入賞に必要と考えられる三つの要素
インターネット上で公開する小説(いわゆる「オンノベ」)の投稿サイトでは、様々なコンテストや公募を募集しているところが多いと思います。以前は原稿を書いて、それを郵送して……という手間がかかりましたが、今や誰でも条件さえ満たせば簡単にこういったコンテストに応募できるようになりました。
しかし、簡単に応募できるということは、応募数が多くなり、入賞する確率も低くなるということです。何千、何万もの作品から選ばれるためには、やはり「これ」といった光るものが無ければなりません。
特に大手のコンテストとなると、「書籍化レベルに達している」のに「二次選考や最終選考で落ちる」といったことも簡単に起こりえます。選考に通過する作品とそうでない作品はどう違うのか、気になる所ではあると思います。
私も参考までに短編小説賞に参加している作品を読むことがありますが、なんとなく「これは通りそうだ」「これは通らなさそうだ」というのを感じることがあります。それは「きちんと書けている」「小説作法を守っている」「表現や描写が豊かだ」といったところではありません。
当然文章力は必要な要素となりますが、特にラノベではそれよりも重要な要素があります。個人的には、以下の三つが挙げられます。
【1.秀逸なアイデア】
純文学の小説では、アイデアというよりも文章力や表現力、構成力が重要になるかもしれません。しかし。ラノベだと、それ以上に斬新なアイデアが求められます。
たくさんの作品がある中で、似たような作品はどうしても出てきます。その中でも「お、これは!」と思わせるようなアイデアは、まず審査員の目に留まるのではないかと思います。
特にオンノベでは、「入口」が重要です。つまり、タイトルやあらすじ、冒頭部分で面白くないと感じると、先を読んでくれなくなります。ことさら読者による一次選考を採用しているところもありますから、とにかく先を読ませるようなアイデアが必要となります。
アイデアの大半は、ほとんど出尽くしていると言われています。そんな中で「おっ」と思わせるような話の軸となるアイデアを考えるのは、なかなか大変でしょう。
【2.物語の構成・進行の仕方】
アイデアがめちゃくちゃ斬新と言えなくても、物語の組み立て方で差をつけることが可能です。逆に、いくらアイデアがよくても、物語の進め方が駄目だと、選考には通りません。
テンプレートの話、とは言いますが、物語の設定の部分は、どうしてもテンプレートに頼らざるを得ない場合もあるでしょう。特に異世界物やVRMMO物では、システムや導入部が似たようなものになりがちです。そこで差をつけらればよいですが、なかなか難しいものです。
むしろ、テンプレートになりがちでかつ避けた方がいいのは、話の進め方でしょう。もちろん王道の進め方というのもありますが、話の進め方まで完全に他のラノベを参考にしてしまっては、いくらアイデアが斬新でも「なんかどこかで見たことある気がする」話が出来上がってしまいます。
工夫する点はいくつかあります。例えば伏線の張り方であったり、話の終わらせ方だったり、戦闘シーンだったり、いろいろあるでしょう。
自分なりの話の進め方が出来れば、アイデアの平凡さも補うことが出来ます。
また、最近では「何故この話でその設定が必要なのか」という妥当性を求められることもあるようです。全部が全部理由付けをする必要はないと思いますが、それなりに「だからこういう設定なのか」と思わせるように話を作らなければならないでしょう。
【3.自分らしい作風・オリジナリティ】
ここで言うオリジナリティというのは、読者が作品を読んだ時に「これはこの作者じゃないと恐らく書けないだろう」と思わせることです。
あるアイデアを思いついた時、十人中八人はそうするだろうというアイデアの使い方や話の進め方では、先が読めてしまい面白さが半減してしまいます。つまり、他の人が思いつきそうな展開ではダメだということです。
もちろん、上記のものができていないからと言って、選考を通過しないというわけではありません。誰もが思いつくようなアイデアでおもしろい話を書く人もいるでしょうし、構成がテンプレートでもアイデアがその分優れている人もいると思います。
しかしながら、短編小説賞の入賞作品を読むと、大体上記のことが出来ている作品が入賞しているというイメージがあります。
実際上記のことを注意して作品を作ろうとしても、なかなか難しいことが分かるでしょう。それくらい、アイデアや構成というのは、新しいものを考えることが難しいのです。温故知新、新しいものを考えるためには、いろんな作品を読み、どんなアイデアや構成になっているとおもしろいのかを研究する必要があるでしょう。