19話 キノコ狩り③
第五区画にある沢へとやってきた。
「さっさとこの返り血おとしちゃおうぜ」
「そうだな」
「じゃ僕はその間にここのキノコとかを集めちゃうよ」
探知の魔法を再度発動し大体の場所の目安を付ける。
陽向達は鎧を脱ぐわけにもいかないため、鎧を着たまま洗い流すようだ。
「この区画には13個かぁスクラナさんは頑張れば30個とか言ってたけど、島の半分回るだけで30個以上は集められそうだな」
キノコと一緒に薬草や香草類もいくつか採取する。
「肉を焼くのに香草は欠かせないよね~シーヴァさん達に教えてもらっておいて良かったよ」
数十分の時間をかけ、第五区画のキノコと数十種類の香草、薬草も相当数手に入れた。
「さて、これだけ集めれば次の区画へ行けるだろう」
陽向達は洗い終わったかなぁ
沢へ歩こうとすると背後からガサガサと草木の揺れる音がする。
「またフォレストボアか?」
振り返るが目が付く場所には大型のモンスターはいないようだ。
「気のせいか」
振り返り歩こうとするとまたガサガサと音がなる。後ろを見ないように聴力強化を発動し音に集中する
ギィー・ギィー・ギィー
いるな、確実に3匹。もしかするともっとか……
何事もないように沢へ向かって歩き出す。
ギィー! ギィー!
僕が歩き出すと同時に3つの影が草むらから出てきた。
振り向きながらボウガンを構えようとするが、1匹がすでに飛び掛かっていた。
「くそ!」
ボウガンを展開することが出来ず二つ折りの状態で相手を受け止める。
「ディクニスか!」
ディクニス。人と同じくらいの大きさの肉食モンスターで数匹の群れを作って行動する。彼らはチームワークを駆使し狩りを行うと聞いたことがある。キングディクニスと呼ばれる群れのリーダーが存在しており初心者の冒険者は注意が必要である。主な武器は牙と鉤爪。(以上『冒険者になろう!密林編 著:スルト』より抜粋)本まで出してるとはスルトってただの村長なのだろうか?と思ってしまう。
すげー図鑑で見たまんまだぁ……っと感動してる場合じゃないよ!
覆い被さったディクニスを蹴飛ばし沢へ向かって全速力で走り抜ける。
「陽向~! 武さ~ん!」
「どうした?」
「いずんちゅも水浴びか?」
肉食のモンスター~が近付いて来るとは思ってもいないようでのん気に声をかけてくる。
「武器装備して! ディクニスが来てる!」
「ディクニスってなんだ?」
「さぁ?」
「肉食のモンスターだよ! だからモンスター図鑑ぐらい見ろって言ったばぁっ!」
背中からディクニスのタックルを喰らい盛大に顔面からこける。
ギャー! ギャー!
背中を思い切り踏まれジタバタする事しかできない僕。
「ォらっ!」
陽向の大剣が横なぎに振りぬかれ背中のディクニスをブッ飛ばす。
「助かったよ」
「いずんちゅ。遊びに行くのはいいが余計なものを連れてくるなよ!」
「好きで連れてきた訳じゃないやい!」
振り向きながらボウガンを構え直す。クリップ弾倉は両手での装填になるから時間がかかる。
「二匹任せた!」
「そう言うのは準備できてから言えって」
「そうそう」
2人はすでにディクニスと戦闘中だった。
武さんが襲ってきた1匹をかわし片手剣でノドを切り裂く。
ギャ! と小さき鳴き絶命するディクニス。
「まずは一匹!」
陽向ともう一匹は互いに見合って動かない。どちらも攻撃のタイミングを計っているようだ。
あと一匹いるはずだけど……どこだ?
探知の魔法をディクニスに合わせて発動する。
あと二匹……一匹は陽向の目の前……あとは……いた! 陽向の左横!
銃口を陽向の左横の草むらへ向け盛大にぶっ放す。
バスーン! バスーン! バスーン!
二発は外れたようだが一発当り血が飛び散り倒れる音が聞こえた。
「二匹目!」
「いや、三匹目だな」
陽向の言葉と同時に僕の目の前に半分に切断されたディクニスが降ってくる。
「おおう!」
「わりー飛んだか?」
どうやら僕の発砲音を合図に最後の一匹に切りかかったようだ。
「んで、これどうする?」
武さんが切ったディクニスを片手剣で突いている。
「肉は食べれないから解体して素材だけ持って帰ろう」
「何が売れるんだ?」
「鉤爪と牙、鱗と皮だね」
「骨は?」
「とってもいいが肉とか剥ぐの面倒じゃないか?」
「じゃ骨は放置で」
その後僕たちは回収できる範囲で牙と鉤爪、鱗、皮を手に入れた。
「これくらいか?」
「そうだね。じゃディクニスの冥福を祈って……」
「「アーメン」」
「南無阿弥陀仏」
「「そこは“アーメン”じゃないのかよ!」」
「仏教だって言っただろう?」
穴を掘ってディクニスの残骸を埋める。
「キノコは?」
「全部回収済み。あと薬草と香草類も集めたから何時でも行けるよ」
「よし、じゃ飲み水を確保して残りの区画も探索するぞ」
「アイサ-」
こうして第五区画を後にした。
残りの第六区画、第二区画を回ってキャンプ地に帰ってきたのは日が落ちかけてからだった。
「何とか暗くなる前に戻ってこれたな」
「和泉さんがキノコの数にこだわるから……」
「多く手に入れるって言ったのは誰さ」
「言い争いは後だ。夕飯を作らないと直ぐ暗くなってしまうぞ」
とりあえず夕飯用にフォレストボアをポーチから取り出す。
「そんなに食べないから前足だけでいいでしょ」
「そうだな」
「じゃ切って」
「俺ぇ!?」
「武さんの片手剣が一番楽でしょ?」
「まぁそうだが、包丁替わりに使われるのはなんか納得がいかんよ?」
そう言いながらも二頭から前足を合計三本切り落とす。
「塩焼きか香草焼きかどっちがいい?」
「いずんちゅが作るのかよ」
「じゃ陽向が作る?」
「頑張れいずんちゅ」
「シーヴァさんに作り方聞いてるから大丈夫だよ」
「誰でもいいから早く作ろうぜぇ~」
こいつら…
解体用のナイフを取り出し前足の皮を剥ぎ塩と香草を使って味を付ける。魔法石を使った即席コンロに火を灯し鉄板を熱し、十分に熱したら植物油をひき、そこにも香草を入れる。
味付けした前足を鉄板に投入し焼き色が付くまで焼く。焼き色が付いたら火を抑えじっくりと弱火で中まで焼いて完成となる。
「どうだ! フォレストボアの香草焼きby和泉バージョン!」
「はいはい、うまいうまい」
「食ったら寝るぞ~」
「もっと味わって食えよ!」
さっさと食事を終えて船で寝ることにした。
「見張りがいるな」
「そうだね」
「今、夜の9時だ。出発を明日朝9時として丁度12時間ある」
「1人4時間だね?」
「さて、順番だが……」
「僕一番がいい!」
「じゃ一番はいずんちゅにお願いすることにして、後はどうする?」
「俺はどっちでもいいぞ?」
「そうか、じゃたけぞー最後をお願いしてもいいか?」
「わかった」
順番は僕⇒陽向⇒武さんの順番で見張りをすることになった。
「じゃ俺らは寝るから気を付けろよ? いずんちゅ」
「あいあい」
「薪木はここにあるから、たき火を絶やすなよ」
「あいあい」
「本当にわかってるのか? こいつ」
「どうも怪しい」
「わかってるから、大丈夫大丈夫。問題ないって」
「まぁいい。じゃ頼むぞ」
「アイサー」
2人は船へ入っていった。
一人での見張りはとても退屈で、すぐに飽きてしまった。
そうだ、シルノから借りた魔法文字の本があったな
暫くは本を読んで時間を潰す。ちょうどいい所迄読んだら交代の時間を少し過ぎてしまっていた。
僕は船へ戻り陽向を起こすことにした。
「陽向~交代だよ~」
「ん? おお、わかった……」
「ほら、しゃんとしな」
「わかっているがな」
「頑張れ、じゃ僕はこれで」
武さんが寝ている所の反対側で寝ることにした。
「いずんちゅおやすみ」
「おやすみ」
そう言って僕の意識はおちていった。
「起きろ二人とも朝だ」
武さんの声で目が覚める。
「まだ大丈夫だろ?」
「寝かせて」
「もう9時だ。飯食って今日は反対側を探すんだろう?」
「そうだったね~」
「しょうがない、起きるか」
僕と陽向はのそのそと船を出る。
「あ~真ん中は寝て起きて寝ての繰り返しが辛い」
「今日は帰ろうか?」
「探索時間にもよるな」
「昨日だけでキノコは何個採れた?」
武さんの問いに僕はポーチを確認する。
「昨日だけで54個だね、一つの区画平均約13個だ」
「それだけあれば十分じゃない?」
「じゃ午前中だけで回れる第四、第三区画だけで帰ろうか?」
「そうだな、数は十分だろ。肉もあることだし」
「あとディクニス素材があるしね」
「そうだった。よしじゃ半分だけ回って帰るぞ」
「アイサー」
「了解」
僕たちは食事を終え昨日とは反対の左側の第4区画へ向かった。
第四区画は海岸沿いの区画のようで砂浜が続いている。
「砂浜って歩きずらいね」
「筋力トレーニングにも使われるくらいだ。多少はしょうがない」
暫く歩くと地面から何かが出ているのを発見した。
「何あれ?」
「何だろう?」
皆で近付いてみる。
「ん~わからん」
「武さん踏んでみ?」
「ヤダよ」
普通に拒否られた
「じゃ変わりにこれを」
木の棒を持ってきて地面から出ているものに突き刺す。するとすごい勢いで大きなカニが出てきた。
「カニかよ!」
「カニの鋏だったのか!」
「これおいしいかな?」
自慢の鋏に木の棒を突き立てられたのが気に食わなかったのか、カニをこちらを見て鋏を振り上げている。
「あれは威嚇かな?」
「威嚇だと思うぞ」
「襲われる前に逃げるか?」
話している間にカニがすごい勢いでこちらへ向かってきた
「ヤバイ! 来た! 来た!」
「意外と早い!」
「避けろ!」
3人が固まっている場所へカニは思いっきり鋏を振りぬいた。
ブォンと風切音がする。
「ヤベ-って。カニヤベ-!」
「倒して鍋にしてやる」
「和泉さんは何でも食べることだな!」
各自武器を構える。
「喰らえ!」
武さんが切りつけるが甲殻が固く刃がはじかれてしまう。
「こいつ硬いぞ!」
「どいてろ!」
陽向が大剣を振り下ろす。
バキャと音がして背中の甲羅が割れる。
「こいつヤドカニか?」
「見た目はヤシガニのお化けだね」
バスーン!
と発砲音が轟く。その一発がとどめとなった。
「カニ持って帰るのか?」
「ファッカスで料理してくれるかな?」
完全に死んでる事を確認しポーチに入れる。
「いずんちゅキノコは?」
「ん~……ここの区画には5個だね」
「さっさと回収して次に行くぞ」
僕たちは5個のキノコを回収して最終区画の第三区画へ向かった。
「ここはちょうどキャンプの反対側か。あの小島も区画か?」
「あれは第十区画だね、でも日が合わないといけないみないだよ」
「ここから歩いて行けるのか?」
「干潮になると道が出来るみたいだね」
第三区画は孤島をぐるりと回りキャンプの反対側の区画になるようだ。
「いずんちゅキノコは?」
「ここは多いよ~12個あるね」
「よし、さっさと回収して帰るぞ」
三人で手分けして探し始める。
キノコを探して数時間経った。
「いずんちゅ何個よ?」
「今三個~」
「俺達は四個ずつ見つけたぞ~」
「マジでか!」
どうやら残るは僕が見つけていない一個だけらしい。
「あとこの辺りなんだけどな~」
探していると横にマッシュホーグが近付いてきて木の根元を嗅ぎ始めた。
この豚の好物は確かキノコだったはず……
マッシュホーグが嗅いでいる場所を探し始める。
「あった! 最後のゲンキ茸!」
僕は発見したキノコを持ち上げる。
「でかした! いずんちゅ」
「さって、帰るか~」
「そうだね~」
僕はキノコをしまう為、持ち上げていた手を下す。と
ドン!
と背中を押される。
「わ!」
後ろから押された為バランスを崩し膝をついてしまう。そのため持っていたキノコが僕の手からポロリとおちる。
「あ!」
慌てて拾おうとするが、一歩遅れてマッシュホーグに横取りされてしまった。
「あー!」
はぐはぐと我が物顔でキノコを食べるマッシュホーグ。
「最後の1個だったのに……この豚!!」
キノコを食べている豚の土手っ腹へ渾身の蹴りを入れる。
「いずんちゅ一個くらい気にするな」
「今ちょうど70個だからキリがいいじゃない」
二人は宥めてくれる。けど僕は豚にバカにされたのが気に食わなかった。
マッシュホーグは蹴った人物がわかるのかこっちを向いて突進する気満々だ。
僕は迎え撃つ為にボウガンを構える。
「来やがれ豚野郎!!」
マッシュホーグが僕目がけて猛烈な加速で突進してくる。
カチャ
引き金を引いても弾が出ない!
「あ、リロードするの忘れタブゥラ!!」
腹に思いっきり頭突きを喰らう。
「いずんちゅ。遊んでると置いてくぞ?」
「豚相手に本気になるなよ~」
2人はまったく興味がないようだ。
「ま……負けられない戦いがあるんだ!」
僕は弾丸ポーチからある特殊弾を取り出しリロードする。再度マッシュホーグの額に銃口を合わせるとマッシュホーグは走り去ったのか距離は開いていた。
バスーン! と発射された弾は真直ぐにマッシュホーグの額へ飛ぶ。
プギャ! と短く鳴き声が聞こえたと思った直後。
ドカーン!
と腹に響く爆発音が轟く。
「ははは。やったぜジョージ! 木端微塵だ!」
「お前バカだろう!?」
「粉々にしてどうするんだよ!」
あれ? やりすぎ?
「だって……」
「だってじゃね~よ。何だよあの弾!」
「シルノに冗談で言ったら一発だけ作ってくれた榴弾の試験弾」
「そういうのはもっと大事な時にとっておけ!」
「大丈夫! 量産体制は整っているから!」
「そういう問題じゃね~~!!」
騒ぎながら僕たちの初クエストは終了した。
豚は勿体無かったなんてちっとも思わいんだからね!
19話目です。
初仕事もこれで終わりです。
誤字・脱字などありましたら連絡下さい。
感想おまちしております。




