Web小説、これはあり? なし?
紙の小説とWeb小説ではいろいろと違う点があり、よく議題に上がっています。
特に大きな違いとして、紙の小説は日本では縦書きで、Web小説は横書きが定番となっています。そのため、縦書きでは漢数字が当たり前に使われていますが、Web小説では漢数字は読みにくいためアラビア数字が使われる傾向がある、といった感じです。
さて、そういった違いもあり、作法や書き方で紙の小説と比べるのはどうかと思いますが、Web小説でも「これってありなの?」と思うことがいくつかあります。みなさんの意見はどうですか?
【台本形式】
Web小説でたまに見かけるのが、台本のような形で書いている小説です。「脚本小説」とも呼ばれます。
簡単に言うと、以下のようにセリフの前に誰がしゃべっているか示すパターンです。
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朝から母親とミクが大げんかしている。
ミク「だからトマトは嫌いだって言ってるでしょ?」
母「いい加減にしなさい! 好き嫌いはダメって、高校生になって何言ってるのよ」
俺「はぁ、もう日曜日くらい静かにしてくれよ……」
ため息をつきながら、俺は洗面所に向かった。
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確かに誰が何を言っているのかがわかりやすくなっていますが、通常小説ではこのようにセリフの前に誰が話しているかは書きません。誰が話しているかは、話し方や前後の文脈から読み取らせるようにするのが普通です。
このような形で書かれていると、筆者に「誰がどのセリフを話しているか分からせる能力がない」と判断されてしまいます。
セリフの書き分けについては、きちんとできるようにしておくのが大前提と言えるでしょう。
とはいえ、「こちらの方がわかりやすい」という意見もあります。今後の読者層や読者のレベルによっては、このような形も許容されるかもしれません。
ただ、縦書きにしたときにやや読みづらくなりますし、セリフなのか地の文の途中なのかもわかりにくくなるので、あまり推奨される形ではないでしょう。
【SIDE形式】
登場人物複数人の視点から個別に書き分ける形式で、主に一人称視点で書かれます。
一人称視点での視点変更はもはや珍しくなくなりましたが、それに加えてわざわざ「SIDE○○」とか、「○○視点」とか、そういったことが付けられていることが特徴と言えます(つけてなくてもこういった形式はあります)。
私は一人称視点の視点変更は推奨しないのですが、きちんと書き分けられていて、視点変更が行われているのであれば大丈夫だと思います。
ただ、わざわざ「SIDE○○」とつける小説には以下のような特徴があると(勝手に)思っています。
・地の文の書き分けがされていない
・話の途中で平気で視点切り替えしてくる
・視点切り替えする意味があまり見いだせないところが多い
・時系列順に並べるせいでそれぞれの語り手の状況が分かりにくい
・視点切り替えが頻繁すぎる
・平気で同じ話をかぶらせてくる
きちんと書き分けられる人はわざわざ「SIDE○○」と書かずとも分かると思います。タイトルにつける場合はありなのかなとも思いますが、本文中にはあまり好ましくないと思います。
「SIDE○○」とか本文に書く前に、まずはきちんと書き分けたり、情報をわかりやすくしたりする工夫が必要ではないかと思います。
ただし、何かの目的があり、意図的にやっている場合はその限りではないと思います。でもこういうことは書き始めたばかりの人がやりがちなので、あまりお勧めはしません。
【パラメータ表示】
異世界ファンタジー系統の話では結構増えたのではないでしょうか。パラメータ表示。
簡単に言うと、以下のようなパラメータを本文(あるいはあとがき)に表示させる形式です。
名前:フィーカス
HP:144
MP:12
攻撃力:101
防御力:63
素早さ:255
運:1200
使用可能スキル:ファイアバレットLv1、フリーズランスLv3、エアースラッシュ
特殊技能:ラッキースケベ、ステータスのぞき見、炎防御、マジックカウンター
当然RPGを意識したもので、主人公(あるいは登場人物)がどの程度の強さを持っているのかを表す指標となります(アルファベットでランクE~S、みたいな方法もあります)。
なんとなくこれを表示していれば、登場人物がどれくらい強いのか分かる気がしますが、はっきり言うと「これだけではまったく意味がありません」。
というのも、例えばこれだけ見て「攻撃力101ってどのくらい強いのか」というのが分かるでしょうか。もしかしたらザコ敵のスライムすら倒せない攻撃力かもしれませんし、ラスボスを一撃で粉砕できるだけの攻撃力なのかもしれません。
パラメータを示すのであれば、「それがどのくらい強いのか(弱いのか)」を示す必要があります。例えば上述のパラメータを表示させたのであれば、「攻撃力101というのはゴブリンは一撃で倒せるけれどオークを倒すには数回の攻撃が必要」といったような、「相対的な評価」が必要となります。
結局それらは数値に頼らずとも「その登場人物がどのくらい凄いのか」は戦闘シーンを書けば分かることで、表示させるからにはやはり意味を持たせる必要があると思います。マンガやアニメであれば、表示させるだけで雰囲気が出るのでありだと思いますが、小説では意味を見出すのは結構難しいのではないかと思います。
パラメータを出すのであれば、必ず相対的な評価ができるように(あるいは絶対的な評価ができる基準を作るように)しましょう。さらに、パラメータがどのような役割を果たすのかは、意識した方が良いと思います。
【結局は「自由」なのでは?】
小説家になろうでもいろいろ意見はあると思いますが、最終的には「好きに書いたらいいじゃん」という結論になると思います。
また、時代の流れや筆者の意図によって、これらの形式に意味を見出すことがあるのではないかと思います。
もはやSIDE形式はなじんでいる感じもありますし、読者層が変われば台本形式もありかもしれません。マンガやアニメといったメディアミックスまで視野に入るのであれば、パラメータ表示があった方が逆に公募の選考では有利になるかもしれません。
とはいえどれも「安易に手を出していいもの」ではないと思っています。使うのであれば、きちんと自分の意図を持って使った方が良いでしょう。




