濃いめの挑戦者達⑰ 10/6 1回目
天井から無数の光の刃が降り注ぐ。見た目はキラキラと輝いて美しいが、実際は凶悪な魔法だ。無数の剣に切り裂かれ、挑戦者達は一様に血を流し、相当大きなダメージを負っている。
男魔術師がすぐさま全体回復魔法を唱えてはいるが、挑戦者達の脳裏には、高度な魔法を使うという刷り込みがなされたに違いない。
「くっそ、魔術師か!!」
イケメン精霊がイライラと体中から炎を巻き上げた。その炎が大きな竜巻をかたどっていく。
……おいおいアレ、ヤバくないか?
竜巻のデカさにちょっと心配になってくる。デカい体の方がダメージが軽減出来るのか!?それとも小さい方が避けたりできるか!?
迷った末、俺は巨人に変化する。
すでに巨大に膨れ上がった炎の竜巻。放たれる前になんとかできないか!?
「うおぉぉぉおぉぉぉ!!」
俺はイケメン精霊に向かって、渾身のパンチを繰り出した。
しかし一歩遅い!!
イケメン精霊は殴り飛ばせたが、その拍子に炎の竜巻もヤツの手から放たれた。
炎の竜巻を全身に受けて爆風に押されながら、イケメン精霊がかき消えるのを見届ける。
よし、厄介なヤツを片付けた!
あとはこの竜巻だ…!炎と風が、受け止めている腕も胸も容赦なく抉っていく。だが…今は俺の体もデカい。この体なら、やれる筈だ!
「ぐぅぅぅぉぉぉ!!」
腕の中の炎の竜巻を、力を込めて締め上げると、竜巻は激しく暴れ、胸を抉り腕を焦がしていく。
だが、俺の勝ちだ。
ついに炎の竜巻は、俺の腕の中で霧散した。挑戦者達はさすがにポカンとした表情で俺を見上げている。
「すご…」
「嘘だろ…?」
もっと言ってくれ。嬉しくなって挑戦者達に視線を向けたら「ひっ!」と怯えた声をだされた…。
ちょっとショックだ…。
俺が軽く落ち込んでいたら、バトルマスターが激しく頭を振って、2回バチン!バチン!と自分で頬を叩き、俺を睨みつけてきた。
「くそっ!まだだ!俺は諦めねぇ!」
叫びながら剣を振りかぶり、斬りつけてくる。それを見た他の三人の目にも、瞬時に生気が戻り、反射的に武器を握りしめた。
はは、そうこなくっちゃな!!
俺も一番人型に近い姿でお相手しようじゃないか。再び女豹の獣人の姿になって武器を取り出す。
ヌンチャクの形のまま、バトルマスターの剣をがっちり受け止める。
「ははっ!なかなか重い剣だな!」
すぐに剣を押し返し、後ろに跳ねながら武器をムチの形に変える。
次々と飛んでくる投げナイフを飛び退いて躱しながら距離をとった。
一気にムチを最長の5mまで伸ばし、女召喚師の杖を奪う。ここであのスキンヘッドの大男を召喚されたら嫌だしな。
「ああっ!鬼畜ですぅ。杖を奪うなんて人でなし~!」
女召喚師は涙目で俺を批難しているが…悪いけど相手を無力化するのは戦闘の基本だからな。
魔術師は杖がなくても威力は落ちるが魔法は発動できる。たださっきから見てる限り、召喚は呪文の上この杖の対応する宝玉に口付けしてたみたいだから、杖がなくなるとかなり痛手の筈だ。
「返しなさい!」
無謀にも女盗賊が飛びかかってくる。素早さに自信があるのだろう、杖を奪い返そうと一歩も引かず攻撃してくる。とっさに奪った杖で殴ってしまった。
「あ、悪い」
「気遣い無用よ!さぁ、返しなさい!」
「そうか」
気遣い無用なら問題ないな。
カエンやムサ兵士20人を相手に毎日組手をしていた俺からすると、女盗賊の攻撃は生ぬるい。
軽いステップで避けながら、ムチを繰り出す。一瞬で女盗賊はムチで巻かれてしまった。
女盗賊もナイスボディの美女だから、今頃カフェではおっさん達が大騒ぎだろうが…。
「悪いな、おしまいだ」
そのまま電流を流す。
バリバリバリバリっ!!!
激しい電流が流れ、女盗賊は口から煙を吐きながら、力なく倒れこんだ。場内アナウンスが響く。
「ジョーカーズ・ダンジョン挑戦者、盗賊のアカシャさん、気絶により残念ながらリタイアです!」
挑戦者達は悔しそうに俺を睨んでいる。
「まずはひとり…」
俺は余裕を見せるために、わざと優しく微笑んだ。
「さぁ、次は誰だ?」
「くっ!仕方ない…!悪く思わないでくれ、美しい人!」
バトルマスターが気持ち悪い事を言いながら突進してくる。そうだった。この女豹の姿だとバトルマスターが気持ち悪くなるんだった…!
近寄られたくない!!
至近距離に来られる前にカタをつけるべく、必死でムチを振るう。
「くっ!なんという素晴らしいムチ捌き!ぜひ!ぜひご教授願いたい!」
げっ…なんか違うスイッチまで入った!?
バトルマスター、マジでキモい!
その時だ。
全身を激しい衝撃が襲った。
「か……は……っ!」
くそっ…キモいバトルマスターに気をとられ過ぎた…!男魔術師を完全に忘れてた。
全身を氷が覆っている。俺は瞬時にスライムに姿を変え、氷から飛び出す。




