスキルとかなくなっちゃうから、ハクは嫌かも」って…分かってんじゃねぇか。
そっちの方が確実に相手にとってダメージ大きいのは分かっちゃいるが、嫌なもんは嫌だ。いいセンいったが、これも却下だな。
…次!
時間操作…時間を自由に操る感じか?あ、スキルとしてあるな。
えーと、対象物の時間を操る事が出来る。例えば花が咲いた植物を種に戻す事も反対に枯らす事も出来る。熟練度によって時間の引き延ばしや短縮は勿論、過去や未来への移動も可能。
すげぇな…。使いこなせれば便利かも。まだイメージは湧かないが、一応候補だ。
次は…ああ、ゼロのメモも次で最後か。
これにも花マルがついてるな。「これもオススメ!」って…色々書き込み過ぎだろう。
そこには、能力コピー系のスキルが羅列されていた。スキルコピー、姿形コピー、レプリカ…ゼロも色々調べてくれた痕跡が感じられる。
その中で、大きく丸が付けられていたのは「指定転写」だった。
指定転写…指定した物から物へ、転写できる。例えば石から硬さ、材質、成分など、特定した何かを指定の物へ転写出来る。熟練度によって、無機物から有機物、組成が複雑な生き物にも転用が可能となる。
これは…ルリが言ってたのに近いのか?
ゼロのメモには「スキルとかも転写できるようになるし将来性抜群だけど、熟練度が低いうちは無機物にしか使えないから、使い勝手が悪そう」と書かれている。
だから、一番のオススメじゃなかったんだろう。確かに直近に迫っている武闘大会ですぐに役立つ感じは少ないが…。意外とボス戦では使いようがあるかも知れないぞ?
少し考えて、俺はゼロの元に向かった。気持ち的には「指定転写」だが、いくつかの疑問を解消し、その上で決断したい。




