第三クールはスライム祭り!⑪
「え…5匹もいるの…?」
「げっ!あの黒いの…まさか」
女戦士も魔族魔術師も、若干青くなっている。腕があるだけに、相手の強さも分かるんだろう。
「さあ皆さん、いよいよ第二ステージのボスの登場です!!」
キーツのアナウンスと共に、曲調が一気に変わる。テンポが早く、ワクワク、ドキドキするような元気のいい曲だ。
イナバ、やるな!
「豊富な特殊能力を持った、5色の可愛いスライム達。5色纏めてスラレンジャー!って呼んでやってくださいね~」
元気良く跳ねている5色のスライム達に、カフェからは盛大な声援が飛んでいる。
「ちっくしょ~!悪スライムめ!オレのエルフちゃんを返せ!!」
弟戦士はガッカリな叫びと共に、スラレンジャー達に襲いかかる。エルフへの期待は尋常じゃなく大きかった模様だ。
スライム達は左右にサッと散り、ど真ん中にいた赤スライムだけが、そのまま額(?)で弟戦士の剣を受け止める。
ガッキ~~~ン!!
と、金属同士がぶつかる音がした。
………え?
アイツ、硬い系なのか?
「そっかぁ…レンジって基本、金属だもんね…」
ゼロがポツリと呟いた。
はぁ~…攻撃スキルも多いのに、防御力も高いのか。赤スライム、強敵だな。
今のぶつかりあいで腕が痺れたらしい弟戦士は、腕を抑えながら飛び退く。そこに、雷撃が炸裂した。
黄色いスライムが放った雷撃を、弟戦士はかろうじて避けたが、爆風でよろめく。追撃しようとする黄色スライムに、女戦士が斬りかかった。
ガキィィィイィィン!!
そして、またもや硬い音。
ああ、アイツは雷神の盾が素材だったか。
こうして見ると、スラレンジャーは本当に戦い辛い相手だな。5体中3体は攻撃力も防御力もハンパなく高く、1体は何が起こるか分からない不思議スライム。
あ、唯一倒し易そうな、ピンクのスライムは…?
隅っこで目立たないようにプルプルしてる!
エリクサーとの合成だから、能力的に回復系オンリーだ。皆がケガするまで、出番がないんだな!?
ショッキングピンクの体を控えめにプルプル動かして、応援しているようにも見える。
なんかツボにハマってしまった。
「どうしたの?」
一人で肩を震わせて笑ってるもんだから、不審に思われたらしい。ゼロにツッコまれてしまった。
「いや、ピンクスライムが…端っこで目立たないように頑張ってんのが可愛くて」
「……へ?」
モニターを見たゼロも、状況を理解したらしい。噴き出した。
「あははっ!そうか攻撃手段がないんだ!可哀想~!!」
「そう、しかも防御力も紙だろ?ああするしかないよな~!」
「目立たないようにって…ショッキングピンクなのに!?」
「可愛い~!」
皆、爆笑だ。
それからピンクスライムは、マスタールームのアイドルになった。
もちろん、そんなバカ話の合間にも戦闘は進んでいる。
一番攻撃的なのは、青スライムだ。
トゲトゲの体で、ガツンガツンぶつかっている。
「いてっ!くっ…いってぇ!!なんでお前、オレばっか狙ってんだよ~!!」
弟戦士…なんでそんなに緊張感がないんだ。それなりに血塗れなのに。…て言うか、そろそろ回復しないとマズイんじゃないか?
「グリード!回復頼む!」
「うるせぇ、今忙しい」
「いやいや、死ぬから!!」
いつも通りのやり取りの後、面倒臭そうに回復魔法をかける魔術師。回復するとは言え、あのトゲトゲでくらうダメージは大きいだろうに、弟戦士はまだまだ元気だ。
あの打たれ強さは評価したい。
そして、盗賊くんも相当苦戦している。
黄色スライムの雷撃を躱しているのはさすがだが、なんせ相手は盾。ナイフごときでは刃がたたない。
カツッ、カツッ、と軽い音を立てて、ナイフは尽く地に落ちる。
「そいつはナイフじゃムリだ!俺がやる」
「グリード…!」
嬉しそうに振り返る盗賊くん。
「その代わり、アイツを頼む」
指差す先には、黒いボディの不思議スライム。盗賊くんは絶望の表情を見せた。
「大丈夫だって!お前元々、魔法使えねぇだろ?」
「魔封だけって限らないし…」
ご名答。
俺達ですら、次に何が起るかはわからない。
ただ、魔族魔術師の魔法を封じられるとダメージがデカ過ぎる。盗賊くんも観念したらしい。
「ま、やりますけどね…」
と、小さく呟きながら、不思議スライムに向かって走り出した。 投げナイフを放ちながら、どんどん距離を詰めていく。
不思議スライムは、ぴょんぴょん跳ねてはナイフを躱し、一際高く飛び跳ねると、くるんっと一回転。
真っ黒い体から、真っ黒い煙が噴き出した。もうもうと立ち込める煙は、瞬く間に部屋中を覆う。
「なっ…なんだ!?煙幕か!?」
「ええ!?何にも見えない!」
慌てふためいた声だけは聞こえるものの、モニターも真っ黒で何も見えない。
ホント厄介なスキルだな…。




