濃いめの挑戦者達⑪ 10/3 1回目
もちろん髭ドワーフのおっさんも慌てふためいているが、挑戦者達はそれどころじゃない大騒ぎだ。
花瓶の破片をすんでのところで避けてホッと一息ついたところに、頭上から鍋が降ってきた。直撃はなんとか避けたものの、スープっぽいものを大量に浴びている。
「うあちぃっっ!!」
と悲鳴を上げたところにナベのフタが転がってきたから散々だ。見事にひかれて男魔術師はぐったりしている。
「うわぁ~ベタベタしますね~。最悪ですぅ」
女召喚師が情けない声をだしたが、女盗賊は振り向きもしない。
…というか、肩がふるふる震えてるみたいだけど…状況から考えて、怒りだろうなぁ。
「……正座……」
女から出たとは思いたくない低~い声で女盗賊が呟くと、女召喚師とバトルマスターはさぁっと青ざめ、一瞬で女盗賊の前にピシッと正座する。
スープまみれの床なのに、一切躊躇しなかったところを見ると、キレた女盗賊はよっぽど怖いんだろうな。
説教モードに入って、何故か自分も一緒に怒られてる気がして居心地が悪くなった俺は、ちょっとだけ隣のスライム・ロードのモニターを覗いてみる。
おっ!
爺さん達、頑張ってるじゃん!
ジャングル地帯のスライム一斉攻撃を振り切り、早くも5色のスラレンジャーを倒してしまったらしく、最終ステージに舞台が移っているようだ。
ゴツゴツした岩肌に間欠泉、周りに広がる砂漠。
さっきまで爺さん達が通ってきたジャングルとはうってかわって、見晴らしのいい開けた空間が広がっている。
「はあ~、今度は砂漠か。広いのぉ」
「ギルドの地下とは思えんな」
「カエンも味な事しよるもんじゃ」
爺さん達がそう話しながら、岩場の間欠泉の横を通り過ぎた瞬間。
間欠泉が勢いよく、熱湯を噴き出した。
そして熱湯と一緒に、たくさんのスライム達が噴き出される。
空を舞うスライム達から、爺さん達に向かって一斉に熱湯が噴き出された。
「あちぃっ!!?」
「あつっっ!なんじゃあ!?」
完全に不意をつかれ、爺さん達は熱湯をもろに被ってしまった。
「くあ~っ!一本とられたか!」
戦士爺さんが、悔しげに叫ぶ。
「ここのスライム共はバリエーションあり過ぎなんだよ!」
「おっ!バリエーションとは、ガレットもハイカラな事言いよるのう」
魔術師爺さんが回復魔法を唱える間にも、スライム達はあっちからこっちから、熱湯を吹き掛けてくる。
「あー、この子達も自力で進化したんだね」
ステータスを見ながら、ゼロが感慨深そうに呟く。
「砂漠に適応してもらうつもりで、普通スライムを10体配置したけど、間欠泉に適応した子がいるって事だよね」
熱湯でもやっぱり水分ある方がいいんだねぇ、と感心したように笑うゼロ。まぁ確かにスライムだし、砂漠よりは熱湯の方がマシだろうなぁ。
モニターの向こうでは、さらにスライムメイジまで乱入してきて、戦況が一気に白熱している。
「くあっ!なんじゃ、新手のスライムか!」
驚く戦士爺さんに、スライムメイジは火炎放射を放つ。あちらからは熱湯、至近距離からは火炎放射。
さすがに戦士爺さんも深手を負ってしまった。
「ちっ!筋肉バカが!不用意に近付くな!」
悪態をつきながらも、魔術師爺さんは速攻で治癒する。一見仲が悪そうだが、長年培ったチームワークは現役引退後の今でも健在なようだ。
その魔術師爺さんに、背後からスライムメイジが飛びかかる。
凄まじい勢いでスライムメイジの腕?足?が魔術師爺さんに打ち込まれた。最後は回し蹴り…?なのか、頭部を強打されて、魔術師爺さんは音を立てて倒れ込む。
おいおい、それ格闘系スキルだろう…。
…ていうか、相手はお爺ちゃんなんだから、手荒過ぎてポックリいかないようにしてくれよ…?
まぁ、スライムメイジ達も、いつになく全力で楽しそうに戦ってる。それだけ爺さん達が強敵なんだろう。
衰えたとはいえ、最終レベル150前後だもんなぁ。
それでも、スライムメイジが3体入った事で、爺さん達もさすがに苦戦している。
「痛っってぇな、この軟体生物がぁ!超ムカつく!死ね!」
魔術師爺さんはこめかみに青筋を立てて起き上がると、爺さんらしからぬ悪態をつきながら、周りの空気までビリビリと痺れるような雷の球を両手で作り出した。
「死ね、とか簡単に言っちやいかんのう。孫の教育に悪いからのう」
格闘家爺さんから注意され、ちょっと顔を赤くして「うっさい!」と叫びながら魔法をスライムメイジにぶつける魔術師爺さん。
スライムメイジは一瞬で黒焦げになってしまった。
「スライムメイジを瞬殺! 魔術師ガレットさん圧巻の強さです!サーヤちゃん、お爺ちゃん強いね!」
キーツのアナウンスに、カフェでは可愛らしいツインテールの女の子が、嬉しそうに笑っている。
あれがサーヤちゃんか。




