ジョーカーズダンジョン、2日目④ 10/11 2回目
そして巨人が現れ、男魔術師は格闘家の元まで飛ばされた。もちろんぶん投げられた訳だが…巨人のコントロールを褒めてやりたいくらい、男魔術師はビンゴで格闘家の真横に着弾した。
その瞬間、二人が消える。
固い決意で飛んで行っただけあり、着水の衝撃にもめげず暴れる格闘家を掴んで転移したらしい。
途端、へのへのもへじサイドが騒ぎ出す。
「何と言う事でしょうか~!!モンスターが釣れました!!」
へ!!?
どういう事だ!?
あ…確かにへのへのもへじ達の向こうにデカい丸いものが見える。
「格闘家:サンさんは巨大タコに襲われていたようです!!」
キーツのアナウンスに、目を凝らしてモニターを見た。
…うわぁ、シュール。
巨大なタコが足を振り上げ、へのへのもへじ達を威嚇しだした。
突然陸に転移し、大勢の敵に囲まれるという状況にタコも驚いたのだろう、すでにグッタリしている格闘家を放り投げ、新たな敵への警戒を最優先したようだ。
バラバラっとへのへのもへじ達がバラけ、巨大な敵を囲んで戦闘陣形を組む。
「うおぉぉおぉぉぉ!!!」
雄叫びと共に、聖騎士が美しい剣をタコの巨体に振り下ろした。
しかし、タコの方が一枚上手だ。
剣が体に届く前に、デカく長い足で聖騎士の体をなぎ払い、ぶっ飛ばした。
「だりゃあぁぁ!!!」
女戦士が可愛くない叫びと共に斬りかかる。巨大タコの足がまたもなぎ払おうと動いた瞬間、銃声が響き渡った。
タコの足が弾かれたように止まる。
その一瞬の隙を突いて、女戦士の細身の剣がタコの足を一本切り落とした。
しかし次の瞬間には女戦士が吹っ飛ぶ。
足が多いだけに、手数が多い。
「くそっ!接近戦は不利だな!」
聖騎士が悔しげに呻いた。
巨大タコ、デカい癖になかなかの反応速度だ。陸で戦っているからいいものの、水中戦だったらへのへのもへじ達はなす術もなかったんじゃないだろうか。
しかもタコってじっくり見ると目が怖いんだな。
タコのモンスターはあんまり見ることがなかったもんだから、ついつい気をとられていたら、突然巨体が燃え上がった。
見れば女魔術師が矢継ぎ早に火炎魔法を放っている。さすがに火系の魔法は効いたようで、巨大タコは苦しげに暴れ始めた。
しかし体がデカいだけに、ただ暴れただけでも被害がでる。のたうちまわり予測できない動きの足に、近くにいた男魔術師がぶっ飛ばされた。
「くそっ!手に負えない…!」
聖騎士は悔しそうに喚き、キッと男召喚師を見た。
「ペッパー!こいつの弱点を調べてくれ!!早く!」
そんな事が出来るのか!?
驚いた事に男召喚師はすんなりと呪文を唱え始め、例のごとく杖にそっと口付ける。
杖からは、メガネをかけたふっくらしたフクロウが出てきた。
「なんじゃの…。お呼びかのぅ…」
ダルそうだな、フクロウ…。うたた寝を邪魔されて不機嫌なお爺さんの印象だ。
「あのデカいタコの弱点教えて」
今まさに女戦士と死闘を繰り広げている巨大なタコを親指で指す男召喚師。爺さんフクロウは目を細め…「あ~………」と、納得したように頷いている。
「タコなんちゅうモンは、大概目と目の間が急所じゃのぅ…」
「分かった!!」
言うが早いか聖騎士は猛然と飛び出し、強く地面を蹴って跳躍すると爺さんフクロウの言う目と目の間に剣を深く突き刺した。
剣は根元までタコの体に呑み込まれている。あまりに深く刺し過ぎて抜けなかったのか、ひらりと着地した聖騎士はなんと手ぶらになっていた。
手ぶらって…急所が間違ってたらどうするんだ!…と思ったが、巨大なタコは既に全身から力が抜け、息絶えている。
爺さんフクロウも聖騎士も凄えな。
さすがにレベル50オーバーくらいになってくると、独自の面白い戦法を持ってるもんだ。
このパーティーは一体俺とどう戦うんだろうか。かなり楽しみになってきた。
…ただなぁ。
色々あったが実際はまだダンジョンに入って10m地点でまごまごしている状態だ。タイムアウトしそうな予感満載だぞ…。頼むから頑張って進んで欲しい。
へのへのもへじ達の健闘を祈りつつ、俺は他のモニターに視線を移した。
そしてかなり驚愕する。
プリンセス・ロードの挑戦者達は中間ゲートを突破し、プリンス・ロードの挑戦者達は既にリタイアし、キング・ロードの挑戦者達はリリス多発地帯の宝箱ゾーンに入ろうとしている。
スライム・ロードでもジャングルの中間地点は越しているだろう。
え…アナウンスだってあっただろうに、俺、どれだけ集中して見てたんだ?しかもこれ、かなり時間経ってるイメージだよな?
おいおい、ジョーカーズ・ダンジョンのへのへのもへじ達、大丈夫か…。タイムアウトの可能性がさらに深まった気がする。
俺は本当に嫌っていう程、変化の練習させられたんだよ。実戦で活かせなかったら悲し過ぎるだろう。…本当に頑張ってくれよ!!




