第三クールはスライム祭り!⑩
弟戦士はハンマースライムに斬りかかる。
ズバッと小気味の良い音がして、ハンマースライムはダメージを受けたようだ。やっぱり、形がハンマーっぽいだけで、プルプルボディなんだろうか…。
ハンマースライムがくるっと一回転すると、弟戦士目掛けて、地面から土の槍が何本も突き出てきた。
なんと、この見た目で魔法が得意なのか!?
驚いたが、よく考えれば、大地のハンマーとの合成だから、地の魔法もいくつか持ってるんだな。
この思わぬ攻撃により、弟戦士はもちろん、巻き添えをくって、女戦士までが土の槍で傷ついてしまった。
「アイカちゃん!」
魔族魔術師が叫ぶ。
そして、全員の視線が、魔族魔術師に集中した。きょとんとしたあと、魔族魔術師はこれまで見た事がないような笑顔を見せる。
相当嬉しいんだな。
魔族魔術師が両手を高く掲げると、パーティー全員の体がキラキラと光る。復活1発目の魔法は、全体回復魔法だった。
「おーっと!グリードさん、ついに魔法が使えるようになったのか!?どうやら、回復魔法を放ったようです!!」
キーツの叫びに、カフェは大きく揺れた。
「さあ…どう料理されたい?愛しのアイカちゃんを傷つけた罪は重いぜ?」
ニヤニヤと笑いながら、右手に魔力を集めていく。素早く詠唱したかと思ったら、無数の闇色の刃がハンマースライムを襲った。
あっけなく倒されてしまったハンマースライムに危機感を覚えたのか、大天使の兜スライムは光のビームを放った。
魔族魔術師に炸裂したサンビームは、左肩を貫通する。
「痛ってぇ…!ちくしょう、こいつも聖属性か!俺の闇魔法も効きが悪いし、なんなんだ一体…!」
悔しげに呟いて、回復魔法を唱える魔族魔術師。
「あ、そうか…」
モニターを前に、ゼロも何かを納得したように呟いた。
「?…どうした?」
「いや…ダンジョン、聖属性になったから…。それで闇魔法の効きが悪かったり、聖魔法の効きが大きかったりするんだろうなぁ…と思って」
……あ、なるほど。
そう言われて見るとそうだ。10%って、考えてみれば結構違うもんな。やっぱり、体感で分かるくらい違うんだ。
魔族魔術師は、闇魔法を諦めたのか、火焔系の魔法で対抗するようだ。右手の中で勢いを増した炎の玉を、大天使の兜スライムに向かって放った。
兜部分で上手く炎を防いだと思ったら、サイドから女戦士が、ガラ空きになったスライムの本体部分をザックリと刻む。
大きなダメージに、一瞬動きが止まった隙をついて、追加の火の玉が襲い、大天使の兜スライムは、ついに火だるまになってしまった。
「勝負あった~!!グリードさんの復活で、強敵のスライム達を難なく撃破しました!!」
ボス戦直前で、魔族魔術師が復活したのは大きい。きっと、いい戦いになるだろう。
「いやっほぅ!!終わったぜぇ!さっ、エルフちゃんに会いに行こうぜ~♪」
木のウロの中はエルフの店だと信じて疑わない弟戦士は、どこまでも能天気だ。
「だから店って決まってないし…。グリード復活したから、まぁいいけど」
盗賊くんのツッコミも諦め気味。
弟戦士はスキップする勢いで、木のウロに近づいて行った。
女戦士は眉間に深くシワを寄せている。
魔族魔術師が見かねて、弟戦士を止めようとしたら、女戦士はウンザリしたようにこめかみを抑えて、首を横に振った。
「もう、放っといてやって…。言ってもどうせ聞かないし、痛い目見ないと分からないから」
どうやら、苦い思い出がありそうだ。
「おっじゃましま~す!エルフちゃん!!」
満面の笑顔で木のウロに飛び込む弟戦士。
もちろん中で待っているのは、可愛い5色のスライム達、中ボスの「スラレンジャー」だ。弟戦士が入るなり、加熱水蒸気オーブンレンジと合成した真っ赤なスライムが、高温のスチームを吹きかける。
「ぅあっちぃぃぃ!?」
さらにコスモスターと合成した、トゲトゲが光る青いスライムが、勢いよく体当たりを決めた。
油断しまくりの弟戦士は、面白いくらい吹っ飛ぶ。
「ぐはぁっ!」
壁にぶち当たり、ズルズルと崩れ落ちた。口からは血が流れ、あの能天気さから一転、かなり深刻なダメージを受けてしまっている。
「…派手にやられたわね」
女戦士も渋い顔だ。魔族魔術師は、無言で回復魔法を唱えた。
「いてて…くそぅ、話が違うじゃねぇか…!オレのエルフちゃんは!?」
「…だから、それアースの妄想だから…」
ボソボソとツッコミながら、盗賊くんが弟戦士を助け起こした。
一瞬で回復はされたものの、先制攻撃で結構なダメージを与えたスラレンジャー達は、今は5色一列に並んで、挑戦者達と対峙している。
これは…名乗りをあげているつもりか?
プルプルしてるけど。




