物語の流れが悪くなる要素
自分が考えた話というものは、書いている本人は理解できているために自分自身では過不足ない情報を書いているつもりになります。しかし、いざ他の人が読んでみると、話が分からない、流れがぶった切られている、ということがよくあります。
特に、今読んでいるところの状況が理解できていないと、おもしろい話もまったくおもしろくなくなります。作者の理解度と読者の理解度は、それほどまでに差があります。
何故状況が理解できなくなるのか。そこには、話の流れを断ち切ってしまう要素があると考えられます。そういった要素を、いろんな小説を読んでみて、自分なりに考えてみました。
【1.いらない説明が多い】
すぐに使わない説明や、無くても話が分かるような説明が随所にちりばめられている場合です。自分が設定したことを全部提示したいがために、ついついやってしまいがちです。
特に序盤では、「どういう話か理解してもらいたい」と思うがあまり、設定したことをこれでもかというほど書いてしまいます。また、関係ないところや緊張感がある所などで、「ついでにこれも説明しておこう」と思い、しばらく使わない設定の説明を始めてしまうこともあるでしょう。
設定の説明は物語の雰囲気づくりや知らないと話が分からなくなるような説明、伏線になることくらいにとどめた方がいいでしょう。
【2.説明不足】
先ほどの逆で、必要な説明がされていないパターンです。特に人物描写や情景描写が不足しがちになります。
これは、作者は設定を全部把握しているがゆえに読者に伝え忘れている、もしくは十分伝えたと思いこんでいるために起こることです。
描写が不足していると、読者があらぬ想像をしてしまい、作者が思い描いている場面と食い違ってしまい、情報の意味が異なってしまうことになります。
もちろん読者の想像にゆだねる部分はあってもよいですが、絶対に読者の頭に置いて欲しい情報は必ず書いておきましょう。
ちなみに人物描写や情景描写が十分かどうか確かめるには、書いていることだけを絵にしてみるとよいでしょう。描いてない部分が、読者にゆだねる部分となります。
【3.分かりにくい表現が多い】
読みづらい・意味が分かりにくい熟語を多用したり、やたら遠まわしな書き方・比喩表現をつかっていたりする場合です。
そういうものがあると、そこで読者がそれがどういう意味か考えてしまい、話が途切れやすくなります。文要所要所で使うと効果的となりますが、多すぎると何度も話が中断してしまい、テンポが悪くなってしまいます。
難しい表現を使えば上手な文章になるわけではありません。相手に伝わる文章を心がけることが重要です。
【4.人物の差別化がない・分かりにくい】
地の文ではなく、セリフでの差別化がはっきりしていないパターンです。特に会話が多くなるシーンでは、差別化がされていないと混乱の元になります。
語尾やしゃべり方だけ変えて特徴をつけたつもりでも、地の文と比べてみると表現に差が無いように見えることがあります。これは、作者の語彙力ですべての文章を書いてしまっているからだと思われます。
言葉遣いだけでなく、語彙力……例えば、子供であれば簡単な言い回しをする、大人であれば難しい熟語を多用する、といったことでも差別化が可能なので、「登場人物の知能や語彙力」も考えてみましょう。
【5.時系列が分かりにくい】
物語の流れによっては、今進めている時間より過去の話に飛んだり、あるいは先の時間のことを書いたりすることがあるでしょう。その時に、どれくらい時間が経過したのか、いつの話なのかが分かりにくい場合があります。つまり、読んでいたところの続きの時系列感覚で読んでいると、途中でつじつまが合わなくなり、「あれ?」と思ってしまうことがあります。
大抵先を読んでいれば「ああ、これ過去の話か」などと分かりますが、出来れば時系列が変わった時に、いつの話なのか分かるような情報を入れた方がよいでしょう。
【6.視点変更したことが分かりにくい】
話の区切りの後、急に別の場面になって混乱するパターンです。今までAさんの話を進めていたのに、いつのまにかBさんの話になっていた……ということは無いでしょうか。
こちらも少し読み進めれば大抵「ああ、今このキャラの視点なのか」と気が付くのですが、やはり「誰の視点か」ということは、視点が変わったところで情報を提示した方がよいでしょう。
なろう小説では一人称の視点変更でやりがちですが、三人称でも意外とそうなりやすいので、注意しましょう。
【7.話の軸や目標が分からない】
「どういう話なのか」がいつまでも分からないと、読者は何を中心に読めばいいか分からなくなってしまいます。特にオンライン小説だと、何の話か分からないと、読者はさっさとブラウザバックしてしまい、その先を読んでくれなくなります。
物語の構成の仕方にもよりますが、早い段階で「これはこういう話だ」という情報を出しておきましょう。もちろん、単に説明するだけではダメです。話の流れの中で、読者が分かるように組み込む必要があります。
また、話の目的があった方が、読者はそれを意識するので読みやすくなります。物語を進めていく段階で徐々に目標が定まる場合もありますが、それでも「当面の目標」は決めておくとよいでしょう。
【8.物語の問題点や謎が分からない】
長編だと、登場人物はいろんな事件に巻き込まれることが多くなります。しかし、何を解決しないといけないのか、何をやっているのかというのが分からないと、読んでいておもしろくなくなります。状況が分からず、何を解決しているのか分からないまま話が進んでいくと、いつの間にか問題が解決してしまった、ということになってしまいます。
読者に「これ、一体どうするんだ?」「どうやって解決するのだろう?」と思わせるためには、まずどんな問題を解決しているのかを明確にする必要があります。
【9.展開が早すぎる】
最近では「展開が早い方がいい」という人もいますが、あまりに早すぎるといつの間にかイベントが終わってしまい、楽しみが無くなってしまいます。また、じっくり解決に悩むべき場面で解決が早すぎると、読者はがっかりしてしまいます。
間延びさせる必要はありませんが、テンポはあれどある程度間を取ることは重要です。
【10.難読固有名詞が多すぎる】
一人や二人、一か所や二か所であれば、印象的で覚えてくれるでしょう。しかし、ルビが無いと読めないほどの固有名詞がたくさん出ると、「あれ、これなんて読むんだっけ?」となってしまい、物語に集中できなくなります。なんらかのこだわりが無ければ、多用しない方がよいでしょう。
もちろん、上記のようなことをしていても、分かりやすい文章を書く人もいます。しかし、何も考えずにやっていると、ただ単に読みにくい文章、相手に伝わらない文章となってしまいます。
読者の視点に立つためには、書いた後時間を置いて読み直してみるとよいでしょう。引っかかる部分があれば、修正していきましょう。